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第5話 謎の男ヴァルカ


ガルムヘルムの町に戻ったゴラムたちは、持ち帰ったドラゴンの肉をドラゴンの牙に持ち込んだ。

店の前では、店主が驚いた顔で出迎えた。

「おお!本当にドラゴンの肉を持ってきたのか!」

ゴラムは力強く頷き、馬車から大きな肉塊を降ろす。

「約束通りだ。これで店も助かるだろう?」

店主は感激し、店員たちを呼んで肉を運び入れた。

「今夜は盛大な宴を開こう!存分に楽しんでくれ!」


その夜。

ドラゴンの牙は、久しぶりのドラゴンの肉の入荷でお祭り騒ぎになっていた。

ゴラムたちも、テーブルを囲み、大皿に溢れんばかりのドラゴンの骨付き肉を前にしていた。

「さあ、食うぞ!」

ゴラムが豪快に肉にかぶりつく。

ミカもステーキにかぶりつき、満足げにうなった。

「これぞ至福の時じゃな。」

アンヌは、ナイフとフォークを手にして、ゆっくりと肉を味わう。

「美味しい!」

キャスは静かに杯を持ち上げ、微笑んだ。

「みんな、お疲れ様!」

その言葉に、ゴラムたちは杯を掲げ、笑顔で乾杯した。


隣のテーブルでは、銀髪の老人が一人で酒を飲んでいた。マントで隠れているが、その腕や足は筋骨隆々で、見た目の年齢には不似合いな雰囲気を醸し出している。さっきから、ちらちらとゴラムの方を見ているようだ。


隣の男の視線に気づいたゴラムが隣のテーブルの空いている席に座った。

「じいさん、さっきから俺の方を見てるけど、なんか付いてるか?」

ゴラムはかなり酔っぱらっている。

老人はゆっくりと杯を置き、低いしわがれた声で答えた。

「いや、知り合いに似てたもんだから、ついな。どうやら、人違いのようだ。」

「知り合いに似てる?ゴブリンなんてどこにでもいるだろう?」

老人は苦笑しながら首を振った。

「本当に悪かった。わしの知り合いには左腕に痣があるんだが。」

「左腕の痣?これのことか?」

ゴラムが左腕を男に見せると、老人の目の色が変わった。

「……あんた、その痣はいつから?」

「物心ついた時からあるよ。生まれつきじゃないか?それがどうかしたか?」

老人は一瞬考え込むように沈黙し、やがて低い声で言った。

「あんた、自分の生まれを調べてみな。南の古代遺跡に行ってみろ。」

ゴラムは怪訝な顔をしたが、老人の瞳にはただならぬ覚悟があった。

「わしはヴァルカ。きっとまた会うことになるだろう。じゃあな。」

それだけを言い残し、ヴァルカは静かに席を立って、酒場を後にした。

「なんだ?あのじいさん。」

ゴラムは不思議に思いながらも元の席に戻った。


「ゴラム、あのじいさんは知り合いだったのか?」

ミカが聞く。

「いや、でも俺の左腕の痣がなんとかって言ってたな。」

「左腕の痣?」

「これなんだけどよ。ガキのころからあるから気にしたことがなかったんだ。」

「こ、これは。。。」

「ミカ、何か知ってるのか?」

「いや、わらわは知らん。自分で調べろ。」

「なんだ?まあ、いいや。」


こうして夜が更けていった。


ゴラムはヴァルカと名乗る老人の言葉が気になっていた。

『自分の生まれを調べてみな。南の古代遺跡に行ってみろ。』


「よし、南へ向かおう。」

ゴラムの突然の提案に皆驚く。

「南に行ってどうするの?」

アンヌが尋ねる。

「まずは、ミルド村を経由して古代遺跡に行く。」

「古代遺跡?何か調べるのか?」

ミカが口をはさむ。

「酒場であったじいさんに、古代遺跡を調べろって言われたんだ。だから行く。」

「よくわからないけど、ゴラムが言うなら良いんじゃないかな。」

キャスが言う。


「そのあとは、サウザー国に向かう。」

「サウザー国?サウザン王子は苦手だなあ。」

アンヌが渋い顔でつぶやく。

「とにかく、まずはミルド村に向かおう。友達にも久しぶりに会いたいしな。」

「ケンタとリリアね!懐かしい。元気にしてるかしら?」

アンヌの目が輝く。


こうして、ゴラムたちは、南に向かって出発した。


平原を南に向かうこと数日。

小さな石造りの家が一軒、ポツンと建っているのが見えてきた。

あれは、魔法使いハックの家だ。


ハックは転生者ケンタ一行の一人で、ケンタをこの世界に転生させた魔法使い。その魔力はミカー魔王ミカエルーにも劣らないという噂だ。

ゴラムたちは、家の前に馬車を停めて、ハックの家を訪ねた。


トントン。

「ハック、居るか?俺だ、ゴラムだ。」

すると扉が開いて、中から白いひげを蓄えた老人が出てきた。

「おう、ゴラム、久しぶりじゃな。入りなさい。」

ゴラムたちは家の中へと招かれた。小さな部屋の奥には古い書物が並び、そこかしこに魔法の道具らしきものが転がっている。

「こんな所に何の用じゃ?」

ハックが尋ねる。

「旅の途中でよったんだ。ちょうど通り道だったからな。」

ゴラムはそう言いながら、部屋の様子を見渡した。

「旅か。ケンタたちとの旅が懐かしいのう。」

ハックは、遠い目をする。

「今回は、エルドランドのアンヌ王女の向学の旅の護衛だよ。」

ゴラムが説明すると、

アンヌ、キャスがハックに軽くお辞儀をした。

ミカは、居心地が悪そうにしている。

「これは、また珍しい組み合わせじゃな。」

ハックが微笑む。

「そうなんだ。でも、心強いよ。」


ゴラムたちとハックは、昔話に花を咲かせた。


「ケンタとリリアは、どうしてる?」

ゴラムが尋ねる。

「ミルド村で2人で暮らしてると聞いたがの。」

ハックが答えた。

「そうか。あの2人もいろいろあったからな。」

ゴラムは懐かしげに頷いた。

「ケンタとリリアにも会いに行くのか?」

「ああ、そのつもりだよ。」

「よろしく伝えてくれ。」

ハックは微笑んで言った。

「わかった。ありがとう。」


ハックとの再会を終え、ゴラムたちは再び馬車に乗り込み、ミルド村へと向かった。





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