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勇者を守った男は成り下がり少女を守る ~護衛と踊り子の兄妹、歌って踊って傷ついた世界を癒せ!~  作者: ネコ軍団
第2章 空中劇場への招待

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第84話 護衛は修羅場をくぐる

 第二練習場でシャロは困惑した様子でアーロンと対峙していた。


「気まずそうだな…… 覗きじゃない。俺は護衛(ボディガード)だしなシャロを監視する義務があるんだ」


 妹に恋する若者を暖かく見守る言い訳を、つぶやきながら扉のかげから二人の様子を探るロッソだった。なお、ロッソは面白がるだけではなく、マーロンがシャロに変なことした時は飛び出し彼をとっちめるつもりだった。

 ジッとシャロを見つめるマーロン、見つめられて緊張したシャロは、落ち着くためか渡された水を一口飲む。


「うん!? あぁ、グアルディアと同じだな」


 一口水を飲んでシャロが微妙な顔をした。マーロンは普通の水をシャロに渡したのだろう。シャロにはジャムと砂糖を入れた専用の水を用意しなければならないのだ。マーロンはシャロの表情が変わったのをみて、慌てて声をかけた。


「どうしました? 水がなにか?」

「いえ…… ありがとう…… とってもおいしいですよ」

「あっあと…… こっこれを……」

「えっ!?」


 マーロンが一輪の花と手紙を懐から取り出し差し出した。


「おぉ! これはラブレターだな! さぁ! シャロ! どうするんだ……」


 笑顔で手を伸ばすマーロンに、シャロはどうしたらいいかわからない様子で、周囲をキョロキョロと見渡していた。シャロたちの様子に少し離れたところにいる、他の踊り子たちも興味津々と言った様子で笑顔で見つめていた。


「あっ……」

「おにいちゃん!!!  なんだぁ!!! こっちに来たの!」


 顔を動かしていたシャロとロッソは一瞬だけ目が合ってしまった。彼を見つけたシャロは助かったという表情で駆け寄って来た。


「ごめん…… 邪魔して悪かったよ…… 睨むなよ」


 気まずそうに右手で髪をいじるロッソだった。手をおろして拳で手紙と花を握りつぶして、マーロンがすごい恨みのこもった顔でロッソを睨みつけていた。


「おっおう! シャロの様子を見に来たんだ」


 ロッソは覗いていたことがバレないように、さも今来たみたいな雰囲気をだし、近づくシャロに手をあげて挨拶した。


「おっおい!? 何を!?」


 シャロは急にロッソと腕を組んで肩に頭を置いた。


「普段こんなことしないだろ!? なんのつもりだ!?」

「なによ。別にいいでしょ」

「あの…… なんか気まずいんだけど……」

「……」


 マーロンはシャロと腕を組むロッソを、見てさらに目つきをきつくしていた。


「(わかったよ。邪魔したのは悪かったよ。はぁ…… こんなことになるんだったらこっちに来るんじゃなかった……)」


 離れた場所にいる他の踊り子たちは、ロッソとシャロをみてすごいキラキラと目を輝かせていた。いつの世でも修羅場というものは人を楽しませるものだ。

 マーロンがロッソのすぐ前まで近づいて顔を覗き込んできた。


「ロッソ…… あんたシャロさんの何なんだ?」

「えっ!? 何って…… ただの護衛(ボディガード)だけど……」

「そうよ? おにいちゃんは護衛(ボディガード)よ?」

「うっ!? そういうことじゃない! もういいです。シャロさんありがとうございました。また!」

「あっうん…… お水…… ありがとう」


 マーロンはシャロに笑顔を向け挨拶をし去って行った。


「しっかし…… すげえな。急激に表情変えたけど頬とか痛くなんないのかな。まぁいいや。後で謝っとこう」


 シャロにはすごい笑顔であいさつした後、俺にはものすごい怖い顔で睨みつけてマーロンは去っていた。ロッソは女性を口説いてる途中に、その女性の兄が来たら気まずいだろうとマーロンに後で謝罪しようと考えていた。


