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勇者を守った男は成り下がり少女を守る ~護衛と踊り子の兄妹、歌って踊って傷ついた世界を癒せ!~  作者: ネコ軍団
第2章 空中劇場への招待

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第75話 自衛策を考えよう

 演奏を終えたシャロたちは宿へと向かっていた。急場しのぎに行った普段着での演奏は特に問題がなかったが、汚された衣装のことが気がかりなのか、三人の表情は暗くいつもよりも疲れた顔をしていた。

 

「はぁ…… 早く衣装の洗濯をしないと…… ムカつくわ!」

「リーシャのおリボン…… 怒ったです」

「わたくしも怒りましたわ。ホーカハイで買ったドレス…… けっこう高かったのに…… 許せませんわ」


 悲しい顔をして三人で話しながら宿へ歩いて行く。ときどき三人からため息がもれて足取りも重くなっていた。


「三人ともショックで疲れてるよな。せっかく順調だったなのに…… しかもこれから衣装の洗濯なんて…… よし!」

 

 寂しそうに歩く三人の背中を見ていたロッソがつぶやく。深夜近くまで営業仕事をし、これから衣装の洗濯させれば三人は疲れてしまう。彼はある決意をして口を開く。


「三人は宿に着いたら先に寝てていいよ。俺とグアルディアで洗濯しとくからさ」

「でっでも…… おにいちゃんとグアルディアちゃんだって疲れてるでしょ?」

「平気だよ。ほら早く寝ないと明日も演奏するだろ! 俺たちに任せて! なっ!? グアルディア!」

「はぁ…… 僕は面倒くさいけど…… しょうがないか。シャロたちには休んで良い演奏してもらわないといけないしね」


 顔をしかめながらグアルディアは、嫌々やってやるという態度をとるのだった。魔族の将軍だったというプライドがまだあるようで、グアルディアは照れ隠しでたまにこのような態度をする。それをわかっているロッソは彼の頭をわしづかみにし押さえつける。


「何が面倒だ。素直にやるって言え!」

「うっうるさい! 離せ!」


 シャロは二人を見てほほ笑むのだった。


「グアルディア…… おにいちゃん…… ありがとう! お願いね」


 ロッソとグアルディアはシャロに向かって笑顔でうなずくのだった。

 宿に戻りシャロたちを部屋に送り届けた、ロッソとグアルディアは宿の洗濯場に彼女ら衣装を運び二人で洗うのだった。


「ロッソ! もっと丁寧に! いい? 女性の服はデリケートなんだから! まず丁寧に泥をとってから優しく揉むように……」

「グアルディア…… なんでそんな詳しいんだ?」

「えっ!? そりゃメディナのパンツは高くて…… はっ!」


 得意げに語っていたグアルディアが止まり、しまったというような表情をして固まっている。


「メディナのパンツがどうしたんだよ?」

「なっなんでもない…… 洗濯は身だしなみに厳しい魔族のたしなみなんだよ」

「ふーん…… お前…… 普段は嫁さんの下着まで洗わされてるんだな。情けない将軍様だな」

「うるさい!!!!! ほら早くしないと夜が明けちゃうよ!!!!!」


 話しを終わらせると、グアルディアは慌てた様子で洗濯を再開するのであった。メディナは村長で多忙のため、将軍ではなく一般魔族になったグアルディアが家事全般をこなしていた。掃除、洗濯、家の修理など何でもこなせるグアルディアだが料理の腕だけはメディナにまだかなわない。

 グアルディアが手慣れていたこともあり、なんとか衣装の汚れは落ちた。


「後は…… 乾いてくれれば」


 衣装のかかった物干しざおの前でロッソがつぶやく。彼の頬をわずかに日が照らす、洗濯が終わった時には夜が明けようとしていた。ロッソとグアルディアはわずかな仮眠をとるのだった。

 朝食を終えたシャロたちが、テーブル囲んで真剣な表情で話し合いを始めた。


「まったく昨日はひどい目にあったはね。誰がこんなことを……」

「ダークイーグルスでしょうか…… あの人たち柄が悪そうですし……」

「どうしかしら? あの控え室は男女分かれてて男性は別の入り口から入るのよ。鍵も違うし男性がもし入ってきたら目立つでしょう」

「シャロの言う通りだな。ダークイーグルスのメンバーは全員男だからなそいつらがやるのは難しいと思う」


 共有控え室は男女に分かれており、入り口の鍵は共有だが内部の別れた控え室の鍵が違う。女性用の控え室に男性が入れば目立つため、全員が男性のダークイーグルスが犯行に及んだ可能性は低いだろう。


「ならやっぱりゴールドシスターズです!」

「うーん…… 彼女たちの酒場”憩いの泉”は大きいから自前の控え室があるから使うとはずはないのよね」

「でも、ゴールドシスターズさん達も商業ギルドに所属してるんですよね? だったら女性もいるし共有控え室の鍵を借りて出入りをしても怪しまれないですよね」


 ミリアの言う通り、現状一番怪しいのはゴールドシスターズだ。ブルーセイレーンが彼女たちの売り上げを抜かしてすぐにいやがらせを受けただから。ただし、ゴールドシスターズが衣装に泥を塗ったという証拠はなく訴えてところで相手もされないだろう。


「シャロ…… どうする?」

「そうね。証拠もないのに騒いでもしょうがないわ。下手にこっちから言ってケビンさんに悪い印象を持たれてもいやだし」

「そうですわね。こちらでしっかりと自衛するしかないですわね」


 話し合いの結果シャロたちは、共有控え室に衣装を置くのをやめた。荷物が多くなってしまうが、宿から毎日衣装を持って移動することになった。とりあえずこれで衣装に何かをされることはないだろう。だが、相手が衣装に手をだせなくなったらシャロたちを襲ってくる可能性がある。そして襲う場所としてねらい目はロッソとグアルディアが入れない場所だ。


「問題は俺たちが入れない共有控え室に居る時に犯人が襲ってきた場合だな」

「そうですわね……」


 シャロたが使用するのは、女性専用の共有控え室だ。非常事態であれば共有控え室に飛び込むことは問題ないが、何も起こっていないのに一緒に入るという訳にいかない。相手の目的はシャロたちのオーディションを妨害することだろう、開店時間から逆算しシャロたちの着替えの時間を見計らって待ち伏せも可能だ。


「でしたら万が一の時はわたくしが魔法で撃退しましょう!」

「うーん…… でもそれでミリアに何かあったら困るわ…… そうだ!」

「なっなんだよ……」


 シャロがロッソの顔をみて目を輝かせている。


「おにいちゃんが女装して共有控え室に一緒に入ればいいのよ!」

「はぁ!? 軍で擬態は教わったけどな。さすがに女装の経験ないから無理だ。万が一通報されたら俺が牢屋行きになっちまうだろが」

「そうよね…… うーんそうなると……」

「まったくシャロは変なこと言うなよ」

「あっ!」


 腕を組んで考えていたシャロが、ハッと何かを気づいてグアルディアに笑顔で近づく。グアルディアの顔を覗き込んで手招きをしてミリアとリーシャを呼んだ

 ミリアとリーシャもグアルディアの近くに行き、グアルディアの顔を見てほほ笑むのだった。

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