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入学式から一週間後、信参は新入部員になってくれる生徒を探していた。
「なあ上門って部活やるのか?」
「うん!友達と一緒に美術部に入ろうって話してたんだ!礼木君も一緒にどう?」
「いや~俺はな~…そっか~頑張れよ~」
信参が左手の中指に付けているカマルリングは数あるルールを1つでも破った瞬間、そこから彼の身体を爆発させる。
当然、部活を掛け持ちしてはいけないというルールもある。信参に選択する権利はないのだ。
「おはよう文音」
「あっ明ちゃんおはよー!」
文音と明は鍵の一件から友達になっていた。
一方で信参はあれ以来話す機会がなかったので、これが二度目の会話になった。
「礼木、どうかしたの?」
「魔法道具研究部入らない?人が足りなくてさ…」
「あーごめん無理。私、スカウト受けてるんだよね」
「えースカウト!?凄いじゃん!何部?」
「部活じゃなくて委員会。模範生として風紀委員に入って欲しいって頼まれたの。選挙せずにやらせてもらえるから、履歴書に書くことが楽に増やせてお得でしょ」
「それじゃあ委員会と部活、兼業するっていうのは──」
「し、つ、こ、い…他を当たってちょうだい」
明からキッパリと断られてしまった信参だったが、諦めずに他のクラスメイトを勧誘。しかし部員になってくれる人物は一人も現れなかった。
それもそのはず。魔法道具研究部は曲者揃いだと噂が立っているからだ。信参がそのことを知ったのは放課後になってからだった。
「おい清瀬!」
「コラ礼木、部室の扉を乱暴に開けるな。それに前から言っているが私は先輩だぞ」
「敬語を使って欲しかったらそれなりの態度を見せろ!そんなことよりも!この部活は悪評がありすぎる!こんなんじゃ何度勧誘したって誰も来るはずないだろ!」
「だったら君が何とかしたまえ。魔法道具研究部員として、悪評を塗り替えるような物を作ってみせろ」
「ハァァァァァ!?俺に魔法道具なんて作れるわけないだろ!」
信参が叫び散らかしているのを見て喧しく感じた優は、細長い指をパチンと鳴らす。すると部室のロッカーから箒と掃除機が飛び出し、彼女の元までやって来た。
「これはどちらとも私が開発した魔法道具だ。複数の魔法式を掛け合わせた掃除機は無理でも、箒ぐらいなら君にでも作れるだろう」
「箒なんてどこの教室にもあるだろ!誰が欲しがるんだよ!?」
「別に箒じゃなくていい。必要としている人に必要な道具を提供するんだ。そうすればこの研究部の印象も良くなって、部活に入りたいという人が続々と現れるだろう」
「そんなトントン拍子に事が運ぶわけ…っていうかお前は何もしないのかよ!」
「私は学外への協力で忙しいんだ。学内は君に任せるよ」
今度は棚からA4ノートを引き寄せて、それを信参に渡した。
「私が考えた魔法道具の基礎設計図だ。まずはそれを元に何か作ってみるといい」
「設計図なんて見せられても俺素人だし…」
パラパラとめくるが、信参には難しい事ばかりが書かれていた。
「さあ!今日の部活内容は依頼者探しだ。礼木、こんな場所でボヤボヤしていないでさっさと行ってこい」
「そんないきなり!おいちょっと!」
優の僕である魔法道具が動き出し、信参を廊下へ追い出した。
「はぁ…」
ため息を吐いた信参は優に言われた通りに、魔法道具を必要としている人を探しに校舎を回り始めた。
部活から同好会に格下げされた瞬間に彼は死ぬ。そんな最悪の未来を避けるためにも、今はこうして動かなければならないのだ。