第97話 護衛任務完了
集中し大剣をガントレットの甲の宝石が赤く光りだした。
「えっ…… これは…… うわ!」
左手を思わず守護者大剣からはなすと、小さい無数の光線が周囲へと散らばっていく。
「えっ!? なんだよこれ…… えっと……」
ガントレットの手の甲の装甲に文字が浮かび上がっていく。浮かびあがった文字は赤い光で、ロッソの名前と数字の110と書いてあった。
「こんな数字どこかでみたような…… えっ!? あいつらにもか!?」
周囲に目を向けると、ハイグレードオークたちの胸に数字で68と浮かびあがり、キースには125と数字が表示されていた。彼らは胸に文字が浮かび上がっているのに気づいてないようだ。
「気づいてないのか…… いやもしかして見えるは俺だけなのか……」
書かれた数字はガントレットの力によって、飛竜の能力を得たロッソにしか見えないのだ。
「あの数字は…… 冒険者ギルドで聞いた戦闘能力値なのか?! そういや…… セドニアが敵の能力が分かるって……」
ガントレットがはなった光により、見える数字はロッソの言う通り戦闘能力値だった。先ほどの放たれた無数の魔法の光が周囲のハイグレードオークたちをスキャンして数字化したのだった。
「ははっ。冒険者登録の時に測った数値は92だったのに俺も少しずつ成長してるんだな……」
手の甲に表示された自分の戦闘能力値をじみじみと見つめるロッソだった。
「って! 今はそんなこと気にしてる場合じゃないだろ!」
すぐに我に返ったロッソは、剣先をキースに向けて集中して闘気を剣に送り込む。
闘気に反応してキースとハイグレードオークたちの胸に先端が丸い白い四つの線が表示された。四つの線は縦、横の十字型に配置され、中心がわずかに隙間があった。白かった十字が固定されて赤く変わった。
「戦闘機がロックオンした時みたいだな…… こいつら全部に弾丸が飛ぶのか…… さすがセドニアだぜ……」
ニヤリと笑ったロッソは腰を落とし足を踏ん張り、体勢を低くして右手を引いて突きの構えをした。キースに守護者大剣の剣先を向けた。同時に彼は魔法障壁を消した。
「うん!? ロッソ! 何をしている!?」
目の前の障壁が消えたことに気づいたキースが俺の方を見る。
「はは…… キース! 今更か!? 気づくのが遅いよ。半年もさぼってたから勘が鈍ったんじゃなねえか!?」
「なっなんだと!? 貴様!!!」
「お前が間抜け面して驚く顔が見えてよかったよ」
キースが劇場飛空艇へと向けていた左手をロッソへと向けた。しかし、もう遅い。
「頼むぜ相棒! セドニアのいう本当の力を見せてくれ! ミリアとリーシャとグアルディア…… そして……俺の大事な妹シャロを助けてくれ!」
守護者大剣が反応したのかロッソの脳裏に言葉が浮かぶ。
「複数照準闘気弾丸…… 全弾発射 !」
叫びながらロッソは守護者大剣を前に突き出した。
剣から無数のオレンジの光の弾が飛び出して、放物線を描いてキースとハイグレードオークたちに向かっていく。
「闘気弾丸か…… 綺麗だな……」
けたたましい光がオレンジの光が、城の中庭を照らし床に反射してすべてを染めた。オレンジの光の弾はセドニアが守護者大剣にもたらした新たな力である闘気弾丸だ。文字通り闘気を魔力の弾丸に変えた物だ。威力は使用者の戦闘能力値に依存し、通常は相手へとまっすぐ飛ぶだけだが、ロッソのガントレットと連動することで自動追尾の誘導弾へと変わる。闘気を限界まで投入することで周囲の敵全てを薙ぎ払う全弾発射をはなつことができる。
「なっなんだこれは!? クソ!」
オレンジ色の光を放つ三つの闘気弾丸が不規則に動きながらキースに迫る。キースは飛び上がり迫ってくる闘気弾丸をかわす。だが、闘気弾丸はキースを追いかけて曲線を描くようにして回り込んで追いかけてくる。彼を追いかける弾道がオレンジの帯のように伸びていく。その姿は誘導型のミサイルが標的を追いかける姿に酷似していた。
「ちょこまかと! うっ!?」
キースの動きが鈍った。ロッソの目に見えていた、赤い十字が黒くまがまがしく光りだした。これはガントレットが付与する飛竜の力で、相手の動きを鈍らせ闘気弾丸を命中しやすくするのだ。
