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勇者を守った男は成り下がり少女を守る ~護衛と踊り子の兄妹、歌って踊って傷ついた世界を癒せ!~  作者: ネコ軍団
第2章 空中劇場への招待

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第74話 姑息なライバル

 窓と扉を開けて営業した翌日の昼ごろ、宿にまた手紙が届いた。ケビンからの昨日の三つの酒場の売り上げを記録した手紙だ。


「どうやら昨日の作戦はうまくいったみたいだな」


 手紙を読むシャロを見てロッソがつぶやく。受け取った手紙をみながらシャロは、してやったりとした顔で拳を握りしめている。

 

「どう!? 二日目の売り上げで五百リロあった差を二百リロまで追いつめたわ!」

「さすがです!」

「すごいですわ」


 テーブルに手紙を置き、ミリアとリーシャに得意げに話だすシャロだった。シャロたちの演奏の実力はあり、ミームの料理は美味だ。酒にうまい料理にシャロたちの演奏が加わり、それらをうまく宣伝できたので売り上げが伸びるのは当然の結果ではある。


「すぐに逆転してやるわ! 見てなさいゴールドシスターズ! 頑張ろうね! ミリア! シャロ!」

「逆転してやるです!」

「はい! 頑張りますわ」


 シャロとミリアとシーシャの三人は、拳をあげて威勢よく声をあげていた。


「気合が入ってるな。頑張れよ」


 三人の背中に優しく声をかけるロッソだった。

 その後も、窓をあけてシャロ達の演奏を見せる宣伝効果は抜群だった。さらにミームの料理の匂いで客を引き付ける効果も合わさり、三日目の売り上げ集計でロッソたちはあっさりとゴールドシスターズを逆転した。

 審査四日目の売り上げ集計では、ゴールドシスターズはダークイーグルスにも抜かれて三位へと転落していた。

 酒場の客の話では、ロッソたちが逆転した日にポンが三姉妹を叱りつけたようで、涙目演奏する彼女たちの姿をみたという。

 そんなの見ながら飲むのとまずくなるって客のぼやく声がロッソやシャロたちにも届いていた。

 五日目の営業終了後。ロッソとグアルディアと一緒に、シャロたちが着替えに共有控え室へ向かう道で前に急に何者かが現れ道をふさいいだ。とっさにロッソはシャロたちを背中にかくし、背負った守護者大剣ガーディアンクレイモアに手をかけ前に現れた者へと視線を向ける。


「おっお前は……」


 ロッソたちのすぐ目の前に、悔しそうに彼らを睨むポンが立っている。


「何だ? なにか用か?」

「お前たち…… よくも…… よくも…… クソーーー! 一体何をした!? なんでお前たちが私たちに……」


 眉間にシワを寄せたポンはロッソたちに睨みつけ怒鳴りつけてくる。ロッソはいつでも反撃できるように構えた。彼の横からシャロがポンに言い返す。


「何もしてないわよ。あたしたちはミームさんとお店に楽しい音楽を提供して一緒に頑張ってるだけよ」

「なっ!? それだけで私がお前らなんかに……」

「もういいでしょ。あたしたちのことよりも自分たちのパーティと一緒に頑張りなさいよ」


 シャロは冷たくポンに言い放つと宿に向けて急に歩き出した。シャロはポンの横を堂々と通り抜けていく。ロッソはシャロとポンの前に立って彼が何かをしないか警戒している。シャロの次にミリアとリーシャが続き最後にグアルディアが通っていく。

 全員が通るまでロッソはポンの前に立って居た。ロッソは彼が振り向いて何かをすれば、即座のその首を落とすつもりだった。


「クッ…… クソ…… なんで…… 私がこいつらなんかに……」


 体を小刻みに震わせて下をむきポンはブツブツと独り言を言っていた。全員が通った後にロッソは、ポンをにうらみつけながらゆっくりとその場から離れていく。ポンはロッソに反応せず、彼が通りを曲がるまでずっとうつむいたままだった。

 六日目の開店前、シャロたちはグアルディアを護衛に連れ、着替えに共有の控室へと向かった。ロッソはミームの仕込みと準備を手伝うため店に居た。


「大変だ! ロッソ! ちょっと来て!」

「どうした?」

「いいから来てくれ! みんなが大変なんだ!」


 慌ててグアルディアが、ロッソを呼びにきた。ロッソの手を引っ張りグアルディアは彼を共有控え室へと連れて行くのだった。

 広場の近くの路地にある木造の小屋が共有控え室である。ロッソは扉を開けて中に入る。


「なっなんだ!? これ? いったい……」


 共有控え室の扉を開けるとシャロたち三人が立ち尽くしていた。ロッソが中へ入るとシャロはゆっくりと彼に近づく。彼女らはそれぞれの自分の衣装を持っている。シャロは静かに自分の衣装をロッソの前に差し出す。


「おにいちゃん! あたしの衣装が……」

「旦那しゃん…… リーシャのおリボンも……」

「わたくしのドレスも…… 汚されてます」

「泥か…… ひどいな」


 見せられたシャロたちの衣装に、真っ黒な泥を塗られ汚されていた。破損はしていないようだが、汚されとても着られる状態ではなかった。


「もう! 誰よ! こんなことしたの!」


 拳を握ってシャロが悔しそうに叫ぶ。宿から店まで遠いシャロたちは、控え室に衣装を保管していた。鍵がかかり入場者が特定される共有控室に楽器や衣装を保管するのはよくあることだった。


「クソ…… もう酒場の営業時間になるぞ…… とにかくここは」


 チキンバースの開店までもう時間はない。新たに衣装を用意する時間も洗濯をする時間もない、ロッソは三人に衣装なし演奏するように提案をしようとする。


「シャロ落ち着け! とりあえずもう営業開始の時間だ。ミリア? リュートは無事?」

「はい! 楽器はいつも持ち歩いてます」

「よし! それならよかった」


 頷いたミリアがロッソにリュートを持ち上げて見せてくる。


「リーシャは衣装なくても歌えるよね?」

「はい! 大丈夫です!」

「シャロは? 衣装は無くても踊れるよな?」

「うん! 大丈夫だよ。そうよね。ミームさんが待ってるんだから! 今日は衣装なしでやるわ!」


 衣装がなくても、とりあえず演奏は可能だ。ロッソは力強くシャロに向かってうなずく。


「じゃあすぐにチキンバースへ行け。急がないとチキンバースが開店しちまうぞ! グアルディアは三人の衣装を宿へ運んでくれ」

「わかったわ。行くわよ。ミリア! リーシャ!」

「了解」


 シャロたちは急いで共有控え室から出ていった。ロッソはグアルディアにシャロたちの衣装を宿へ運ぶように指示をするのだった。

 いつもと違う格好で演奏するシャロたちに、ミームや客は少し驚いていたが、演奏が始めると変わらず彼女たちの演奏に酔いしれるのだった。

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