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ある日の放課後、魔法道具研究部の4人は部室に集まっていた。
「来週はいよいよ審査会だ。この研究部の運命が決まる」
「部長、一つよろしいでしょうか」
「弓星君、どうぞ」
「三年生を除いて現在部室にいるのは4人。これじゃあ審査会当日に問答無用で格下げされてしまいますよ」
「あぁそれについては心配ない。最近は資格の勉強で忙しくて来れてないが、副部長がいるからな」
「そうだったんですね。それで、審査会では何を発表するんですか?」
「無難に各々の発明品でいいだろう。別に高度な技術を用いた物でなくていい。今までに学んだ技術を活かして、人の役に立ちそうな物を造ってくれ」
「分かりました…意外と普通なんだ」
ボソッと呟いた明は、教室の真ん中に出来上がったガラクタの山に近付き、材料を選び始めた。
「礼木と古土君もこのガラクタを使っていいんだぞ?」
「まだ何を造ろうか考え中なんですよ。昼休みとかこの教室って開いてますか?」
「貴重品があるわけでもないし、欄間窓の鍵を開けておくから勝手に出入りしてくれ」
何を造ろうかスマホで調べている喜美子の隣で、信参は頭を抱えていた。それを見た優は少し助力してやることにした。
「やあやあ悩める少年。何もアイデアがないのかい?」
「元々やる気のなかった人間に何のアイデアもあるわけないだろ…」
「やりたくないからやりませんでしたなんて言い訳にならないぞ。何が造りたいんだ?考えてみろ」
「全自動解呪装置」
「私の力でも難しいねぇ」
「だったら…ロボットが欲しい」
「ロボット?どんなやつが?」
「宿題とかやって欲しいこと全部やってくれる万能ロボ。物を造るのはそいつに任せて、そいつが造ってくれた物を俺の手柄として発表すれば審査会も乗り切れるから」
「発明をナメてるねえ…真面目に考えないと本当に死んでしまうよ」
信参の背筋が凍った。そうだった。ここでグータラしてる場合ではない。もしも部活動から同好会に格下げされたら、自分はここで死んでしまうのだ。
「…閃いた」
「おっ?どんな発明品だい?」
「清瀬、審査会当日俺は出ないから。発明品だけ審査員の人に見せといて」
「おや?」
「俺は真面目に考えたからな。再会したあの日、俺に素質があるとかどうとか言ってたな。その発言、取り消すなら今の内だからな」
「おやおや?」
何か閃いた様子の信参は机の横に掛かっていたリュックを取ると、早上がりという形で部室を去って行った。
「これはマズいわね…」
「なにがマズいんだ?」
「審査員を務めるのは生徒会なの。だけど今の生徒会長の人、男子に物凄く厳しいの」
「それは男嫌いってことか?」
「生徒会長は身体も心も男。女子に甘くて男子に厳しいタイプなの。礼木がどんな物考えてるのか知らないけど、それが会長の気おに召さなかったら…」
「同好会に格下げ、という可能性もあるのか」
不穏な会話の後、明と喜美子は各々の作業に戻った。
もちろん、このことは優も承知済みだ。だからこそ期待していた。この危機的状況で思いついた信参の閃きを。