第82話 頑張った妹を褒めなさい
セドニアとの打ち合わせが終わり、ロッソとシャロの二人は部屋と案内された。飛空艇の船尾が、演奏者とクルーの船室になっておりロッソたちは男女別に二部屋をあたえられた。
「じゃあ、おにいちゃん。付き合ってくれてありがとう」
「平気だよ。シャロもゆっくり休めよ」
シャロは少し疲れた顔して部屋の中へと入っていた。ロッソは隣にあるグラルディアと自分用の部屋へと向かう。部屋はベッドが二つとテーブルと椅子が、二脚が置かれた狭いが綺麗な部屋だった。
部屋に入ってがグラルディアの姿はない。おそらくミリアとリーシャにせがまれ、飛空艇内の散策でもしてるんだろう。ロッソは移動の疲れもありベッドに座り足を伸ばし休む。
「誰だ?」
ロッソがベッドに足を投げ出し、休んでいると部屋の扉がノックされた。立ち上がった彼は、扉のノブに手をかけ開ける。
「おにいちゃん……」
「どうした? シャロ?」
扉を開けたロッソにシャロが、部屋の前に立っているのが見えた。
「うわぁ!? ちょっと!? シャロ?」
顔をあげてニコっと笑って、シャロはロッソに飛びついてきた。
「抱っこ! 抱っこ! 抱っこーーー!」
「もう…… はいはいわかったよ」
腕を伸ばしてロッソは、シャロの体に右手をまわし、左てを彼女の両膝にいれいわゆるお姫様抱っこをする。抱っこされたシャロは、満足そうにロッソの首に手をまわしてほほ笑む。
「へへ…… 昔はよくおにいちゃんがこうやって抱っこしてくれたよね」
「えっ!? 正確には抱っこじゃなくて抱きかかえて医者に連れて行ったりしただけだろ…… お前は女の子のくせによくケンカとかして暴れてケガするから……」
「なっなによ! それじゃあたしがおてんばな女の子だったみたいじゃない」
「みたいじゃないだろ! あとだったでもない! 今でも十分シャロはおてんばだ」
「はあああああ!?!?!?!?」
ロッソの言葉にシャロはプクっと頬を膨らませた後、彼女は小さく息を吐きゆっくりと彼の胸に額をつけた。
「おにいちゃん…… あたしね…… 頑張ったの! いっぱいいっぱい頑張ったの!」
シャロが子供のようにロッソの胸に向かって叫んでいる。ロッソはあきれながらもシャロにほほ笑み小さくうなずく。
「うん、わかってる。俺は旅を始めてからずっとそばで見てたしな。シャロがすごい頑張ったのを知ってるぞ」
妹の頑張りを認めるロッソだった。リーダーとしてシャロがミリアとリーシャを引っ張り、ひたむきに努力をして頑張って来たからこそ劇場飛空艇に乗れたのを、近くで見て来た彼はよく知っていた。
ロッソはシャロを抱っこしたままベッドに腰かける。
「えへへ…… うれしい…… あのね。おにいちゃん……」
「うん? なんだ?」
顔をはなしたシャロは、ロッソを上目遣いで見て、モジモジしながら話しづらそうにしてる。シャロはロッソにしてほしいことがあるようだ。妹の様子に気づきロッソは声をかける。
「なんだ? 何か買ってほしいものでもあるのか?」
「違うの! もっとほめて! あたしの頭を撫でて! そしてまた褒めろーー!」
「えぇ!? 頭を!?」
「そう…… 撫でながら頑張った…… 偉いって…… 言ってほしいの……」
「ははっ。しょうがないな。ほらこっちに来いよ」
ロッソは左手で、シャロの頭の後ろに手を伸ばし、軽くこちらに引き寄せた。シャロは進んで自らロッソへと引き寄せられていく。自分の胸の前に来たシャロの頭をロッソは、右手でゆっくりと彼女の頭を撫で始める。
「偉いぞ。シャロよく頑張った」
「へへ……」
頭を撫でられたシャロは、目をつむり気持ちよさそうにしている。ロッソは撫でられ嬉しそうにしているシャロを見てほほ笑む。
