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日本へ向かう飛行機が空港から飛び立った。
席に座っていた信参は隣からしつこく語り掛けてくる優を無視して景色を眺めていた。
「気になってる子はいないのか?なぁ…な~あ~…」
今の信参は気が立っている。特に恋愛事情については、滅茶苦茶になった元凶たる優に話す気は一切起きなかった。
「…つまらないねぇ」
やがて諦めた優はヘッドホンを付けて機内放送を聞き始めた。
雲海を飛行機という客船が進んでいる。景色を眺めていた信参はそんな詩的な表現を思い浮かべた。
信参はメモ帳を取り出すと、思い浮かんだ事をそのまま書き出した。SNS上にアップしている漫画のネタにするつもりだ。
「鼻と耳にピアスなんてまるで牛みたいだ。隣にいる彼氏の趣味かな?」
退屈している優は通路越しの席に並んで座っているカップルを見ていた。日本語を嗜んでいる外国人だったら今頃トラブルに発展していただろう。
「そういうのやめろよな。一緒にいる俺まで変なやつって思われたら迷惑なんだよ」
「変なやつだよ、君は」
「どこがだよ。少なくともお前よりは常識人だ」
催した優が立ち上がる。何をするのか尋ねるほど無粋でない信参は、窓の方を向いて雲を眺めた。
離陸から10時間が経過。飛行機は成田空港に着陸した。
本当、現地以外では何もない遠出だったと信参は感じた。




