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アメリカ合衆国のネバダ州にはホーミーという空港がある。空港といっても旅行客が利用するものではない。アメリカ空軍のネリス試験訓練場内に存在する兵器の試験場であり、軍人が利用するものだ。
またの名をエリア51というその空港には多くの謎があり、地球外生命体やUFOがあるのではないかと、ミステリーマニア達のターゲットにされている。
場所はネリス空軍基地の検問所前。そこにはどういうわけか優と信参が立っていた。
「初の海外旅行がまさかの軍事基地なんて…それもこいつと」
「旅行じゃなく校外学習だ。学校側もそういう扱いにしてくれてるんだから、くれぐれも粗相のないように。それと基地の中では軍人方の指示に従う事。我々がいるのはアメリカ、それも軍事基地だ。少しでも怪しい動きをしたら問答無用で射殺されるぞ」
優は校外学習と言ったが、実際は依頼のためにここへ来ていた。
「それにしてもまさか、お前のスマホに直接電話が掛かってくるなんてな」
「ウェブサイトを伝ってそこまで辿り着いたのだろう。全く脅威の軍事力だよ」
事の発端は一週間前の放課後。部員と共に校舎の外壁を修理する魔法道具を造っていた優の元に電話が掛かってきた。知らない番号なのでそのまま無視するつもりでいたのだが、なんとスマホに触れていないのに通話が始まったのだ。
通話主はエリア51の秘密研究所に勤務する男、本名ではなくドクターニューワと名乗ったその男は優に依頼があるとのことだった。
「わざわざお電話いただきありがとうございます、ドクターニューワ。それで依頼の内容とは?」
「通話越しでは明かせない。経費はこちらから出す。エリア51へ来てくれ」
「は?」
「おっと、通話を切るな、アメリカの軍事力をナメない方がいい。君が高校の敷地内にいる事は分かっている。逃げたところで付近の防犯カメラから動きを追う事もできる」
スピーカーから聴こえる不気味な声を気味悪がって、部員達の作業の手は止まってしまった。
「手荒な招待ですね。しかし私一人で行くのは少々不安があります」
「一人だけなら同行者を許す。強力なボディーガードを雇うといい。こちらの経費は出せないがな」
「ありがとうございます。一週間以内にお伺いします」
「基地の前まで来たら迎えを寄越そう。もしも一週間以内に来なければ…どうなるか、想像するのも一興だろう」
言いたい事だけ言ったニューワは通話を切った。優はどうせ無理だろうとこちらから電話を掛けようとはしなかった。
「優!」
「心配するな。ちゃんと行く。騒ぎは起こさせないさ」
「そうじゃないわよ!こんなこと一度もなかったでしょ!本当に行くつもり!?」
「無事では済まないだろうが行かないで済む話でもなさそうだしな」
他の部員達が優を止めている中、信参は作業に戻ろうと造り途中だった魔法道具の方を向く。しかしそんな彼に、優は白羽の矢を立てていた。
「礼木、他人事ではないぞ。お前も行くんだからな」
「はぁ!?なんで俺が!?」
「海外に飛ぶなんて慣れっこだが、エリア51なんて物騒な場所に行くのに独りでは心細いからな。ちなみにエリア51というのは…まあ、宇宙人が関わってるアメリカの軍事基地だ」
「絶対いかねえ!つーか海外!?パスポートねえし!」
「心配するな。通常のルートでは10日掛かるが私には伝手がある。今日中に用意しよう」
「嫌だ!絶対に嫌だ!」
そうして断固拒否する信参だったが…
「お願い礼木君、優についていってあげて」
「で、でも副部長…今回ばっかりはこいつの言うこと…」
「物騒な依頼は珍しくないけど、こんな強引なやり方で頼まれた事はないの。だから何か嫌な予感がして…お願い。お金が必要ならいくらでも払うから」
「やめてくださいよそういうの!…清瀬、副部長の頼みだ。ついて行ってやる!その代わり、俺に何かあったら責任取れよ!」
「風花には甘いねぇ…まあ、カマルリングで脅せばすぐだったがね」
優を毛嫌いする彼だが、風花の懇願もあって同行することを決めた。それに要求があれば左手薬指に付いたカマルリングで脅してくるのに、今回に限ってそれがなかったのだ。
こうしてドクターニューワからの強引な招待を受けた優と、同行者に選ばれた信参は軍事基地のあるこのネバダへやって来たわけだ。
彼女達はこれから軍事基地内のエリア51へ向かうことになる。そこで彼女達を待っていたのは、とんでもない依頼だった。




