第77話 女装ボディガードが犯人を追い詰める
審査最終日の酒場の営業時間が近づいていきた。
衣装に着替える為にシャロたちはもう通い慣れた店の近くの共有控え室へ向かう。
普段はミームの下ごしらえの手伝いをするロッソはすぐに戻るのだが、今日は最終日で忙しくなるだろうからと、近くに住むミームの妹が店を手伝ってくれてる。彼はみんなと共有控え室に向かい前で待つことになった。
共有控え室へと向かっている五人、グアルディアとシャロとリーシャが先を歩き、ロッソとミリアが続く。
「今日もよろしくね」
「あぁ……」
シャロが横を向いて笑ってグアルディアに声をかける。顔を背けグアルディアは恥ずかしそうにしていた。ロッソはふとその様子を見て疑問に思う。
「しかし…… グアルディアも小さいとはいえ男なのにシャロは着替えとか平気なのか」
「大丈夫ですよ。室内でグアルディアちゃんは気を使ってくれて、着替えをみないように端にいますから…… でも」
「うん!?」
ミリアは少し言いにくそうにロッソに話を続ける。
「シャロちゃんは恥ずかしがるグアルディアちゃんに面白がって、わざと着替えを見せようとするんですよ」
「なっ!? シャロ! お前……」
「ちょっ!? もうやめて! それはミリアからたくさんお説教もらったんだから許して!」
振り向き両手を前に出して、必死に許しを請うシャロだった。ロッソは小さく首を横に振った。
「まったく…… 何してるんだろうな。俺の妹は……」
怒らないロッソに安堵するシャロだった。
共有控え室に着いた。グアルディアとシャロたちが共有控え室に入るのを見届けたロッソは入り口が見える場所で待機をする。
「うん!?」
大きな音がして急に控室の扉が開き、誰かが飛び出してきた
「待って! こいつめ暴れるな! ロッソ! そいつを捕まえてくれ!」
何者かが飛び出して後、少し遅れて共有控え室からでてきた、グアルディアがロッソに向かって叫ぶ。
「任せろ」
返事をしたロッソはすぐに控え室から飛び出して来た者の前に立ちふさがる。両手を広げてロッソは目の前に居るのが、何者か視線を向け確認する。
「お前は…… やはりそうか!」
ロッソの目の前に立っているのは、ゴールドシスターズのマネージャーのポンだった。驚いた顔で俺を見つめる、彼の手には長さ三十センチのほどの短剣が握られていた。
「なっなぜ貴様が…… 普段は女しかここに来ないのに……」
「お前こそ! 女性用の控え室から飛び出してきてどういうつもりだ!」
「クソオオオオ!!!」
悔しそうに叫び声をあげ、短剣をロッソに向けてポンが構えた。
「なんだ!? やる気か?」
わずかに膝を曲げ腰を落としロッソは背負った守護者大剣に手をかけた。
「おにいちゃん! あたしたちが入るとこいつら急に襲ってきたのよ」
シャロたちが共有控え室から出て来た。シャロは外に居たロッソに向かって叫ぶ。グアルディアは武器を構え、その隣にリーシャが居る。二人の後ろにミリアとシャロが見える。
「あいつは……」
シャロとミリアに両手をしっかりと掴まれ、引きずられらながら女性が共有控え室から出てきた。女性はポンの妻ソンだ。彼女の顔は青ざめて黙ってうつむっている。
「なるほど…… 俺がいないと思って襲ったらグアルディアにやられてお前は妻を見捨てて逃亡って訳か…… 情けねえな」
「クソ! どけ!」
「遅い!」
ポンは短剣で斬りかかって来る。ロッソは守護者大剣を素早く抜きそのまま簡単にポンが振り下ろした短剣を払う。甲高い金属音がし、ロッソの大剣でポンの短剣は叩かれた。ポンの右腕は大きく横に振られ、短剣は彼の手から離れ上空に回転しながら舞い上がっていった。ポンは短剣を払われた衝撃で吹き飛ばされて尻もちをつく。
「ひっひい!」
座ったままポンは怯えた声をあげゆっくりと後ずさりをする、ロッソは彼にむかって歩いて距離をつめていく。大剣をポンの首に突きつけたロッソは静かに口を開く。
