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勇者を守った男は成り下がり少女を守る ~護衛と踊り子の兄妹、歌って踊って傷ついた世界を癒せ!~  作者: ネコ軍団
第2章 空中劇場への招待

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第56話 護衛達は雑用係を手に入れる

 メディナの家の前でナディアがロッソたちへと駆け寄ってきた。


「あれ!? シャロ!? この子だれ?」


 グアルディアを見て首をかしげた、ナディアはシャロに尋ねる。娘に気づかれずなかった、グアルディアは慌てて自分を指さしてナディアの前に行く。


「ナディア! 僕だよ。お父さんだよ……」

「パパなの? うわぁ! ちっちゃーい! かわいい!」

「こら! ナディアやめて!」


 しゃがんでナディアが、嬉しそうにグアルディアの頭を撫でている。グアルディアは身長が、ナディアの半分くらいになっており。大人の見た目のナディアとグアルディアは、見た目だけ親子逆転していた。


「ママー! パパが……」

「あっ!? こら呼ばなくていいよ!」

「なんでぇ!? ママー! パパが帰って来たよー!」

「あっ! こら!」


 メディナを呼ぼうとした、ナディアの口をグアルディアが止めた。しかし、ナディアは止められた理由がわからず、グアルディアの制止を無視してメディナを呼んだ。青ざめたグアルディアは走り出した。


「うん!? おい!? なっなんだよ」


 グアルディアがロッソの背中に隠れた。直後に家の扉が開いてメディナが出てた。


「ナディア! 今パパって聞こえてけど?」

「うん! パパ帰ってきたの! ロッソの後ろにいるよ」

「えっ!?」


 眉間にシワをよせ目を鋭くして、メディナは恐ろしい顔でロッソを睨み付けた。正確には彼の後ろに隠れているグアルディアを睨んでいる。


「っていうかさ! グアルディア! 俺を盾にするな。俺はシャロ達の護衛(ボディガード)であってお前の護衛(ボディガード)じゃないぞ!」

「うるさい! いいからなんとかごまかせ!」

「はぁ!? うわ!」


 ごまかせと言われ前を向いた、ロッソの目の前に恐ろしい顔をしたメディナが立って居た。彼女はそっと体を斜めにしてロッソの背中を覗き込む。


「まったくこのボンクラ亭主が! 心配かけて! ってどうしたの? その姿は……」

「あっあの…… これはですね……」

「ロッソ! あんたに聞いてないよ」

「はっはい!」


 背筋を伸ばして返事をするロッソだった。歴戦の強者であるロッソだったが、メディナの迫力にかなわなかった。メディナが隠れているグアルディアにすごみながら手招きして呼ぶ。


「あんた! さっさと出て来な!」

「嫌だい!」


 グアルディアはロッソの腰のベルトを掴み拒否する。


「うるさい。さっさと出ろ!」

「あっ! 裏切り者!」


 ロッソは渾身の力を込め、グアルディアが必死につかんでいたベルトから彼の手を外した。ロッソはグアルディアを置いてさっさとメディナの前から逃げた。


「迷惑ばかりかけて! この!」

「わっ!? わっ!」


 標的外のロッソに目をくれず、メディナはグアルディアの首根っこ掴んで持ち上げていた。目に涙を浮かべてグアルディアは子犬のようなつぶらな瞳でロッソを見る。


「そんな裏切者みたいな顔でみるな。別に俺とお前は友達でも仲間でもないだろう……」


 ロッソはそうつぶやいてグアルディアから顔を背けたのだった。グアルディアは頭を鷲づかみにされ強引に顔をメディナへと向けさせられる。


「あの! これは…… その!」


 グアルディアはメディナに捕まりながら、必死に自分がなんでこの姿なのかの説明をするのだった。怖いのか時折言葉につまっていてその都度メディナに睨まれている。


「ふーん。わかったよ。じゃあその魔族封じに呪いが解けるまでその姿なんだね……」

「うん…… 多分……」

「はぁ…… しょうがないね。まぁいい。お帰り! さぁナディア! 村のみんなに伝えておくれ。亭主が帰ってきたから今日は村長の家で宴会だよ!」

「わかったー!」


 ナディアが元気よく返事すると村の中に駆けていった。メディナはグアルディアの頭を撫でて笑うと彼を地面に下した。グアルディアはホッと胸を撫でおろすのだった。


「さぁ忙しくなるよ! ロッソたちも手伝って!」

「おう」

「わかりましたわ」

「はーい」

「はいです!」

 

