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花天魔法高等学校第二美術室。3,4時限目が美術である信参達がそこにいた。授業の内容は隣の生徒とペアを組んで、交代でモデルとなってお互いを描くという物だった。
「上門ってやっぱり上手いのか?」
「私は美術部だけど絵を描くのが好きなだけで、別に上手いわけじゃないよ。礼木君は?」
「出来上がってのお楽しみ。ビックリするぞ…!」
二人は机を動かして、ポーズを取るのに充分なスペースを取った。
「どっちがモデルやる?」
「じゃあ最初は俺からやるよ。どんな風にしてればいい?」
「じゃあ…ブレザー脱いでネクタイ外して。一番上のボタンも外して、袖は肘くらいまで捲って」
随分と注文が多かったが、信参は気にせずに言われた通りにした。
「ゴクリッ…」
「こんな感じ?…上門?」
「鍛えてるんだね」
そう言われて調子の良くなった信参はポーズを取ってみたが、すぐに修正されてしまった。
モデルになった信参は動くことを許されず、自分を描いてくれている文音をボーッと見ていた。
「…れ、礼木君、あんまり見ないで。恥ずかしいよ…」
「あぁごめん。見られながらだと集中できないよね」
しかし本来恥ずかしがるのはモデルになっている側なのでは?そう思ったが信参は黙っておいた。
そうして3時限目終わり頃、完成した文音の絵は見事な物だった。
「細かいところまでしっかり描かれてる。上手いな~」
「へへへ~そんなに褒められると恥ずかしいよ。それじゃあ次は私がモデルやるね。どんなポーズにしようか?」
文音はバッグからポーズ集の本を取り出して、信参の隣に来た。
「へえ~こんな本があるんだ。モデルの人、身体柔らかいな~」
「私も毎日柔軟してるからこれくらい余裕だよ」
「お~足がどんどん上に──」
そこへモデルを終えて休憩中だった明がやって来た。
「二人ともくっ付き過ぎってちょっと文音!?」
「あ、明ちゃん見て見て~凄いでしょ~!」
「見えてる!下着見えてるから!」
「えっ」
明が叫んだ瞬間、自身のモデルを凝視していた男子生徒の視線が一斉にこちらに集まったのだった。
そんなこともあって、信参は顔を赤らめて座っているだけの文音を描くことになった。
「そ、そんな固くならないで。笑ってさ、ほら」
「うぅ~…」
信参は筆を持つ手をスラスラと動かした。
「絵を描く時は速筆じゃなくてもいいんだよ!?もっと対象をジッと観察して…あぅ、やっぱり見ないで…」
「う~ん、慣れない筆だとあんまり上手く描けないな~」
モデルとして見られても恥ずかしがってしまう文音なのだった。
そうして信参の絵は完成した。
「出来たよ!ほら!」
「上手!ってこれじゃあデフォルメだよ!?」
実在している人物を描くという授業の中ではあまり褒められた物ではないが、信参の絵は確かに上手かった。
「あれ、その絵…」
「おっ?」
クラスメイトの一人が信参の描いた絵に目を付けた。
「礼木の絵ってあれだな。イモータル・アランの絵柄に似てるな」
イモータル・アランとは、物部薫という人物がネットで掲載している漫画のタイトルである。
「あれって面白いよな~!」
「そうかあ?」
その疑問の一言だけで信参は深く傷付いた。それもそのはず、物部薫とは他でもなく彼なのだから。