「この間シャロ達の衣装が泥をかけて汚されたのも! お前がやったんだな?」
「えっ? ちがっ…… あれは妻のソンが…… 勝手にやったんだ。今日も妻が無理矢理に僕を……」
「ウソ…… あなたが私にやれって……」
シャロとミリアに両手を押さえられた、ソンが泣きながら首を横に振って叫ぶ。
「なにが勝手にだ! やっぱりお前が命令してたんじゃないか!しかも武器を持ってシャロ達を傷つけようともした……」
ロッソの脳裏には衣装を汚され悲しむシャロたちの顔を思い浮かぶ。大事な人たちを傷つけられた彼がポンを許す理由はない。
ロッソは右手に力を込め、大剣をひいてポンの胸に狙いを定める。ポンは泣きそうな顔で手を前にだして必死に防ごうとするのだった。
「ひい!」
「おにいちゃん!!!!!! 殺しちゃダメ!!!!!!!!!!」
「えっ!?」
シャロがロッソに向かって叫んだ。ポンの胸に剣が突き刺さる直前で彼の手が止まった。
「ケビンさんにこいつを引き渡すのよ。だから殺しちゃダメ」
「でっでも…… こいつはお前たちにいやがらせをして今日は襲いかかったんだぞ」
「いいから! 後はあたしに任せて!」
「もう…… わかったよ」
シャロに言われて俺はゆっくりと剣を下ろす。
「うわ!? きたねえな……」
恐怖でポンは小便を漏らして股間と尻と濡れ、地面に水たまりが出来ていた。ロッソは剣先をポンに向けたままやつを睨み付けた。ポンは睨まれた恐怖で顔が引きつり微動だにしなかった。
「グアルディア! ケビンさんを呼んできてくれ!」
「任せて!」
返事をしてグアルディアがケビンさんを呼びに行った。ロッソはケビンさんが、来るまでポンに剣を向けたままにらみつけるのだった。
いつのまにか、ロッソたちの周りには騒ぎを聞きつけた町の人が取り囲んでいた。すぐにグアルディアがケビンさんを呼んでつれて来た。
「おら! さっさと立て!」
ロッソは大剣をしまって、ポンの右腕をつかんで強引に立ち上がらせた。
「さっさと歩くんだよ! クソ野郎が!!!」
「ギャッ!」
立ち上がったポンの尻をロッソが蹴り上げ、ケビンの前へと歩かせる。シャロとミリアも捕まえていたソンをケビンさんの前に連れて行くのだった。
呼ばれてやってきたケビンさんは、現場をみて少し困惑して様子であったシャロたちが事情を説明する。
「なるほど…… ソンさん。シャロさんが言ってることに間違いはありませんか?」
「あの…… わたしは…… その……」
ミリアとシャロに拘束されている、ソンは不安そうにポンを何度も見ていた。どうやらポンを怖がっているようだ。
「チッ! ウソだ! そいつらの言ってることはでたらめだ! 僕たちはブルーセイレーンにはめられたんだ!」
「なっ!? こいつ! 往生際が悪いな」
ロッソに両手を掴まれ拘束されたまま、ポンがケビンに向かって叫んでいる。黙らせようと、ロッソが口に手をかけようとするとシャロが手で制して叫ぶ。
「ポン…… あんた! いい加減にしなさいよ。ソンさんいいの!? いつまでもこいつの言いなりで!」
「でっでも…… わたしは…… 何も……」
「へへ…… そうだろう? ソンは僕がいないと……」
ソンはポンの顔をみておびえている。シャロはそんなソンをきつい顔で睨み叫んだ。
「ねぇ!? ソンさん! あなたは本当にいいのそれで?! ポン! あんたはソンさんを殴って暴力をふるって言うこと聞かせてたでしょう」
「なっ! 僕はそんなこと……」
シャロの言葉にポンのまずいという顔して、声がうわずって動揺しているように見える。
「ケビンさん! ちょっと来てください! おにいちゃんはポンを捕まえてといて!」
「まて! 待ってくれ!」
「あいよ。こら! 大人しくしろ!」
「グゥ!!!!」
シャロはソンとケビンを連れてポンから離れた。ポンは彼らに付いて行こうと、ロッソの手を振りほどこう必死に抵抗する。ロッソは左手でポンの襟をつかみ、右手で彼の右腕をひねり上げた。叫び声をあげポンは大人しくなるのだった。




