第93話 突然の再会
七日にわたって行われるガーネット王女の誕生会の四日目。午前の公演が無事に終わり休憩を挟んで、午後の演奏が始まろうとしていた。ロッソはトレイにシャロたちに飲み物を乗せて持っていき渡す。
「騒がしいな。まぁしょうがないか。今日はガーネット王女の誕生日だもんな」
今日は主賓であるガーネット王女の誕生日だ。そのためか観客がいつもより多く盛り上がっていた。誕生日会は昨日までは前夜祭のようなもので今日から本祭といったところだ。
「お兄ちゃん! お水ありがとう。じゃあ! 準備があるから」
「おぉっと!」
シャロが飲み終わった水が入っていたコップを、ロッソが持っているトレイに勢いよく置くと走っていってしまった。彼女がコップを置く勢いが強くて倒れそうになったのを、慌ててロッソがうまくバランスをとって戻した
「危ないからもう少し優しくトレイに置いてくれよ……」
がさつな妹に嘆く兄だった。午後の公演に向けてシャロたちが準備を開始する。舞台の上でミリアはリュートの調子を確かめ、リーシャは喉に手を当てているのが見える。シャロは舞台の近くの廊下で、他の踊り子たちと振り付けを確認している。
「みんな! ちょっといい? 今日は午後の演奏の前にカネリア王の挨拶があるから! 粗相のないようにね」
舞台の真ん中でテルマが、音楽団員に指示を出したのが聞こえてきた。
「カネリア王か……」
ロッソは何度かカネリア王と謁見したことがある。王といってもあまり威厳はなく人の好さそうな中年男性だった。謁見の際にロッソは少しだけ言葉をかわしたが、物腰が柔らかくてとても国民のことを考えている良い王様に見えた。
「今みたいに魔力汚染何かで空を汚す人とは思えなかったけどな……」
灰色に染まった空を見て悲し気につぶやくロッソだった。
直後に王都の鐘が鳴った。拍手のなか真っ赤な綺麗なマントをつけた、カネリア王が舞台真正面に見える城のテラスに現れ中央に立つ。誕生日当日だからか、テラスの横には近隣の王や貴族などの有力者がずらりと座っていた。続いて王妃とガーネット王女が、テラスに姿を現して王から少し下がった場所に並んで立つ。
テラスの真ん中で、カネリア王は拍手を止めるように両手を広げて合図を送る。
「静粛に! まずは我が娘ガーネットの誕生祝いにこれだけの人が集まってくれたのを感謝する」
カネリア王は笑顔でテラス横に座る、来賓に頭を下げ感謝を口にした。
来賓への挨拶が終わるとカネリア王は観客に向けて手を振った、観客が拍手で答えると彼は満足そうに笑みを浮かべて話を続ける。
「我が愛しき国民に一つ重大なことを伝えたい。聞いてほしい」
王はこれから何か発表を行うと言う。観客たちは王の言葉に真剣に耳を傾けている。カネリア王国民ではないロッソには、あんまり関係なくやや冷めた様子で観衆と王のやり取りを彼は舞台の袖から見つめていた。
「最愛の娘ガーネットが婿を迎えることになった」
「「「うおおおおおお!!!!」」」
突如発表された王女の結婚の発表に、観衆たちがどよめいていた。
「へぇ!? あのわがままなガーネット王女が結婚するのか…… 夫になる人はかわいそうに……」
ロッソは舞台の袖から顔をだしテラスに立つ王を見ていた。彼はガーネットの夫になる人間が気になったのだ。
「そして結婚後は王位をこの婿に譲ろうと思う!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」
カネリア王はさらにガーネットの婿に王位をゆずると発表した。観客のどよめきはさらに大きくなる。
「ガーネットの婿に王位を譲るって…… 確かにガーネットは女王って感じでもないが…… 一体何者なんだ……」
来賓で来ていた隣国の有力者たちも拍手で、ガーネット王女の婚約を祝福していた。カネリア王は観客たちの反応を見て満足そうに頷く。カネリア王国は婚約発表を誕生会で行うために、劇場飛空艇を呼びより盛大にしたかったようだ。
「これよりの祭りは我が娘ガーネットの婚約祝いの宴とする。ガーネットよ! ここへ」
カネリア王がガーネット王女を手招きし、自分の横に立つように促す。彼の横に来たピンクのドレスを着た、黒髪の長い髪をした美しいガーネット王女が恥ずかしとうに頬を赤くしていらう。
「では、ガーネットの婚約者をみなに紹介しよう!」
会場が静まった。ここにいる誰もがガーネット王女の婚約者が何者か知りたがっていた。
カネリア王が後ろを振り向き、誰かに前に出てくるように促している。
「我が娘ガーネットの婚約者! 人類の敵である魔王シャドウサウザーを討った勇者! キース・クリストよここへ!」
キースの名前が呼ばれた瞬間、ロッソの顔から血の気が引き彼はそのまま固まってしまった。
カネリア王に呼ばれてキースがテラス席に姿を現すのであった。彼は笑顔で観客たちに手を振っていた。
「ほっ本物だ…… お前やっぱり生きてて…… カネリア王国に戻っていたのか…… しかも王女と婚約だと……」
現れたキースにロッソは必死に声をしぼりだし、彼の顔から視線が動かせないでいた。




