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魔法道具研究部部長、清瀬優の元には毎日数多くの依頼がメールでやって来る。これまで部活動の一環として手の付けた依頼は全て彼女が選んだものだった。
活動にも慣れてきた今日この頃、優は届いた依頼を部員と確認してどれに手を付けるかを選ぶことにした。
部室の黒板に優のノートパソコンと繋がったプロジェクターの光が投射されていた。そこには彼女のウェブサイトが映し出されていた。
「ところで、どうして急に皆で依頼を選ぼうなんて思ったの?今まで通りあなたが選んだ物をやればいいじゃない」
「いつか私と風花もいなくなる。この部を引き継ぐ後輩達に立派な部活を形そのままで引き継いで欲しいからね」
優はマウスを動かしてメールボックスを開く。そこにはおよそ100件もの依頼が届いていた。
「沢山届いてますね…これ全部受けるってわけじゃないですよね」
「弓星君、良い質問だ。ここに届いたメールは24時間後に自動で削除する仕組みだ。だからトップページにも、全てのメールに目が通せるわけではないと予め注意書きをしてある」
「なるほど…」
早速、一番新しいメールを開く。依頼内容は失踪したペットの捜索だった。
「これは…皆ならどうする?」
「受けましょうよ!きっと依頼主は今も帰りを待っているはずです!」
「そうか。だが私なら受けない」
「えぇ!?どうしてですか!」
「確かにペット探しなど難しくないが、まずはレスキューや探偵に依頼するべきだ。そっちの方が早いし確実性もある。専門家が出来る事に私達学生が首を突っ込んでも事態がややこしくなるだけだ」
「もしも専門家の人に依頼した上でメールを送ったとしたら?」
「そういう時のためのアドレス確認だ。この依頼主からのメールはこれが初回のようだ。まずはアドレスを登録し、再度メールが来たら連絡を取り合う。それで専門家への依頼がまだならそちらを勧めて、それで見つかっていなかったとしたら私達の出番というわけだ。というわけでこのメールは削除」
ドライな対応であるが仕方がない。一々こういう小さな問題に構っていては埒が明かなくなってしまう。
「次のメールは…うわぁ、まただ」
「外国の言葉ですね」
「こういう時は翻訳機能だ。まあ内容は察しが付くが…」
外国語で送られてきた依頼の内容。それは魔法を利用した兵器の設計依頼だった。
「一つ辺り500円で造れる地雷の設計依頼だ」
「えぇぇぇ!?う、受けないですよね?」
「当たり前だろう。人を助ける魔法道具の技術を悪用されちゃたまらない。こういうアドレスはブロック…してるのだが、その度に別のアドレスからメールを送って来て困るんだよなぁ全く。私が戦争嫌いな日本人と分かって依頼してるのか…?」
これ以外にも暗殺や密輸など、犯罪に巻き込まれそうな依頼が数多くあったが、それらのメールは次々と削除されていった。
そうしてしばらくの間、届いた依頼を確認し続けてようやく自分達に合った物が見つかった。
「市内の広場で運動会がある。その事前準備として周囲の清掃や石ころの排除…まあ、これでいいか」
「それこそ業者とかが行うべきじゃないですか?」
「いいかい弓星君。私達がこの依頼を受ける事で運動会の運営者、参加者と大勢の助けになる」
「どれだけ多くの助けになるか…ですか」
「優先順位を付けるなら、末永さんのように直接相談に来た者の依頼、次にコレのような大勢の人のためになる依頼、あとは自分達の手でなんとかなりそうな依頼だ」
優のアドバイスの元、後輩達は次の休日に受ける依頼を選んでいく。やがては彼女ではなく部活のウェブサイトを作り、そちらでメールを受けることになるだろう。




