表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

もう逢えなくなった猫に夢でまた逢えた

作者: 歌川 詩季

 猫ヴァージョン。

 もう逢えなくなった猫に夢でまた逢えた

 おっきく目をひらいてこっちを見てさ

 首をかしげたあと その目を細めなおしながら

 にゃあんとやるんだ


 なんだよ せっかくまた逢えたのに

 嬉しくないのかって

 不思議そうな顔をしてるとこ悪いんだけど

 ここは心を鬼にして

 冷たく つきはなそう


 たしかにあなたとの日々はすばらしかったし

 もっと永く いつまでもつづいてほしかったのにって

 恨みがましい想いもした

 だけどその反面

 完全無欠でぺきぺきの完璧でこそなかったものの

 それなりによくしてあげられたはずだし

 叶わなかったこと 至らなかったことはあるけど

 それでも そんなやり残しがあるのを認めたうえで

 矛盾するようだけど

 悔いの刺さらないようにやり尽くせた

 あなたのこと愛し尽くせたはずだから

 もうあたしの夢にわざわざ

 逢いにきてくれなくていいんだよ?


 もうじゅうぶん あなたとは

 たくさんの時間を過ごしたし

 あたしはそれを忘れることなんて

 けっしてないのだから

 だもんで あなたも

 まだ遊び足りないって不満をひっこめて

 お帰りなさいな

 きっとあれ以上は たいしたこと

 してあげられなかったんだろうし

 あなたもそこんところは

 理解してくれてるはずだよね?

 だったらききわけよく

 とっとと お帰りなさいな


 こんなあたしのこと

 いつまでも気にしてちゃいけないよ

 あたしはわりとだいじょおぶだから

 あなたのかわりの猫をみつける気もなくて

 こたつに足をつっこむだび

 なかをさぐるようにして

 あなたのことをさがしちゃう癖は

 なおらないし なおすつもりもないけど

 そのくらいはゆるしてほしい


 ほらほら もういいから

 とっとと お帰りなさいな

 だけど あたしはだめなコだから

 ようやくわかってくれて

 あたしにくるりとむけた あなたのまるいせなかを

 だきあげて ぎゅっとすると

 何度もほおずりしてしまった


 いいかげんにしてくれと

 あなたが声をあげるから そっと おろしたら

 さいごにあたまをやさしくなでて

 こんどはあたしのほうからさきに

 せなかをむけてやる


 ほんとは逢えて嬉しかったよ ありがとう

 またいつでもおいでって 言ってあげたいけど

 あたしたちのあいだでそれを告げちゃうのは

 なんかちがう気がして

 あたしは涙でくしゃくしゃの顔を

 あなたに見せないように

 ふりむきもせずに ちいさく

 ばいばいって さよならをする


 あぁ 目を覚ましたら

 お腹を濡らしたくまのぬいぐるみが

 心配そうにみつめていてくれることだろう

 でもね 安心して これはすてきな夢

 もう二度と見ることを望んじゃいけないけど

 もしも まかりまちがって また

 この夢を見ることがあるとしたら

 あたしはずるいから

 いけないとは知りつつも ないしょだけど

 ほんとはよろこんじゃうんだ



 もう逢えなくなった猫に夢でまた逢えた



挿絵(By みてみん)

 猫の日、おめでとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【こちらも】
夢でまた逢えた

n8379
制作:みこと先生

バナー
制作:冬野ほたる先生

挿絵(By みてみん)
制作:あき伽耶 先生

挿絵(By みてみん)
制作:あき伽耶 先生

おっぱいまるだしで飛んでたあたしに ソラネコとラクダが教えてくれたこと
制作: 瑞月風花 先生

歌川 詩季の作品
新着投稿順
総合ポイントの高い順
制作:コロン先生

f5ioijtfgyibj1b45ww17btab1jv_32d_dw_6y_1xi0.png
制作:冬野ほたる先生

挿絵(By みてみん)
制作:あき伽耶先生
― 新着の感想 ―
なんと……こちらのバージョンも……! 好きな作品が好きな猫でよみがえるとは(´ω`*) せつないけど、とっても心に沁みました。 イラストもかわいいですv 歌川さん、ありがとうございました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