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勇者を守った男は成り下がり少女を守る ~護衛と踊り子の兄妹、歌って踊って傷ついた世界を癒せ!~  作者: ネコ軍団
第2章 空中劇場への招待

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第99話 新たなる旅へ

「ロッソさん! よくご無事で!」

「セドニアさん!」

「ありがとうございました。あなたのおかげで劇場飛空艇は無事でした。よかった。本当によかった」


 格納庫にセドニアが入ってきて、うれしそうにロッソと握手を求めてきた。


「被害はどれくらいですか?」

「楽団員と飛竜騎士に数名の負傷者がでましたが死者はいません」

「そうか。よかった」

「ただ…… 観客は…… 死傷者が多くて…… 今は生き残った約二百人の観客を飛空艇内で保護してますがキースのあの発言だとカネリア王国に帰すのが正しいかわかりませんのでどうするかはこれから検討します」

「堂々と観客を殺しても構わないって叫んでたしな…… あいつ」


 神妙な面持ちで話すセドニアとロッソだった。セドニアは少し気まずそうにロッソを見ながら話を続ける。


「それと飛空艇も緊急発進のダメージが深くて…… すぐにどこかに着陸しないとまずいです。ただここジーリア大陸に降りるのは危険でしょうから近くのナール大陸のジサイト帝国へ向かいます」

「ナール大陸のジサイド帝国か…… 閉鎖的であまり行きたくないが…… 緊急事態じゃな」


 ロッソの言葉に苦笑いをするセドニアだった。ジサイド帝国は皇帝の権力が強く独特な文化を持ち周辺国との交流が少なく魔王軍との戦いにも兵士を中々送らないなど閉鎖的な国家だ。また、外国人への偏見も根強く、ロッソはキーストの旅でかの国を訪れ嫌な思いをしたことがある。ただ、キースが国王になるカネリアよりはましだろう。


「ねぇ!? お兄ちゃん。キースはなんで劇場飛空艇を狙ったの? 目的は?」


 シャロがロッソとセドニアに近づき会話に入って来た。


「さぁ? 俺は元仲間だけど…… さすがにそこまではわからねえな」

「以前と同じでこの飛空艇の輸送力が欲しいんでしょう…… きっと近々あのハイグレードオークたちを使って他国へ侵略を開始するはずです」

「なっなんでそんなこと……」

「僕はこの飛空艇を作る時に気に入らなければ全部壊して作り直してました…… もしキースが僕と同じなら…… 魔王を倒して救った世界が気に入らないから自分から作り直すかもしれません…… だってもう自分より強い存在はいないんですから……」

「そっそんな……」


 セドニアの予測を聞いて言葉を聞いて言葉を失うロッソだった。セドニアの仮説ではキースはハイグレードオークを作って兵士にし劇場飛空艇を使って侵略をするためだという。魔王との戦いで行方をくらませたのが侵略の準備だったということだろう。ロッソはそんなことのために彼に協力をしたわけではない。


「クソ……」


 悔しそうに拳を握るロッソ、厳しい表情でセドニアは顎に手を当てている。シャロはセドニアの話を黙って聞いていた。


「セドニアさん! ちょっと来てください」

「おっと! ごめんなさい。僕はこれからブリッジに戻ります」


 船員に呼ばれ慌ててセドニアは走っていってしまった。残ったシャロは右腕を伸ばし左腕で右腕の肘を抑えて伸ばしている。


「さっ! お兄ちゃん! 今日はゆっくりと休んでね。きっとすぐに出発することになるわ」

「出発って!? シャロ!? 何を言ってるんだ?」

「だってもうガーネット王女の誕生会は終わったのよ。あたしたちと劇場飛空艇の関係はおしまい! それに聞いた? 着陸するのナール大陸だって! ちょうどいいわ。サロマステップ平原劇場があるじゃない! 次はそこを目指しましょう!」


 両手をあげ次の旅の目標を楽し気に話すシャロ、世界がどうにかなろうとしているのに、自分たちの旅のことばかり話す妹にロッソは唖然としていた。


「お前!? 何を? こんな大変な時に?」

「大変って? そんなのあたしたちに関係ないでしょ……」

「関係ないって!? そんなわけにはいかないだろ」


 自分でも言ってることに自信がないのか、シャロはロッソと話していくうちに下をむいて声が小さくなっていく。ロッソはシャロの肩に手を置く。


「シャロ! キースが戻って世界を……」

「関係ない! 関係ないって!!!!!」


 うつむいて大きな声でシャロが叫んでロッソの言葉遮った。ロッソはつかんでいたシャロの肩から手をはなす、彼女の足元には点々と水滴が垂れていた。


「おっおい…… シャロ……」

「キースなんて関係ない…… もうお兄ちゃんを渡さない…… あたしは…… ずっと……」

「シャロ……」


 うつむいて泣きながらシャロはロッソを渡さないとつぶやいていた。泣きながらつぶやくシャロに、ロッソは動けないでいた。ミリアとリーシャがシャロを心配したのかすぐに駆け寄ってきて、ミリアが優しく泣く彼女の背中を撫でている。


「シャロちゃん……」

「シャロ? どうしたです? 泣いてるですか?」

「ううん…… ごめん……」


 顔をあげて目をこすると、シャロはリーシャにやさしく微笑む。ロッソの方をむいて下から顔を覗き込んで少し怒った顔をした。


「お兄ちゃん! いい? あたしたちはただの旅の音楽パーティのブルーセイレーンよ。世界のためにできることは楽しい歌と演奏を届けることだけ! それ以外は関係ないの! わかった?」

「シャロ…… わかったよ。もう俺は世界を救う勇者パーティのロッソじゃない。音楽パーティブルーセイレーンのただの護衛(ボディガード)だもんな」

「そうよ! その通り! よくわかってるじゃん」

「はいはい」

「ふふふ」


 頷いてシャロに返事をするロッソ、彼女は嬉しそうにほほ笑むのだった。ロッソたちブルーセイレーンは劇場飛空艇から離れることをセドニアへ伝えるのだった。

 残念な様子でシャロたち三人の演奏を高く評価していたセドニアは、シャロたちを正式にセドニア音楽団に迎え入れるつもりだったと話してくれた。

 落ち込むセドニアにシャロが自分たちの旅の目的をつげた、彼女の夢は劇場飛空艇に頼ることなく自分の力だけで四大劇場制覇(グランドスラム)を達成することだ。シャロの夢を聞いたセドニアは、応援してると笑顔で答えるのだった。テルマとケビンにも別れの挨拶したロッソたち、みな名残りおしそうにしていたが快く送り出してくくれた。ただ…… マーロンだけはずっと泣いていた。

 翌日の早朝。劇場飛空艇はジーリア大陸から、海を超えナール大陸のジサイド帝国領内へと着陸した。


「さぁ行くわよ。目指せサロマステップ草原劇場!」

「いくです」

「いきますわ」


 シャロの掛け声にミリアとリーシャが勇んで答える。劇場飛空艇の扉が開き、馬車がゆっくりと動き出した。ブルーセイレーンは新たな大陸で新たな音楽を奏でるのだった。

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