第62話 ボディガードは醜い争いを見守る
シャロが商業ギルドから手紙を読んでから、一時間ほど経過した。彼女はまだ頭を抱えパーティ名を考えていた。彼女の横に座ったミリアとリーシャがその様子を心配そうに見つめている。
頭を抱えていたシャロが顔をあげた。どうやら名前を思いついたようだ。意気揚々と彼女が口を開く。
「名前は…… シャロ舞踏団! どう?」
「そのまんまでつまんないからダメです」
「そうですね。リーシャちゃんの言う通りですわ。そのまんますぎて個性がありませんわね」
ロッソはリーシャとミリアの意見に同意するようにうなずく。シャロの考えたパーティ名はあっさりと二人に拒否された。二人が拒否するとシャロは、ほおを膨らませ腕を組み不満そうに口を尖らせる。
「ぶぅ…… じゃあリーシャはなんかいいのあるの?」
「リーシャとゆかいな仲間達がいいです」
「ダメよ。それじゃあたしとミリアがゆかいな人みたいになるでしょ。寸劇する集団じゃないのよ。あたしたちは」
リーシャが出した名前に苦笑いするロッソだった。さすがにシャロとミリアをゆかいな仲間にするのはかわいそうだと思うのだった。ロッソの後ろに立っているグアルディアは吹き出し等になっている。
リーシャを見ながら困った顔のミリアにシャロが話を振る。
「ミリアはなんかいいのある?」
「そうですね…… ミリア三楽坊なんてどうでしょう?」
「なんか古臭くて堅苦しいです」
まずいっという顔をするロッソだった。ただ、彼もミリアが出した名前は古臭いと思っていた。ミリアはリーシャの言葉にしょんぼりとしていた。
二人の意見を聞いた、シャロがため息をつき、テーブルに手をついて立ち上がった。
「はぁ…… だいたいなんで二人は自分の名前を入れるのよ。三人のパーティ名なのよ」
「最初に自分の名前を入れたのはシャロです!」
「そうよ。シャロちゃんだって人のこと言えないくせに」
「なっ!? あたしはリーダーだもん!」
ミリアとリーシャに左右から文句を言われて、また口をとがらせて不満そうに腕を組んでシャロが座る。
「まったくさ。二人の名前なんかセンスないじゃん……」
「ぶぅ! 聞こえてるですよ! シャロこそ何も考えてないです」
「そうですね。シャロ舞踏団って…… なんか行儀が悪そうな気がします」
「机の上で踊りそうです」
「なっ何ですって!? ミリア! あんたこそミリア三楽坊とかババアみたい! ねえ? リーシャ!」
「ババアです!」
「まっ! ひどい! シャロちゃん、リーシャちゃん…… でっでも! ゆかいな仲間達みたいな知性もないのよりマシです!」
「そりゃ確かにゆかいな仲間たちは知性はないけどさ……」
「ひどいです! シャロもミリアも嫌いです!」
座ったシャロがブツブツと文句を言い、それを聞いた二人が怒って三人の喧嘩が始まってしまった。
「はぁ…… まったく……」
椅子に座っていたロッソの後ろにいた、グアルディアが慌てた様子で彼の肩に手を置いた。
「ねっねぇ!? みんな喧嘩を始めちゃったよ? ロッソ止めた方がいいんじゃ……」
「あぁ。ほら。三人ともやめろ! うん…… なっなんだ!?」
立ち上がってやめるように叫んだロッソに三人が一斉に顔を向けた。目を輝かせて三人とも、何かを期待して優しい視線をロッソに送っている。最初にニコッと笑い、リーシャがロッソに向かって話し出した。
「旦那しゃんはリーシャとゆかいな仲間たちがいいですよね?」
「違うわよ。おにいちゃんはシャロウィズ舞踏団がいいわよね?」
「ロッソはミリア三楽坊が気に入りましたわよね?」
「えぇ!? うーん…… どれも正直…… えっ!? おっおい!?」
ロッソがどれも気に入らないというと、三人のさっきまで優しい目つきから、目を細めて冷たい視線に変わった。自分の味方以外は敵というわかりやすい意思表示だ。
「じゃあ! おにいちゃんはなんかいい名前あるの?」
「そうだな…… シャロ、リーシャ、ミリアの三人だからシャリミトライアングルとか……」
「ごめん…… おにいちゃんのセンスに頼ったあたしが悪かったわ」
「なっ!? 聞かれたから答えただけだろ…… って二人もかよ!」
ロッソの名づけセンスに落胆して首を横に振るシャロ、リーシャとミリアも彼を見てため息をつき顔をしかめ首を横に振っていた。ロッソの横にいたグアルディアが何かを思いついたのかハッをした表情をする。
「そうだ! 音楽パーティなんだから音の精霊とか……」
「わかったわ。話し合いでまとまらないなら…… ミリア、リーシャ! あたしと勝負よ」
グアルディアは急に立ち上がったシャロによって遮られてしまった。
「シャロとミリア勝負ですか?」
「でもどうやって? やるですか?」
口元にうっすらと笑いを浮かべ、シャロがゆっくりと話を始めた。
「明日、ゴルベさんに頼んで今まで一緒に出てた舞台を一人ずつにしてもらうわ。そこで一番盛り上げた人が名前を決めるのよ? どう?」
「わかりました。わたくしはやります! 勝負よリーシャちゃん、シャロちゃん!」
「リーシャもやるです!」
「よーし! 決定ね。あたしは負けないからね。絶対シャロウィズ舞踏団にしてやるんだから!」
「リーシャだって負けないです! リーシャとゆかいな仲間達です」
「わたくしだって負けないですわ! ミリア三楽坊…… 古臭い…… キーーーーー!」
立ち上がり互いを見つめう三人に気合がみなぎっている。自分の考えた名前が一番だと三人とも考えていた。
「むぅ…… なぜ僕の意見には誰も……」
「うん!? どうしたグアルディア?」
「もういいよ…… どうせ僕なんか…… しょせん…… 雑用さ……」
話を遮られたグアルディアは、悔しそうにブツブツとつぶやきながら嘆くのだった。
翌日シャロはゴルベに相談し、彼も店がさらに盛り上がりそうだと協力してくれることなった。シャロ、リーシャ、ミリアによる音楽パーティ名をかけた勝負が始まるのだった。




