第90話 誕生会が始まる
天井と開かれた壁にカネリアの風景がロッソの目に映る。
「ここは…… 懐かしいな。キースと出席した魔王軍討伐軍の出征式以来だな」
劇場飛空艇が着陸したのは、カネリア王国の王城の中庭だった。城内は市民に開放されて人があふれ舞台の正面に白く立派な城が見える。
城のテラスの上には主役のガーネット王女とカネリア王と王妃が並んで座っている。屋外ステージへと姿をかえた劇場飛空艇に、我先にとカネリア王国の国民たちがなだれ込んでいく。ものすごい勢いで前から席が埋まっていいった。席が埋まりざわめく客席。テルマがゆっくりと指揮台の前に歩いていき観客に挨拶をする。
「カネリア王国の皆さま劇場飛空艇にようこそ! 本日は楽しんで行ってください」
テルマが高らかに声を挙げると拍手がわき起こる。テラスにいるカネリア王たちも楽し気に拍手をしていた。
「いよいよシャロたちの劇場飛空艇での初公演が始まるんだ…… 頑張れ! シャロ、リーシャ、ミリア! 三人ならきっとうまくいくからな」
ロッソは舞台の袖から舞台の中央を心配そうに見つめている。妹を心配し緊張した彼は拳をギュッと握りしめて力が入っていた。一緒にいるグアルディアも不安そうに舞台を見つめていた。
セドニア音楽団の公演が始まった。
「やっぱりすごいな」
演奏が始めるとまずはミリアが参加している、オーケストラが一糸乱れぬ力強い演奏が会場を包み込んでいく。次にリーシャがいる合唱隊の綺麗な歌声が、音にのりさっそうと舞台から会場をそしてカネリア王城の中庭から城を駆け抜け町まで響く。
「さぁ…… シャロ! 出番だぞ! 頑張れよ! 大丈夫。お前ならやれる!」
歌に観客が酔いしれている中、シャロがいる踊り子の集団が舞台の中央へと駆けていく。シャロが舞台に行く時に、ロッソに向かって軽く手を振ったほほ笑んでいる。ほほ笑む表情が硬くて少し緊張しているのがロッソに伝わり彼は小さく声援を送るのだった。
舞台の中央に出た踊り子たちが、可憐な踊りで観客たちを魅了していく。
中でも目立つのはやはり踊り子たちの中央にいるシャロだった。情熱的に腰を振り手を妖艶に動かしながら、二十人ほどいる踊り子たちの中でもシャロが観客の視線を集めていった。
テルマが指揮する音楽団の音に、合わせて踊るシャロの表情は、明るく充実しているように見える。
劇場飛空艇が到着してから始まった演奏は二時間も続いた。観客は静かな曲にはうっとした表情で、テンポの激しい曲には時折手拍子をして、演奏を聞いている。表情はみな笑顔で楽しそうだ。
最後の曲がクライマックスを迎えて最終節になる。ジャーンという音が響き音が止まると、同時にシャロたちの動きが止まった。一瞬の静寂がコンサートホールを包む。
「「「「「「「「「「ブラボーーーーーーー!」」」」」」」」」」
静寂を切り裂き地鳴りのような音がコンサートホールに響く。踊り切ったシャロに盛大な拍手と歓声が送られる。
目を輝かせてシャロは拍手を送る観客を見つめ両手で口を押さえ震えていた。
「あれ!? 大丈夫か」
合唱隊が引き上げて、次にオーケストラ、最後に踊り子たちが引き上げる。しかし、シャロは立ち止まったまま舞台の中央で動けないでいた。
「よかった。帰って来た」
ロッソが舞台の袖からでて、シャロを迎えに行こうと思ったが、周りの踊り子たちに促されシャロはゆっくりと舞台から引き上げて来た。
舞台から引き上げてきた、シャロは先に戻っていたリーシャとミリアに抱き着いた。
「ほぇぇ! シャロ!? どうしたです?」
「あらあら? シャロちゃん?」
「リーシャ…… ミリア…… ありがとう…… あたしついに劇場飛空艇で踊れた! 二人のおかげだよ!」
化粧をしている忘れシャロは、涙を流しながら二人に礼を言っていた。ロッソはその姿を見て思わう笑うのだった。
「リーシャもここで歌えてうれしかったです。シャロ! ありがとうです」
「わたくしもシャロちゃんとリーシャちゃんと一緒にここの舞台に立ててうれしいですわ」
ミリアとリーシャの二人も気持ちがたかぶり、目に涙をためシャロを抱きしめ喜び合っていた。
三人が抱き合って喜ぶ姿を灌漑深く見つめる、ロッソは妹の努力が実を結び自分のことのようにうれしかった。シャロとロッソの二人が旅立ってから、一年の月日が流れようとしていた。
シャロたち三人は、しばらくの間舞台の袖で抱き合ってうれし泣きをしていた。セドニア音楽団が去ったコンサートホールでは観客たちの拍手が鳴りやまなず続くのだった。




