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勇者を守った男は成り下がり少女を守る ~護衛と踊り子の兄妹、歌って踊って傷ついた世界を癒せ!~  作者: ネコ軍団
第2章 空中劇場への招待

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第88話 不穏な空

 ガーネット王女の誕生会の初日を迎えた。早朝に劇場飛空艇は練習していた海上から、カネリア王国へと移動を始めた。

 ロッソはシャロたちに連れられ、船尾の部分の一番上にある展望台へとやってきた。ここはテルマが教えてくれた、劇場飛空艇の中で最も景色が綺麗に見える穴場だった。


「うわぁ! 綺麗! ねぇ! リーシャ! もっと近くに行こう!」

「行くです」

「あぁ! ずるい待って僕も」

「おい。危ないから気を付けろよ…… まったく」


 駆けていくシャロ、リーシャ、グアルディアの三人の背中をみながら、ロッソは小さく首を横に振った。


「しょうがねえな。俺たちがこれ持ってて走れないってわかるだろうが……」


 ロッソが横を向いた。隣にはロッソと同じように、茶やコーヒーが入ったコップを載せた、トレイを持ったミリアが立っていた。彼女はトレイを両手で持って、三人の様子をほほ笑み眺めていた。

 展望台は床以外がガラス張りの壁になっていて、飛空艇の外が景色が見える。ちなみにこのガラスの壁は魔法で強化されており、魔物や盗賊などのからの攻撃を受けても弾き返す。


「後ろに素早く流れて行くように見える景色はちょっと不思議な感じだな…… まぁ今は海しか見えねえけどな……」


 景色の見えるこの展望台には、丸いテーブルやソファが置かれ、乗務員や音楽団の団員がくつろげるようになっていた。


「おにいちゃん! ミリア! こっちだよ」


 シャロたちは飛空艇の最後尾に近く見晴らしの良い、テーブルを確保しロッソとミリアに手を振っていた。


「俺たちも行くか」

「はい!」


 ミリアに声をかけると彼女は、ロッソを見て嬉しそうにうなずいて返事をした。彼ら以外にも音楽団や乗務員らが、テーブルに座って茶を飲んだり景色をみたりくつろいでいる。

 最重調整は終わっており、カネリア王国の王都クーリアンについたら、すぐに公演が始まるのでみんなつかの間の休息を満喫していた。ちなみにロッソたちが持っている茶やコーヒーは、展望台に来る前に食堂で淹れてもらった。テーブルに着いたロッソたちは、コーヒーや茶などをテーブルの上に置いて思い思いにくつろぐ。

 シャロはテーブルに居て流れる景色を見て、リーシャとグアルディアは、透明の壁の前に設置された手すりの下から二人で顔をだして景色を覗く。ロッソとミリアは懐かしそうに、カネリアの風景を見つめていた。茶を飲みながら景色を見ていたシャロがロッソに振り返った。


「ねぇ? おにいちゃん。カネリア王国ってどんなところなの?」

「うん!? そうだな。のどかで自然が多くて…… どこかアクアーラ王国に似た良いところだったな」

「へぇ! 楽しみ!」


 嬉しそうにシャロは笑うと顔を景色の方に戻した。


「あっ。もうカネリアに上陸したのかな」


 景色を見たシャロが嬉しそうに笑う。窓の外が海だけの青い景色から、草原や木やなどの地面へと変わった。カネリア王国へと劇場飛空艇が上陸したようだ。


「えっ!? なんだこれ…… 青空が急に暗く…… 雨雲…… いやこれは……」


 カネリア王国に入ってすぐに、青かった空が灰色の雲に覆われた。太陽が遮られた薄暗い空はときおり不気味に緑の色の光を放っており明らかに雨雲ではなかった。

 景色を見ていた全員が動きを止め、急に変わった灰色の異様な空を見て固まっていた。


「みなさーん。そろそろクーリアンに着きますから準備を…… おぉ!」


 展望台に上がってきたセドニアが、大きな声をあげてロッソたちがいる透明なガラスの壁の間近まで走って来た。セドニアは手すりに両手を置き透明なガラスの壁超しに空を見上げていた。


