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勇者を守った男は成り下がり少女を守る ~護衛と踊り子の兄妹、歌って踊って傷ついた世界を癒せ!~  作者: ネコ軍団
第2章 空中劇場への招待

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第68話 ゴールドシスターズ登場

「ミリア! みてみて! すごい綺麗だよ」

「本当ですわね」

「こら! あんまり乗り出すと危ないぞ」


 馬車の荷台から身を乗り出し、シャロが外をみて声を上げていた。

 シャロは馬車から見える、オーラオーラ公国のオレンジの壁に赤の屋根、で統一された綺麗な町の景観に目を輝かせていた。


「本当に綺麗だな……」


 ロッソはシャロの背後から彼女越しに同じ光景を見て声をあげる。海側からの朝の太陽に照らされ、オレンジの壁がより鮮明に映っている。シャロはロッソに振り向き優しくほほ笑む。


「しっかし…… 飛空艇乗り場がこんなに離れてるなんてな…… まぁ船で一ヵ月かかるよりはましだが……」

「そうねぇ」


 先ほどまで喜んでいた顔が、うんざりとした表情に変わる兄妹だった。

 オーラオーラは都市だけの都市国家で国土が狭く、市街地の近くに広い場所が確保できずに、町からかなり離れた場所に飛空艇の発着場がつくられていた。そのおかげで飛空艇の発着場から、町にくるまで馬車で数時間かかったのだ。

 町の背後には三方を山に囲まれて南東側は海に面して、海岸沿いの山の麓にあるわずかな平地に海岸に沿って建物が並んでいる。都市国家であるオーラオーラ公国の領土はこの町と周囲の山のみだ。町に入るにはロッソたちのように山を迂回して、作られた街道を使うか船で港から入るしかなかった。


「ここがオーラオーラ公国か…… シャドウサウザー様もなぜかここだけは僕たちに攻撃命令をださなかったなぁ」


 グアルディアが街道から見える、オーラオーラ公国の町並みをみてつぶやいた。


「へぇ。そうなんだ。シャドウサウザーもここに別荘を建てたかったのかな」

「どうだろうな。あの人にそんな感情はなかったと思う。ただ単に攻撃する理由と価値がなかっただけじゃないかな。占領しても観光以外に何があるわけでもないし」

「そうだよな。さすがにそれはないか」

「でも、これだけ綺麗なら別荘を建てたいって思っても僕は反対しなかったかなぁ」


 美しい砂浜と温暖で穏やかな気候から、貴族たちの避暑地としてオーラオーラ公国は人気があった。貴族たちの中では、ここに大きな別荘を建てることで自信の力を誇示することができた。そのため競いあうようにしていくつもの貴族の別荘が建てられた。やがてその貴族を目当てに、商人が集まって町は発展した。

