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勇者を守った男は成り下がり少女を守る ~護衛と踊り子の兄妹、歌って踊って傷ついた世界を癒せ!~  作者: ネコ軍団
第2章 空中劇場への招待

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第57話 活動再開

 アルティミシアとの約束を果たしたロッソたちは、自分たちの旅を続けるためアクアーラ王国へと戻る。


「急いで戻って仕事を再開しないと! リーシャ、ミリア、頑張ろうね!」

「はいです! リーシャ頑張るです」

「はい! シャロちゃん! わたくしも頑張りますわ」


 アクアーラ王国に戻る馬車の上で、シャロが気合の入った様子で、リーシャとミリアを鼓舞する。

 聖都アクアリンドとジャハル村とめぐり、一ヵ月くらい踊り子としての活動を停止してしまったので、彼女は一刻も早く活動を再開したいのだ。踊り子は人気がでても活動を停止し、表舞台から消えるとすぐに人気が落ちてしまうのでシャロが焦るのは無理もない。

 一行はジャハル村から一番近い商業ギルドがある町ラコルツァに向かっていた。

 ラコルツァは黒霧の森があるジェルボ大陸に西側と、東側にあるアクアーラ王国との国境である、ラコンパ山脈の町でアクアーラ王国に属している。ちなみにジェルボ大陸の西側にアクアーラ王国のような国は存在せず。

 ロッソたちがセントニリア島から、ジェルボ大陸に戻る際に利用した港町リルバのように、町がそれぞれ独立し町の周辺地域を治めている。


「そろそろラコンパ山脈に近づいてきたな……」


 馬車後部から顔出し、外の様子を見詰めるロッソ。馬車から見える景色に木が減って、背の低い草が多くなり、時折ゴツゴツした岩肌見える地面が姿を現す。


「旦那しゃん! 道が真っ暗に向かってます!」

「すぐ行く」


 リーシャが御者台からロッソを呼んだ。リーシャに返事をしロッソは馬車の前方へと移動する。

 幌から顔をだして前を確認するロッソ、馬車が進んでる街道の先に大きな山が見える。

 山の麓にはバックリと穴が開いたような、幅数十メートル、高さ十数メートルほどの大きなトンネルが口を開けている。

 街道が真っ暗なトンネルの中へと続いてるから、不安になりリーシャは彼を呼んだのだ。ロッソはリーシャの顔の横から腕を伸ばしトンネルを指さした。

 

「このまま進んで平気だ。あの中にラコルツァはあるんだ」

「はい。わかりました」


 ロッソがリーシャにそのまま進むように指示をだした。返事をした彼女は言われた通りに馬車を進ませる。彼らが目指すラコルツァは街道の先に見えるトンネルの途中に築かれている。

 トンネルははるか昔にこの地域を治めていた、ドワーフの王国が作ったトンネルで、彼らが滅んだ後にアクアーラ王国が徴収し使用している。町もドワーフが作った頃のまま残っており利用している。


「すごい! おにいちゃん見てみて! ランプがいくつも浮いてる……」


 ロッソの隣で同じように顔をだした、シャロが天井を指さし声をあげている。

 トンネルの天井には緑色をおびた、ランプくらい大きさの光が、無数に広がり星空のように輝いていた。天井に輝く美しい夜景のような光景に、シャロは荷台から御者台のリーシャの横へ移動し天井を見上げるのだった。


「ほぇぇぇ! すごいです」


 シャロの横でリーシャも天井を見上げて声を上げていた。ロッソの隣にミリアもやって来て、二人の様子にほほ笑むのだった。


「リーシャとシャロは見たことないんだな」

「ふふ。そうですね」


 ロッソミリアはキースとの旅で、ラコルツァを訪れたことがあり、天井に広がる光景は見ていた。

 

