第61話 ギルドからの厳しい通達?
酒場”バーライトの岩窟”の仕事が始まって一週間が過ぎた。
シャロの踊りとリーシャの歌にミリアのリュートの演奏が加わった、三人の音楽はすぐに評判となっていた。単独でのパフォーマンスで十分に客を惹きつけられる彼女たちが、一緒に演奏するとさらにパフォーマンスが向上していた。シャロの踊りが客の目をひきつけ、リーシャの声が耳を通して客を心地良い気分にひたらせ、ミリアの演奏が二人の歌と踊りをより洗練されたものする。三人の音楽は酒場全体の雰囲気をも簡単に変え人々は彼女たちの音楽に魅了され足繁く酒場に佳代のだった。
今日も三人は客を楽しませるべくシャロたちは、ロッソの背後にある控え室で準備をしていた。ロッソの横にはグアルディアが一緒に立って居る。
「なんだい君は? さては…… 暴漢だね! ロッソ! この子を……」
「あっ!? こら! ちょっと待て! グアルディア!」
走って来た少年につかみかかった、グアルディアの腕をつかみロッソが止める。
「ロッソ!? なぜ止めるの! こいつ暴漢だよ!」
グアルディアがこっちを見つめて不満そうに叫ぶ。グアルディアがロッソの手を必死に外そうする。
「待てって! 暴れるな! この子は違うんだ!」
「クッ……」
控え室前の廊下を歩いて、茶髪の少年が近づいてきた。気づいたグアルディアは、少年にいきなりすごんで掴みかかろうとしたのだ。少年は怪訝な顔でロッソを見た。
「ロッソさん…… 誰ですか? この子供?」
「はっ!? なんだ君は! 僕は子供じゃないぞ! 魔王軍の将軍だったんだからな」
「ははは! 魔王軍ごっこしてるの? じゃあ僕は勇者キースだ。やっつけちゃうぞ」
「くぅ…… ごっこじゃないよ! ちょっと! ロッソ! なんなの!? この子は? 君の知り合いなの?!」
腰にさした剣を抜く真似をしてかっこよくポーズを決める、少年にグアルディアが叫んでいる。
「この子は商業ギルドの使いだよ」
「えぇ!?」
少年は商業ギルドのからの使いだった。
グアルディアが少年を見た。少年はグアルディアに少し勝ち誇ったように笑いうなずく。グアルディアはショックを受けた顔をするのだった。
「まったく、いくらシャロたちの控え室に近づいてきたからといって、いきなりつかみかかるな」
「ごっごめん……」
「もう少しで誤解が解けそうなんだから余計なことするなよ……」
「うん!? 今なんて?」
「なっ何でもねえよ」
何かをごまかすように必死に、ロッソは少年をグアルディアからはなし、しゃがんで彼に謝罪をする。
「ごめんな。いきなりビックリしたよな。大丈夫か? ケガはないか?」
「へっ平気です…… でも、おかしな子ですね……」
「なんだと!? だいたい君も子供でじゃないか!」
グアルディアを見て笑う少年に、グアルディアが悔しそうに叫んでいた。
「うるせえな。いきなりつかみかろうしたらおかしな子って言われるのは当たり前だろ…… 俺もあまり人のことは言えないけどさ……」
ロッソはグアルディアを見ながら小声で聞こえないようにつぶやくのだった。少年はグアルディアに向かって舌をだし肩からかけた鞄に手をいれて動かしていた。
「シャロに手紙か?」
「はっはい。これ! お願いします」
少年が手紙を鞄からだして手をロッソに伸ばして差し出した。
「ありがとう。じゃあ、これは礼だ」
「やった! ありがとう! じゃあね」
「気を付けてな」
「こっちの子は暴れないように言っといてね」
「あぁ」
手紙を受け取ったロッソは、腰の袋につけた飴の入った袋を渡す。飴を受け取った少年は礼を言うとすぐに商業ギルドへと戻っていった。
「まったく…… 失礼な子だ……」
「まぁ子供にムキになるなよ…… しかし…… 次の仕事の依頼か……」
ロッソは少年から受け取った手紙をまじまじと見つめる。商業ギルドからの手紙はだいたいが次の仕事の紹介だ。ただし、現在の仕事が半分も終わってないのに、次の仕事の手紙が来るのはかなり珍しい。だいたいは仕事の終わる当日か一日前に来る。
「まぁいい。おーいシャロ!」
「はいです」
控え室をノックしたロッソ、出てきたリーシャにシャロへの手紙を渡したのだった。
その日の仕事は無事に終わり、みんなで宿へと引き上げていった。
宿に引き上げて皆でテーブルを囲み、くつろぎその日の疲れを癒していると、シャロが手紙を開けてなにやら悩んでいた。
「ふーん…… そうか…… どうしようかしら?」
「どうしたんだ? シャロ? なにか手紙にまずいことでも書いてあったのか?」
シャロに声をかけると彼女は静かに首を横に振り、ゆっくりと手紙をテーブルに置いて口を開く。
「あのね。商業ギルドにはあたし個人で登録してるじゃない。でも、ミリアを加えて三人になると音楽パーティになるからパーティの名前を考えて登録しろってさ」
「パーティ名? リーシャを加えて時には何も言われなかっただろ?」
「うん。三人以上で活動する場合はパーティ名が必要みたいなのよ。まぁパーティで登録した方が出演料が上がるからいいんだけどねぇ」
「ふーん。まぁ確かにまとめて行動するなら名前があった方が楽だ」
「わかってるけど…… うーん」
急にパーティ名を登録しろと、商業ギルドから言われたシャロは何も考えておらず必死に頭をひねるのだった。