 かつてはこの場所を巡って争いが絶えなかったが、二代前の君主アローリ二世の代にどの国にも属さないが、各国にも干渉しない中立宣言をして各国もこれを了承した。

 世界で唯一オーラオーラ公国の周辺地域での紛争は禁止され、魔王軍との戦争では各国の精鋭が順番に訪れて警備にあたっていた。

 そのためここは世界一安全な避暑地として有名なり庶民の観光客も多く訪れている。


「ついたです!」


 ゆっくりと動いていた馬車が止まり、嬉しそうに後ろに振り返ってリーシャが叫んだ。


「お疲れ様。いつもありがとうね」

「えへへ。大丈夫です」


 シャロが優しくリーシャの頭を撫でて労う。町の外の停車場に馬車を停め、ロッソたちはオーラオーラ公国へはいった。


「えっと…… こっちだよ。今日の正午に町の中央広場で審査の説明があるんだって!」

「待って下さい。シャロ」

「そうです。待つでーす」

「おい! こら! 走ると危ないぞ! まだ時間はあるから大丈夫だ」


 シャロは嬉しそうに駆けていく。慌ててミリアとリーシャがシャロを追いかけていった。


「もう……」

「ロッソ! シャロたちが見えなくなっちゃうよ。僕たちも急ごうよ」

「あぁ」


 グアルディアに急かされてロッソもシャロの後を追うのだった。

 石畳みの整備された綺麗な大きな通りを、まっすぐ進むと小さな噴水のある広場へとでた。ここがシャロの言ってた中央広場のようだ。


「うん!? あれは…… なんだ?」


 広場の中央に木で舞台が組まれ人だかりができていた。シャロたちは広場の入り口の近くに立って人だかりを眺めていた。ロッソはシャロを見つけ近づく。


「なんだろう? あれ!? おにいちゃん! ちょっと行ってみようよ」

「いくです!」

「待ってよ。リーシャ!」


 シャロとリーシャが走り出した。リーシャはグアルディアの手を持つと彼を一緒に引っ張っていく。


「ふふふ。二人とも楽しそうですね」

「えぇ。でも心配だな。すぐに追いかけよう」

「はい」


 ミリアとロッソは顔見合わせて苦笑いをし、舞台へ向かった三人を追いかけるのだった。

 舞台の上に横断幕がかけられて、マーチピン劇場飛空艇臨時メンバー演奏者オーディション会場と書かれている。


「まさかもうオーディションが始めってるのか?」


 舞台に近づくと、繊細でどこか悲し気で綺麗な歌声と、優雅な楽器の音色が合わさりロッソの耳に届く。もう既に舞台の上で誰かが演奏を始めているようだ。


「しかし…… やっぱりうまいなぁ」


 力強いリーシャの歌とミリアの懐かしさを覚える演奏とは、少し違うがどこれはこれで素晴らしいものだというのはロッソにもわかった。近くまでいくと舞台の上にいる者の姿が見えてきた。人だかりでシャロたちは必死に背伸びをしているが、ロッソは背が人よりも高いので見えるのだ。


「見えないです! 旦那しゃん!」

「えっ!? なに!?」


 リーシャがロッソの足元に来てズボンのすそを引っ張った。背の低いリーシャは、大人に囲まれていたら見えないから、ロッソに抱っこか肩車をしろアピールしていたのだ。


「もう…… わかったよ。ほら」


 ロッソはリーシャの脇に手をいれて持ち上げ、彼女を肩車をした。

 舞台の上では透き通るような、白い肌の長い金髪のエルフの綺麗な女性が三人いて、一人がハープを演奏して一人が歌っていた。もう一人は部隊の真ん中で華麗に踊っている。踊る彼女はどこかはかなげで手足は優雅に動いていた。


「すごい…… 何なのあの人たち……」


 三人のエルフの女性をみてシャロがつぶやく。


「なんだ? お嬢ちゃん達は知らないのか? 彼女たちは黄金姉妹(ゴールドシスターズ)だよ。ここオーラオーラ公国が誇る音楽パーティだよ。劇場飛空艇のオーディションの前に練習してるんだってさ」

「へぇ。ゴールドシスターズ…… 審査を受けに来たってこと…… あたしたちのライバルね」


 ロッソたちのすぐ前で演奏を見ていた、中年男性がシャロに教えてくれる。舞台で演奏する彼女らはゴールドシスターズ、オーラオーラ公国を中心に活動する音楽パーティだ。中年男性はシャロに自慢げな顔で話を続けていく。


「踊っているのがノン、歌を担当してるのがミン、ハープを弾いてるのがモン、名前の通り彼女たちは三姉妹だよ」

「ふーん。三姉妹か…… どおりでみんな瞳の色も青で一緒だし顔が似てると思ったわ」


 ちなみに長女がノン、次女がミン、三女だ。その後、中年男性は三姉妹の好きな食べ物とか、今は恋人はいないとかいろいろな情報をシャロに向かって勝手にしゃべり出した。どうやらこの中年男性は、黄金三姉妹(ゴールドシスターズ)の熱烈なファンのようだ。苦笑いしながらシャロは中年男性の話を聞いていた。


「うん!?」


 ゴールドシスターズが演奏する舞台にさらに二人の男女が上がった。


「どうです!? みなさん? 我がゴールドシスターズの演奏は?」

「「いいぞ! 素晴らしい」」

「「もっと聞かせてーー!」」


 舞台にエルフの男女二人が、上がってきて男の方が観客に問いかけていた。観客たちは拍車や歓声で答えるのだった。

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