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部室を追い出された後、信参は校舎を回って魔法道具を求める人を探した。しかし、魔法道具が必要とされる機会は一切なかった。
「そりゃそうだよな…」
困っている人達を見つけては声を掛けようとしたが、それよりも早く自分達で解決してしまうのだ。
この敷地内では自由に魔法が使えて、さらに言えば成績優秀者の集まる花天魔法高等学校だ。魔法道具は必要ないのかもしれない。
「お~い降りておいで~」
自転車を押して校門前まで来た信参は、木の上に向かって話し掛ける女子生徒と遭遇した。
「困ったな…このままだと怪我するぞ」
その言葉を聞いた信参はチャンスだと思った。
「ねえ、どうかしたの?」
「あぁいや、木の上に猫がいるのだが、どうも降りられないみたいなんだ。助けてやりたいが私は木登りが苦手でな。だから猫が降りて来たところを私のこの胸でって誰が貧乳だァァァァァ!?」
突然怒鳴られる信参。困惑する間もなく、少女の話は続いた。
「このまま助けを呼びに行って、その間に落ちたら大変だろう。だからひたすら呼び掛けて降りてくるのを待っていたところにお前が来たというわけだ」
それを聞いた信参はリュックからノートを取り出した。そして木の上にいる猫を助けられそうな魔法道具を探した。
(梯子!これだ!)
開いたページには梯子の図が掛かれていた。その周りにはどんな機能を持たせるかという優のアイデアも書かれていた。
(普通の梯子よりも安定していて、猫を抱いて降りれるくらいの足場があればいいよな…)
そうイメージした途端、ノートに描かれていた図は信参が望んだ形に近い物へと変化した。
「って!説明書があっても造る材料がねえよ!」
信参が叫ぶと、突如としてノートの表紙が光り出した。すると周囲に落ちていたゴミや枝などが魔力で連結し、梯子を形作ったのだ。
「おぉ!これなら!」
少女は梯子を木に立て掛けた。横木が安定していることを確かめてから早速、猫の救助を行った。
「さあこれで大丈夫だ。いいか、犬も歩けば棒に当たる、猿も木から落ちる、ゴムだって穴が開くって言うだろ。これに懲りたら迂闊に木に登るんじゃないぞ」
「もう猫どこか行っちゃったよ…」
役目を終えたからか、梯子を形成していた物体は崩れて地面に転がった。中には普段から使われていそうな物もあり、元に戻ってくれて良かったと、信参は安堵した。
「私は1年B組の古土喜美子。助けてもらったからには何か礼をしてやりたいが、何か困ってる事はないか?」
「困ってる事か…」
そう言われて思い当たる事は一つだけだった。
「魔法道具研究部っていうのがあるんだけど、新入生で入部したのは俺だけで人が足りないんだ。他に入部する予定とかなかったら、ウチに来てくれないかな」
「よし分かった。それじゃあ明日入部するから、書類を用意しておいてくれ。えっと…」
「俺はA組の礼木信参。明日の朝に入部届を渡しに行くよ」
猫を救助して一件落着。信参は校門から出ていく喜美子を見送ってから、入部届をもらいに職員室へ向かった。