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花天魔法高等高校は見湖市唯一にして偏差値高めな、魔法を学べる高校である。
今日は入学式。前日に配布された資料を頼りに、新入生達が自分の教室に向かって進んでいた。
「俺はA組だったな」
ちょうど今、校舎に入った少年が新品の上履きを履いた。パッと見普通の男子生徒だったが、左手中指には銀色の指輪が嵌まっていた。
新入生の中に知り合いはいない。ゼロからのスタートだが、それに怯えることはなかった。
「信じて参ると書いて信参。礼木信参です。これからよろしくお願いします」
教室での自己紹介を済ますと信参は席に戻り、手に付いた指輪に目を向けた。
「ねえねえ」
「ん?」
隣の席の少女が声を掛けてきた。どうやら指輪に興味があるようだ。
「その指輪、カッコいいね。どこのお店で買ったの?」
「え…これは~…オーダーメイド品。うん、そんな感じのやつで非売品なんだ」
「へぇ~いいなぁ~…あっ私は上門文音」
「知ってるよ。さっき物を操る魔法が得意って自己紹介聞いた。これからよろしくな」
信参は文音と話しながらも、指輪に意識が戻っていた。
ようやくこれが指から外れると安堵している。彼にとってこれは呪いの指輪なのだ。
「えー部活紹介は来週ありますが、今日活動している部活が4つ…5つあるのかな。興味がある人は顔を出してみるのも良いと思います」
「礼木君は部活入るの?」
「入部するつもりはないけど、とりあえず顔を出さないと行けない部活が一つ…」
「あ~オーキャンで入部するって約束したけど、諸事情で入部出来なくなったパターンね。ちゃんと断り入れに行くなんて律儀だね」
「あはは…」
実際のところ、信参は入部どころかここへの入学すら考えていなかった。
この指輪によって、全てが狂ってしまったのだ。
放課後、信参はオープンキャンパスでの記憶を頼りに校舎を進んだ。そして目的の部室の前に辿り着いた。
「魔法道具研究部…俺の人生を変えた忌まわしき場所…」
礼儀よく3度ノックしたかと思うと、信参は壊れそうな勢いで扉を開けた。
「よく来たな。入学おめでとう」
「清瀬優ゥゥゥゥゥ!この指輪を外せェェェェェ!」
魔法道具研究部の部室には、信参より学年が1つ上の女子生徒がいた。
「そう怒鳴るな。私の目に狂いはなかった。君はここの生徒に選ばれる素質の持ち主だったんだ」
「こちとらあの日から死ぬ気で受験勉強したんだ!約束通りに指輪を外せェェェェェ!」
先輩と敬うべき相手に怒鳴り、信参が走り出したその時、周囲に置かれていた魔法道具が起動して彼を捕えた。
「合格祝いに外してあげたいが…それが出来なくなった」
「はァァァァァ!?何でだァァァァァ!」
彼がそこまで外したい中指の指輪。これは外すことが出来ず、なんと一年以内に花天高校に入学しないと装着者の肉体を爆発させるという呪いが仕掛けられているのだ。