「ごめんね。おにいちゃん。なんか…… 巻き込んじゃって……」

「うん!?」


 視線を上に向けロッソに視線を向けシャロは謝ってくる。シャロの頭を撫でてロッソは彼女に優しくほほ笑みかけた。


「気にするな。踊り子のお前の護衛(ボディガード)をするって決めた時からこういうことくらいはあるって思ってたし……」

「そっか…… ありがとうね」

 

 ロッソの言葉にシャロが少し安心した顔をする。


「でさ? シャロとしてはどうなの? マーロンは? かっこいいし飛竜騎士なんてかっこいいから恋人としていいんじゃない?」

「はっ!? はぁ!? あたしは今は恋人なんかいらないの! 踊り子として劇場飛空艇での演技に集中するの! 変なこといわないでよ」


 少し恥ずかしそうに頬を赤くし、シャロは腕を組んで口をとがらせてそっぽむいた。


「そうか…… 余計なことだったな…… うん!?」


 急にシャロが振り返り、ロッソに顔を近づけて来たのだ。


「だいたいおにいちゃんこそ! ミリアと仲いいじゃん! どうなの?」

「なっなんだよ!? 急に!? 俺は別にミリアとは……」

「そうなの? ミリアは積極的におにいちゃんに好き好きーってしてるじゃん。ちゃんと答えてあげなよ」

「えっ!?  いや…… そんなことは……」

「はは! おにいちゃん! 赤くなった」

「笑うな!」


 ロッソはキースと旅をしていた頃から、ミリアに好意を抱いており、その想いは今も変わっていなかった。ロッソはミリアのことを言われた後は、ずっと頬が熱くなっていくのを感じていた。シャロは復讐するように赤くなったロッソに追い打ちをかける。


「どうなの? やっぱりミリアがいいの? あっ!? まさかリーシャ? やだぁおにいちゃん! リーシャはまだ子供だよ?」

「うっうるさいな! 誰がいいかなんかないよ。みんな一緒だよ。もうこの話は終わりだ」


 ロッソは話を強引に話を終わりにし、赤い顔を冷ますように首を横に振った。


「はぁ!? 何よ…… みんな一緒って……」


 シャロはうつむいてブツブツと言っている。ロッソはシャロの様子を見て首をかしげていた。


「どうした?」

「はぁ…… もういいわ。何でもなーい。じゃあ! もう練習開始だから! 後…… お水用意しといて!」

「あぁ。わかった」


 笑顔でシャロはロッソに水を用意しろと、指示すると練習へと戻っていった。

 ロッソはシャロ用の水を用意し、シャロの踊りの練習を見ていた。劇場飛空艇にこれて気合が入ってるからか、シャロの踊りはいつになくキレがあるように見えた。休憩が終わって一時間くらいで、シャロたちの練習が終わった。

 手を伸ばしてロッソがシャロに用意した、彼女用のジャムと砂糖を混ぜた水を渡すと嬉しそうに口をつけた。美味そうに笑顔でシャロは、一気に水を飲み干して満足そうに叫ぶ。


「かっーーーーーーー!!!!!!!! やっぱりこれよね!!!!!」

「なんかそれ…… おっさんくさいな」

「うるさいわね! ほら早くリーシャとミリアのとこに行こう」


 シャロに手を引かれてロッソはコンサートホールへ戻る。リーシャとミリアの練習もそろそろ終わる頃だった。


「どうした!?」


 階段を上ったところで、シャロがロッソの腕を引っ張った。


「これは…… 叫び声が……」


 遠くの方でキャーという叫び声が聞こえた。叫び声はコンサートホールからしているようだ。


「おにいちゃん!? 聞こえた?」

「うん。シャロはここにいろ」

「いやよ。あたしも行く」

「はぁ…… わかった。俺から離れるなよ」


 静かにシャロは頷く。ロッソはシャロより前にでて背負った守護者大剣ガーディアンクレイモアに手をかけて走り出す。

 廊下を駆け抜けロッソは、コンサートホールの大きな扉に手をかけるのであった。

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