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龍ゐ寅ゑ!いけいけ奇才シンサくんD@YNA  作者: 仲居雅人


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32/43

@32

 鬼の顔と呼ばれる鳥居を潜ったことが原因で、形はソックリだが空が真っ赤な別世界へと迷い込んでしまった信参と喜美子。二人は元の世界へ戻るため、硬貨の破片を探して街を探索していた。


「なぁ、この世界に来てからどれくらい経った?」

「既に1時間は経過しているはずだが…時計が壊れた以上、正確な時間は分からない」


 お互いの手首に付けていた腕時計は止まり、スマホに表示される時刻は文字化けを起こしていた。


「鳥居の次に神社…なら次に破片がある場所は…どこだ?」

「ホラーゲームなら分かり易い場所にあるはずだ」


 喜美子のゲーム知識を頼りに残る破片を探す。しかし破片は見つからず、二人は一度、こちら側の鬼の顔まで戻った。



「進展ナシだな…」

「ナシ…というわけじゃなさそうだぞ。見ろ礼木」


 目指していた鬼の顔のそばに、額から角を生やした人間のような何かが立っていた。


「なんだよあいつ…」

「鬼だ…隠れるぞ」


 二人は物陰に身を隠した。

 喜美子が鬼と呼んだそいつは鬼の顔の下から一歩も動かず、トゲの生えた棍棒を地面に突き立てて仁王立ちしていた。




「あれは明らかに俺達を待ち構えてるよな。どうする?」

「恐らく…硬貨はあいつが持ってる」

「なんだって?分析できたのか?」

「いや、神社にいたやつと同じであいつも非生物みたいだ。だけど2枚集まったタイミングで現れたとしたら無関係とは思えない」

「た、戦うのか?」

「無理を言うな。魔法での戦闘を学ぶ専門校出身ならともかく、私達は普通校の学生だ。まずはあいつを観察してみよう」



 信参と喜美子は二手に分かれた。そして鬼を挟む形で回り込み、硬貨の破片のような物がないか観察した。一見すると怪しい物は何もない。しかし向かい側にいた喜美子はこちらへ来るように手招きした。


 彼女に誘われた信参はうっかり、鬼の前に出てしまった。そして彼を目視した瞬間、鬼はその場から走り出した。


「うわぁぁぁ!?」


 信参は大慌てで走り出す。向かう先には、彼を誘い出した喜美子がいた。


「こっちに連れて来るんじゃぁぁぁない!」


 二人は並んで鬼から逃げ出した。


「こういう時ゲームならどうするんだ!?」

「逃げ切るのが普通だが…今が最終局面だとすると、あいつは私達を永遠に追ってくるかもしれない…そうだ、あいつの持っている棍棒だ!柄の下に造られた輪から、硬貨の破片が吊り下げられていた!」

「本当か!?…じゃあ俺があいつの気を引く!お前はなんとか破片を奪って、鳥居の穴に嵌めるんだ!」


 信参はブレーキを掛けながら180度回転し、追いかけて来る鬼と向かい合った。


 もしも彼が魔法での戦闘経験がある人間だったら、金属魔法を上手く使いこなしてこの鬼を倒してしまうだろう。しかし信参はごく普通の生活を送って来た高校生である。


「うわぁぁぁ!」


 彼はただひたすらに発生させた金属の礫を前に撃ち出した。しかしこんな物で鬼は怯むことなく、足を止めた獲物に向かって突進してきた。


「うっ嘘ォ!?」

「礼木!礫を止めろ!」


 喜美子の声は届かず、信参は攻撃を続けた。彼女は礫を喰らいながらも鬼に取り付くと、前へ走る勢いを利用して転倒させた。


「ふ、古土!」

「さっさとこんなところからおさらばするぞ!」


 喜美子は棍棒に付いていた硬貨の破片を引き千切ると、怯える信参を引っ張って鳥居へ向かった。


「くそぉ!用意が出来てればあんなやつ…!」

「なに悔しがってんだよ?!それより硬貨は!?これで全部の破片が揃ったんだよな!?」


 鳥居に付いた喜美子は円形の窪みに硬貨の破片を全て嵌めた。すると硬貨は完成し、鳥居の中心に裂け目のような物が現れた。


「飛び込めぇ!」


 鬼は追って来ていたが、二人はお構いなしにその裂け目の中へ飛び込んだ。




 裂け目へ飛び込んだ直後に景色は一変。空は青く変わり、周りに優達が現れた。どうやら、元の世界へ戻れたようだ。


「おぉ!二人とも探したんだぞ!全く困るじゃないか」

「も、戻って来れたぁ~…」

「はぁ…部長、私達が受けた依頼について一つ確認したいことが」

「なんだい古土君」


「私達はこの鳥居を中心に起こる不可解な現象の調査を依頼を受けました。だけど仕組みが判明した今、解決してしまってもよろしいですよね?」

「ん?…まぁ、人を不幸にする以上、早く解決するのが望ましいな。そもそもお金が勿体ないからってタダで働く私達に依頼したんだ。どんな結果が出ても依頼主に文句は言わせんよ」

「…だそうだ。やれ、礼木」


 信参は手を構えた。そして大きな金属の塊を作り出しては鳥居に向けて発射。自分達を危険な目に遭わせた憎き鬼の顔を破壊した。


「あ………えぇぇぇ!?君ィ!一体なんてことしてくれたんだ!?」

「昔からある物だからって残されてたのかもしれませんけどね、人を不幸にするって分かってる時点でさっさとぶっ壊すべきなんですよ。古い物を捨てられない、日本人の良くないところが今までの不幸を招いたんですよ」

「ふぅぅぅ…鬼は外って、節分にはちょっと早過ぎるか」




 こうして魔法道具研究部は、不幸の元凶となる鬼の門を破壊するという形で依頼を完了した。当然ながら依頼主からはもちろん、鬼の門に思い入れのある人々からクレームが入った。しかし破壊してから不可解な現象は起こらなくなり、やがてクレームを入れる者もいなくなったのであった。

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