「これは…… 魔力汚染か……」


 じっと空を見つめていたセドニアがボソッとつぶやいた。セドニアは灰色の雲のことを知っているようだ。


「魔力汚染? なんですかそれ? セドニアさん!」


 ロッソが問いかけるとセドニアは、手すりから両手をはなし、彼の方を向きゆっくりと口をひらいた。


「魔力汚染はこの飛空艇みたいな魔力を使う道具を作ると出るゴミが、集まって空気を汚すことですよ。僕たちみたいな魔法道具を作る人間は当たり前のものですが…… こんな空を覆うほどの魔力汚染は初めて見ます……」

「つまりそれって……」

「はい。この国が大量に魔法を使って何かを作ってるってことです…… 飛空艇か…… あるいは大量の武器か……」


 不安そうな表情でセドニアは空をもう一度見上げていた。彼の顔には灰色の雲から放たれる緑の色の光が反射していた。


「あの…… 魔力汚染って俺たちに影響って……」

「ゴミといっても精霊の加護を受けた魔法から出たものですから直接人体に影響はないはずです。ただ…… ご覧のとおり日が照らさなくなりますので植物が育たなくなります…… 植物が取れなければ家畜の餌も取れなくなります。後は川ですね魔力が川に流れれば魚はいなくなるか変異するでしょう」

「それじゃあいずれカネリア王国の食糧がなくなるよな。カネリアの王様はいったい何をするつもりなんだ」

「さぁ…… 僕にもそこまではわかりませんよ。おっと! こんなことしている場合じゃない! 皆さん。そろそろクーリアンに到着します。順をお願いします」


 セドニアが声をかけて展望台にいた、音楽団の人間に準備をするように指示をだすのだった。シャロたちも準備のために移動を始めた。ロッソはふと空を見上げた、彼は緑色光りを放つ不気味な灰色の雲を見つめる。緑の光がロッソを照らす、異様な空の光景を見た彼は何か悪いことが起きるのではと胸がざわめくのだった。


「どうしたの? おにいちゃん! 行くわよ! ほら! 早く!」

「えっ? あぁ。悪い」


 立ち止まって考え込んでいた、ロッソの腕をシャロが引っ張って連れて行く。歩き出してすぐにまた視線が空へと向かうロッソだった。


「なに? 空なんかみて? そんなにあの空が心配?」


 歩きながらシャロが下からロッソの顔を覗き込んで話しかけてきた。空ばかりを見る兄が気になったようだ。


「うん…… せっかくお前が劇場飛空艇で演奏するのにこんな空なのは…… ちょっとな嫌だなと……」

「なーに! あたしは平気よ! まったくいつもでかい体してるくせに気にしすぎるだから! おにいちゃんは」


 シャロは歯を見せてニコッと笑うと俺の背中を軽くたたく。


「失礼な! 人を体が大きくて無神経なやつみたいに…… 自覚はあるけど言われるのはいやなんだぞ!」

「はははっ!」

「それに細かいことを気にしてるのは、お前やリーシャ達を守るために必要な…… なっなんだよ……」


 話をしていたロッソの左腕に、シャロがしがみつき腕に彼女の頭を乗せる。


「大丈夫よ。あたしは信じてるもん。どんな時だっておにいちゃんが絶対にあたしとミリアとリーシャを守ってくれるって……」

「シャロ……」


 絶対的な信頼を寄せているというシャロの言葉にロッソの不安が小さくなっていく。シャロの言う通りにどんなことがあっても、自分が彼女たちを絶対に守ると改めて誓うロッソだった。


「あっ! シャロ! ずるいです! リーシャも旦那しゃんにするです」

「ほんとですわ。ロッソの横はわたくしのです!」

「えっ!? ちょっと危ないよ!」


 ロッソとシャロを見たリーシャが右腕にしがみつく。行き場所のないミリアが二人に何やら文句を言っていた。


「最近はミリアばっかりだからたまにはいいのよ! ねぇ? リーシャ!」

「はいです! ミリアはベーです!」

「ベー!」

「まっ! リーシャちゃん! シャロちゃんも! はしたないでしょ!」

「わー怒った!」

「こら! シャロとリーシャ! ミリアをからかうな」


 シャロとリーシャがミリアに向かってベーっと舌を出した。怒ったミリアが二人をつかまえようと手を伸ばすのだった。この後すぐに騒いでるところテルマに見られ、ロッソとシャロたち三人は彼女からものすごく怒られるのだった。

 展望台から下りたシャロたちは、コンサートホールに向かい演奏の準備を始める。間もなく劇場飛空艇は王都クーリアンに到着するのであった。

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