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『プレスマンの相撲』

作者: 成城速記部

 あるところに貧乏なじいさまとばあさまがあった。ある日、じいさまが山へ柴刈りに行くと、向こう山のほうから、何やら意味のわからない声が聞こえるので、不思議だと思って、その声を頼りに行ってみると、やせプレスマンと丸々太ったプレスマンが相撲をとっていた。木の間に隠れて見ていると、やせプレスマンはじいさんの家のプレスマン、丸々太ったプレスマンは、長者どんの家のプレスマンであったが、やせプレスマンは弱くて、長者どんの家のプレスマンに、ほいほいと投げられていた。じいさまは、かわいそうに思って、家に戻ると、ばあさまに言って、畳の目に入った速記シャープの芯の粉を集めて、速記シャープの芯をそれっぽく再生し、床の間と名づけた部屋の隅に皿に載せて置いておいた。夜になると、やせプレスマンは、そうっと帰ってきて、それっぽく再生されたプレスマンの芯を見つけると、喜んでそれをぺろりと平らげて寝てしまった。

 次の日も、じいさまが山へ入ると、同じような声が聞こえたので、行ってのぞいていると、それほどやせて見えなくなったプレスマンと丸々太ったプレスマンは、がっぷり四つに組んだまま、水を入れてくれる行事もいないので、やめどきがわからず、困っていた。丸々太ったプレスマンが、どうしてお前は一晩でこんなに強くなったんだと聞くので、それほどやせて見えなくなったプレスマンが、きのう腹いっぱい食べたからだ、と答えると、丸々太ったプレスマンが、何を食べたんだ、と聞くので、それほどやせて見えなくなったプレスマンは、僕らが食べるものは、プレスマンの芯に決まっている、と、本当は芯の粉を固めたものしか食べていないのに、格好をつけた。丸々太ったプレスマンが、うちじゃ、プレスマンの芯は一本しか食わせてもらえない、と不平を言うと、それほどやせて見えなくなったプレスマンが、うちへ来りゃ、幾らでも食べられる、とさらに格好をつけると、丸々太ったプレスマンが、本当かい、それじゃ早速伺おうかな、と乗っかってきたので、それほどやせて見えなくなったプレスマンは、そうかい、ぜひ来てくれたまえ。ただ、うちのじいさまは、きのう、僕のためにプレスマンの芯をたんまり買い込んでくれたせいで、手元不如意なので、うちに来る前に、長者どんの蔵から千両箱を二つ三つ持ってきてくれたまえ、というと、丸々太ったプレスマンは、組み手をほどいて、じゃ、後ほど、と言って、さっさと帰ってしまった。

 じいさまは、急いで家に戻って、文房具屋に行くと、ありったけのプレスマンの芯をつけで買って、床の間と名づけた部屋の隅に山と積んでおいた。それほどやせて見えなくなったプレスマンは、千両箱を五つかついでやってきた、丸々太ったプレスマンを迎え入れ、苦しくてもう食べられないと言うまで、プレスマンの芯を食べさせてやった。丸々太ったプレスマンが帰った後、それほどやせて見えなくなったプレスマンは、プレスマンの芯を一本だけ食べて、寝てしまった。

 次の日、じいさまは、もう柴刈りの必要性もなかったが、相撲を見に山へ入った。見た感じ普通に見えるプレスマンは、とんでもなく太ったプレスマンを、はたき込んだり、突き落としたり、ちょんがけたりして、いともたやすく転がした。とんでもなく太ったプレスマンは、どこが首だかわからない首をかしげて、急に勝てなくなった理由を考えるのであった。



教訓:プレスマンに二本以上芯を入れてはいけない。

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