西園寺家の妹
母の再婚で、私は西園寺家の娘になりました。
理事長の家。
白く輝く大きなお屋敷。
専用車での通学。
正直、いまだにちょっとだけ緊張しています。
だって私は、どこにでもいる普通の女子高生。
黒縁メガネの、地味めなタイプです。
――なのに。
気づけば、義兄が五人もできていました。
しかも全員、同じ学園に通う有名人。
やたらと過保護で、やたらと距離が近くて、なぜか全力で甘やかしてきます。
私はただの“妹”のはずなのに、どうしてこうなるのでしょう。
にぎやかで、少しだけ落ち着かなくて、でもどこかあたたかい。
これは、五人の義兄に囲まれて始まる、ほのぼの溺愛生活のお話です。
◆西園寺家の五人の義兄◆
西園寺玲央( れお)――長男。生徒会長。冷静で完璧だけれど、妹には甘い。
西園寺伊織( いおり)――次男。副会長。クールで理論派。さりげなく一番よく見ている人。
西園寺日向( ひなた)――三男。陽気な人気者。距離が近くて、よくからかってくる。
西園寺蒼( あおい)――四男。穏やかな癒し系。優しくて、甘やかすのが得意。
西園寺海里( かいり)――五男。同級生。素直じゃないけれど、なぜか一番近い存在。
そして私は、西園寺ひより。
今日もたぶん、平和でちょっとだけ騒がしい一日が始まります。
黒塗りの車が大きな門をくぐった瞬間、私は思わず背筋を伸ばした。
目の前に広がるのは、手入れの行き届いた庭園と、その奥に建つ白く輝く邸宅。
「着きました」
運転手さんの落ち着いた声が車内に響く。
「わあ……本当にすごいわねぇ」
隣で母が目をきらきらさせている。
今日からここが新しい家なのに、母はまるで旅行気分だ。
「ひより、大丈夫?」
「う、うん。たぶん」
大丈夫と言いながら、心臓は少し早い。
車のドアが開き、外に出た瞬間――私は固まった。
玄関前に、五人の男性が並んでいる。
えっと。
多い。
「ようこそ、西園寺家へ」
中央に立つ人が一歩前に出た。
落ち着いた声。整いすぎた顔立ち。
「俺は西園寺玲央。長男だ」
長男。
ということは、この人たち全員……。
「今日から俺たちの妹だよ」
明るく笑った人が、ひょいっと距離を縮める。
「日向、近い」
静かな声がそれを止める。
その隣では、穏やかに微笑む人がいて、少し離れた場所では腕を組んでこちらを見ている人もいる。
情報量が多い。
「よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げると、五人の空気がふわっと柔らかくなった。
「俺たちに敬語はいらない」
「僕たちにそんな緊張しなくていい」
「ひよりちゃんの部屋はもう準備してあるからね〜」
「困ったことがあれば僕にすぐ言って?」
「…細いんだからちゃんと飯食えよ」
一斉に言われて、ちょっと笑ってしまう。
兄が五人って、こんな感じなんだ。
それぞれ彼らは私に簡単な自己紹介をしてくれた。
正直、みんなかっこいいとは思う。
でも、テレビで見る芸能人みたいな感覚で、まだ現実味がない。
「明日から西園寺学院だ」
玲央が静かに言った。
「ひより、明日から学園へ行く時は一緒に行くぞ」
「学園までは電車ですか?それとも歩きで行くんですか?」
私が言うと、なぜか一瞬だけ沈黙が落ちる。
……あれ?
「いや、それは…ふふっ」
「ひよりの常識と僕たちの常識は違うみたいだね」
日向と蒼がそれぞれ笑いながら言う。
「僕たちは家の専用車で送り迎えしてもらうんだよ」
私はお金持ちを見くびっていたようだ。
母はくすくす笑っている。
「みんな、ひよりと仲良くしてあげてねぇ」
その一言に、五人が同時に「もちろん」と答えた。
声がぴったり揃っていて、ちょっと面白い。
(にぎやかになりそうだなぁ)
まだこのときの私は知らない。
学園でどんな視線が向けられるのかも、
この家がどれだけ特別なのかも。
ただ一つ分かるのは――
どうやら私は、思っていたよりもずっと大切にされているらしい、ということ。
今日から始まる、西園寺家での新しい生活。
きっと、にぎやかで、ちょっと騒がしくて、でもあたたかい毎日になる。
……たぶん。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
ついに始まりました、西園寺家でのにぎやかな同居生活です。
ひよりはまだ状況をあまり理解していませんが、義兄たちはすでにそれぞれ思うところがありそうです。
とはいえ、序盤はとにかく甘く、ほのぼのとした日常を描いていく予定です。
五人の兄の中で、気になる人はいましたか?
完璧な長男・玲央。
努力家の次男・伊織。
陽気な三男・日向。
優しい四男・蒼。
素直じゃない末っ子・海里。
今後、それぞれの距離が少しずつ変わっていくかもしれません。
最後がどうなるのかは……まだ秘密です。
ひよりの新しい生活を、あたたかく見守っていただけたら嬉しいです。
次回は、いよいよ西園寺学院へ。




