もう逢えなくなった猫に夢でまた逢えた
猫ヴァージョン。
もう逢えなくなった猫に夢でまた逢えた
おっきく目をひらいてこっちを見てさ
首をかしげたあと その目を細めなおしながら
にゃあんとやるんだ
なんだよ せっかくまた逢えたのに
嬉しくないのかって
不思議そうな顔をしてるとこ悪いんだけど
ここは心を鬼にして
冷たく つきはなそう
たしかにあなたとの日々はすばらしかったし
もっと永く いつまでもつづいてほしかったのにって
恨みがましい想いもした
だけどその反面
完全無欠でぺきぺきの完璧でこそなかったものの
それなりによくしてあげられたはずだし
叶わなかったこと 至らなかったことはあるけど
それでも そんなやり残しがあるのを認めたうえで
矛盾するようだけど
悔いの刺さらないようにやり尽くせた
あなたのこと愛し尽くせたはずだから
もうあたしの夢にわざわざ
逢いにきてくれなくていいんだよ?
もうじゅうぶん あなたとは
たくさんの時間を過ごしたし
あたしはそれを忘れることなんて
けっしてないのだから
だもんで あなたも
まだ遊び足りないって不満をひっこめて
お帰りなさいな
きっとあれ以上は たいしたこと
してあげられなかったんだろうし
あなたもそこんところは
理解してくれてるはずだよね?
だったらききわけよく
とっとと お帰りなさいな
こんなあたしのこと
いつまでも気にしてちゃいけないよ
あたしはわりとだいじょおぶだから
あなたのかわりの猫をみつける気もなくて
こたつに足をつっこむだび
なかをさぐるようにして
あなたのことをさがしちゃう癖は
なおらないし なおすつもりもないけど
そのくらいはゆるしてほしい
ほらほら もういいから
とっとと お帰りなさいな
だけど あたしはだめなコだから
ようやくわかってくれて
あたしにくるりとむけた あなたのまるいせなかを
だきあげて ぎゅっとすると
何度もほおずりしてしまった
いいかげんにしてくれと
あなたが声をあげるから そっと おろしたら
さいごにあたまをやさしくなでて
こんどはあたしのほうからさきに
せなかをむけてやる
ほんとは逢えて嬉しかったよ ありがとう
またいつでもおいでって 言ってあげたいけど
あたしたちのあいだでそれを告げちゃうのは
なんかちがう気がして
あたしは涙でくしゃくしゃの顔を
あなたに見せないように
ふりむきもせずに ちいさく
ばいばいって さよならをする
あぁ 目を覚ましたら
お腹を濡らしたくまのぬいぐるみが
心配そうにみつめていてくれることだろう
でもね 安心して これはすてきな夢
もう二度と見ることを望んじゃいけないけど
もしも まかりまちがって また
この夢を見ることがあるとしたら
あたしはずるいから
いけないとは知りつつも ないしょだけど
ほんとはよろこんじゃうんだ
もう逢えなくなった猫に夢でまた逢えた
猫の日、おめでとうございます。