「ふっ。ガキの頃と変わらねえな。甘えん坊だ」
「うるさいわね! いいのよ! ミリアもリーシャもいない今がおにいちゃんを独り占めするチャンスなんだから!」
「はいはい」
「ふぅ…… おにいちゃんに撫でられると安心する。お父さんみたい」
「親父か…… まぁ似たようなもんだな」
シャロはロッソに胸に額をのせ、手を背中にまわしてギュッと力をこめる。ロッソもシャロの背中に手を回して、彼女の背中をゆっくりと撫でるのだった。
「シャ…… はど…… ?」
「こっ…… ちで…… !」
扉の向こうから声が聞こえる。ロッソが視線を扉へと向けた。彼にははっきりとは聞き取れないが、おそらくはリーシャとミリアが戻ってきたようだ。
扉がいきおいよく開いた。部屋の前にはリーシャが両手を広げて立っていて、彼女の後ろにミリアとグラルディアが立って居るのが見える。ロッソはベッドに座り、抱っこしているシャロの肩越しにリーシャと目が合った。ロッソと目が合うとリーシャはニッコリと笑った。
「ミリア! シャロが甘えん坊さんです!」
「本当ですわね…… ニコニコ」
「えっ!? これはその……」
リーシャはロッソとシャロを見て笑ってミリアに叫ぶ。ミリアは二人を見て優しくほほ笑んでいる。笑われたロッソは慌ててシャロを撫でるのを辞める。
撫でるのを辞めたロッソに、シャロは少し不満そうな顔をしたが、ミリアたちの視線に恥ずかしくなったのか、ロッソから離れて立ち上がり二人の方にむかって歩いて行く。立ち上がったシャロの頬は真っ赤になっていた。
「ミリア?! リーシャ!? なんでここに!?」
「あらあら、そろそろ打ち合わせが終わったかと思って、シャロちゃんを迎えに行ったらセドニアさんに部屋に戻った言われて…… いないから探してたんですよ…… 仲いい兄妹ですわねぇ。ニコニコ」
「これは…… おにいちゃんがあたしに甘えてたの! あたしじゃないわよ……」
シャロの言葉にミリアは、優しくにっこりとほほ笑む。子供が必死になっているのを見る親のような、ミリアの瞳にシャロは本当だと何度も言っていた。
「本当よね!? お兄ちゃん!」
ミリアに信じてもらえずシャロは必死になってロッソに同意を求める。
「えっ!? あぁ。もうそれでいいよ……」
「ほらほら!」
「あらあら」
面倒になったロットは適当に返事をし、シャロは勝ち誇っていた。ミリアは勝ち誇るシャロにも優しくほほ笑むのだった。
「あれ!?」
ニコニコ笑ってリーシャが、二人の横をすり抜けてロッソに近づいてきた。
「じゃあ! リーシャは旦那しゃんに甘えるです」
「あっ! ずるいですわ! わたくしも! ロッソー!」
「わっ!? おっおい! 危ないだろ!」
リーシャとミリアの二人が一斉にロッソに抱き着いた。ミリアは左腕、リーシャは右腕に抱き着き二人でロッソを挟むようにする。シャロは二人の行動に唖然としていたがすぐに我に返った。
「ちょっとダメよ! 今日はあたしが…… あたしなのーー!」
抱き着いていたリーシャとミリアを、シャロは両手を伸ばしどかそうと必死になっていた。シャロの様子にミリアとリーシャは顔を見合わせて笑っている。
「あら!? シャロちゃんは甘えないんじゃ?」
「そうです! 自分で甘えないって言ってたです」
「うるさーい! いいの!」
からかわれてシャロは必死に、うるさいと叫んで二人は彼女の様子を見てまた笑うのだった。シャロはロッソの正面から抱き着く。
「あの…… さすがに三人で来られると重いんですが……」
身動きがとれず苦しそうにするロッソだったが、三人はしがみつくようにして彼にずっと抱き着いていた。
三人がロッソに抱き着く姿をみてグラルディアは、頭に手を置いてあきれた様子で首を振っていた。