「あれはランプじゃないよ。ラコルツァの町で飼ってるラコンパ蛍だよ」

「えぇ!? 蛍ってことはあれ虫なの?」

「そうよ。いつ見ても綺麗ですわね…… ロッソ……」

「えっ!?」


 優しくほほ笑んだミリアは首をかしげ、ロッソの腕に頭をつけてきた。手を震わせながらは、ロッソはそっと彼女の肩に手を……


「いて!」


 振り向いたシャロが手を伸ばして、ミリアが頭をつける反対側の腕の肉を力強くつねった。


「何するんだ!? シャロ!」

「フン! イーだ! バカおにいちゃん!」


 不機嫌そうにシャロはロッソを睨み付けると、再び天井を見上げるのだった。


「あっ……」


 シャロの行動に驚いたミリアがロッソの腕から離れてしまった。名残惜しそうにロッソはミリアの頭が置かれた腕の部分を触る。

 景色を見ていたシャロは、振り返り荷台に顔を向け口を開く。


「ねぇねぇ! グアルディアちゃんも一緒に見ようよ!」

「うっうるさい! 僕は護衛(ボディガード)としてモンスターや盗賊がこないか警戒をしないと……」

「平気だよ。この辺のモンスターならおにいちゃんに任せておけばいいんだから一緒に見ようよ!」


 シャロがロッソの横を通り抜け、馬車の後ろの荷台へ向かう。馬車の後方で様子を外の様子をうかがっていた、グアルディアの手を引っ張って御者台へとつれて行こうとする。


「やめてって! 僕は…… 警戒を……」

「いいじゃん…… もうおにいちゃん! 代わってあげて!」

「えっ!? なんで俺?」

「だっておにいちゃんと同じ護衛(ボディガード)なんだから! ほら! 早くおにいちゃんが代わってあげないとグアルディアちゃんが遊べないでしょ! 早く!」

「はぁ…… わかったよ」


 ロッソはシャロに返事をすると、グアルディアの元へと行き、彼の肩に手をかけて口を開く。


「行っといでグアルディア…… ちゃん! プっ……」

「なっ!? ロッソ! もう許さないぞ!」

「はいはい。ほら言ったろ? ここのリーダーはシャロなんだからシャロの言う通りにしろよ。言うこと聞けないならジャハル村に帰るんだな」

「クッ……」

「はーい。決定行くよー! グアルディアちゃん!」


 嬉しそうなシャロに引っ張られ、グアルディアはリーシャの横に座らせられていた。連れて行かれる時に、グアルディアはロッソを恨みがましく睨んでいた。


「おぉ! すごい! 綺麗だ!」

「でしょ? よかったグアルディアちゃんが喜んで」

「すごいですね。シャロ! グアルグアルしゃん」


 三人並んで感嘆の声をあげながら、ラコンパ蛍が無数にいる天井を眺めている。その少し後ろでミリアがほほ笑んで三人の様子を見ていた。


「僕はグアルディアだ! シャロもちゃんとグアルディアと呼んで!」

「グアルグアルしゃん」

「グアルディアちゃん」

「もう…… クッ」

「なっなんだよ!? 恨みがましい顔で俺をみたって無駄だよ。あきらめろよ」


 シャロとリーシャのペースに、すっかりグアルディアは巻き込まれていた。


「しかし、グアルディアちゃんって…… プっ!」


 幼い容姿と変わったグアルディアは、リーシャと同じくらい少年に見え子供扱いされるのは、いたしかたないことだった。ただ、ロッソは見た目が違うが、半年前に戦った魔族の将軍が子供扱いされるのがおかしかった。

 馬車はゆっくりと、ラコルツァの町へと進む。少しすると四角い建物が見えてきた。ここがラコルツァの町だ。

 洞窟の広大な空間にドワーフの高い技術によって、石を切り出して作られた町だ。町は外側から内側に低くなるように高低差があり路地には階段がいくづも見える。町は茶色の建物に、蛍の緑の光が反射し、独特な雰囲気を醸し出していた。

 ロッソたちは街道沿いにある少し広めの停車場を借り馬車を停める。馬車を下りるとシャロが、グアルディアの手を引くのだった。

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