「クソ!! 炎大砲」
追いかけてくる闘気弾丸をかわすのをあきらめて、キースは左手で魔法を放つ。キースの手から放たれた巨大な火の球が闘気弾丸とぶつかって爆発する。ロッソの周囲を煙が漂い、爆発の赤色の光に地面が照らしている。
「さすがキースだな。でも…… お前の部下は無理みたいだぞ」
守護者大剣から、放たれた無数の闘気弾丸がハイグレードオークたちに襲いかかる。
彼らの着ている金属製の鎧を、オレンジの光の弾丸はものともせず突き刺さる。ハイグレードオーク一体につき二発か三発の闘気弾丸が突き刺さっていく。闘気弾丸が命中したハイグレードオークの体は膨張し、突如ボンと音がしてハイグレードオークが内部から爆発して破裂していく。
ボン! ボン! ボン! と小気味よく破裂音がこだまし、ハイグレードオークたちの肉片や血が飛び散って城の中庭を血で染めていった。
仲間が次々と肉片に変えられたハイグレードオークたちは、魔法攻撃を途中でやめて一目散に逃げ出しだした。しかし、ロックオンされた執拗に闘気弾丸は彼らを追いかけて仕留めていく。
「チッ! 地獄火炎!」
キースが左手を生き残ったハイグレードオークたちに向けて魔法を唱える。ハイグレードオークたちの地面の周りから数メートルの高さに炎が噴き出した。突如現れた炎をかわしきれずに闘気弾丸がぶつかって爆発する。
ハイグレードオークたちは怯えた顔で頭を抱えて、伏せながら闘気弾丸が爆発する様子を眺めていた。キースは上空からその様子を見てホッと安心した様子で眺めている。
「フフ…… 意外なことしがやがるな…… まぁいい。これで十分だ」
劇場飛空艇の姿が小さくなっていく。もうあそこまで行けば魔法は届かない。
「味方のために障壁を展開することしか、脳のない君にこんな力があるとは……」
キースはロッソを睨みロッソに向かって歩きだした、彼は途中で地面に落ちていた剣を左手で拾い確かめるように斜めに一回だけ剣を振った。
「しかし本当にすごい威力だったな。守護者大剣の真の力か……くだらない意地を張っていりませんとか言った俺は馬鹿だな。最初から使ってればここで死なずに済んだかもしれないのに……」
キースは悔しそうな顔をして爆発で、散らばったハイグレードオークのかけらを見ていた。
「フン…… 俺の時は嬉しそうにして腹をさしたくせに……」
自分の時と違い仲間の死を悼むようなキースに、ロッソは不満をあらわにする。
「なんだ? キースさんはハイグレードオークが死んで悲しいのか? 俺の時みたいに見捨てればよかったじゃないか」
「何を言ってるんだ? 僕は今も昔は仲間は大事だよ…… 利用価値があるうちだけだけどね」
「くたばれ。でも残念だったな劇場飛空艇はもう安全だ」
「フン…… あんな飛空艇はいつでも潰せる。今はここでお前を確実に殺す方が重要になったしな」
キースは強がりなのか鼻で笑いロッソに剣先を向けた。
「はぁ…… 二度も勇者に刺されるか…… そんな貴重な経験できるのは俺だけだろうよ。だけどな…… そう簡単には殺されねえよ」
ロッソは右手に力を込めて剣先をキースに向ける。キースは驚いた顔ですぐに身構えた。
「はは…… なーんてな。やっぱり無理か…… さっきので力を使いすぎたな」
手に力が入らず大剣は力なく地面に落ちた。足から力が抜けてロッソは、剣を握ったまま膝をつき顔をキースへと向けた。ロッソの様子にキースはホッとした顔をする。
「キース…… そんなにビビるなよ。もう何もでない。さっきのが最後っ屁ってやつだよ」
満足そうに笑うロッソだった。先ほどの闘気弾丸の攻撃でロッソは力を使いはたしていた。ただ、劇場飛空艇は風の力を利用しクーリアンの上空からは脱しており彼の目的は終わった。
「シャロ…… わりいな。俺が旅に付き合えるのはここまでだ…… お前たちは生きて旅をつづけるんだ。そしていつか四大劇場制覇を達成しろ…… よ」
ロッソは最後の力を振り絞り、背中に守護者大剣をしまい膝をつき正座してうつむくのだった。そのまま彼は静かに目を閉じ最後の時を待つのだった。