 返事をしたロッソたちをメディナは家を連れていく。

 ナディアに呼ばれた村人が、続々とメディナの家へと集まってきた。

 村人はみな勝手知ったる様子でどこからともなく、椅子やテーブルを持ってきてメディナの家の広い庭に並べてあっという間に宴会の準備が整った。ロッソたちも椅子を並べたり、料理を運んだりとメディナを手伝うのだった。


「さぁ! 今日は亭主が帰ってきたのと新しい友人の歓迎会だよ!」


 メディナがコップを持ち、笑顔で村人に宴の開始の挨拶をする。


「友人か…… ふふ。なんか変なの。でも…… 気分は悪くない」


 杯をかかげて笑うロッソ、半年前まで殺し合った魔族から友人と言われたのがおかしかったのだ。

 宴が始まってすぐに、シャロの踊りとリーシャの歌とミリアの楽器による演奏が行われ、ジャハル村の人たちにも大いに受けた。その日の夜は遅くまで宴会が続いたのだった。

 翌朝、メディナの家の手前にロッソたちの馬車が停車し、ロッソたちはメディナの家に前に整列している。ロッソたちの向かいには、グアルディアとナディアとメディナの三人が家の前に立っている。


「じゃあな。グアルディア!」

「世話になったね。ロッソ」

「わたくしのせいで申し訳ありませんでした」

「しょうがない。ミリアのせいだけじゃないから気にしないで! 僕が油断したのも悪いんだし……」


 少年の姿のグアルディアとロッソとミリアは握手をした。


「シャロ! あたしも踊り子になる! また踊り教えてね」

「うん。いーよ。今度は厳しく教えるね」

「えー!?」

「ははは冗談だよ…… またねナディア……」

「ご飯美味しかったです。また食べたいです」

「いいよ。いつでもおいでリーシャのこと待ってるよ」

「ありがとうです」


 シャロとナディアが笑顔でだきあって、リーシャを抱きかかえるメディナの顔には薄っすらと涙が浮かんでいた。


「じゃあ、メディナ、ナディアも元気で! みんな行こうか!」


 メディナとナディアに挨拶が終わった、ロッソは三人に声をかけて歩き出した。ロッソの後に三人がついてくる。


「待ちな! ロッソ!」

「えっ!?」


 歩きだしたロッソたちをメディナが止めた。振り向いたロッソ、彼女はニヤリと笑い隣に立つグアルディアの背中に手を回した。


「なにか!?」

「あんた…… ロッソたちについて行きなよ」


 メディナはグアルディアの背中を軽く押して前にだし、ロッソたちについて行くように命令する。押されて一歩前に出たグアルディアは、突然の妻の命令にひどく驚いていたがすぐに我に返りメディナに口を開く。


「メッメディナ!? 何を急に言うんだ? 僕のこと嫌いになったのか?」

「違うよ。あんたの呪いを解くにはジェリスをやっつけるんだろ? だったら世界を飛び回るロッソ達についていくのがいいよ」

「でも……」

「ナディアも今のパパより前のパパがいいよね?」

「うーん…… うん! 今のパパもかっこいいけどやっぱり前のパパの方がいい! だからロッソと旅をしてきて!」

「なっ!? ナディアまで!? 僕はようやく戦争が終わってここで二人と……」

「あぁ! もう!」


 グアルディアの耳にメディナが、口を近づけて小声で何かを話をする。少ししてメディナが顔を、はなしグアルディアの肩を叩いた。


「わかったろ? 行ってきな! 心配しなくてもこっちは魔王様にあんたが仕えた時から二人暮らしなんだから」

「よし…… わかった……」


 少し緊張した顔でグアルディアがロッソの前までくる。ロッソの前で彼を見上げ、グアルディアは意を決して口を開く。


「ロッソ! 僕も君たちの旅に同行させてくれないか?」


 やや震えた声でロッソに旅への動向を懇願するグアルディアだった。ロッソは彼の顔を見て淡々と首を横に振った。

 

「ダメだ」

「ええええええええ!? なんでだよ! これでも僕は魔族の将軍で……」


 断れると思ってなかったグアルディアは必死に連れ行ってももらおうとアピールする。ロッソは笑って親指で自分の後ろを指した。


「リーダーは俺じゃない! そういうことはシャロに頼め」

「えっ!? そうなの?」


 グアルディアが驚いた顔でシャロと見る。シャロはグアルディアの顔をみて頷いた。そうこの旅のリーダーはシャロだ、ロッソはあくまで護衛(ボディガード)として彼女に同行しているだけだ。リーダーであるシャロに無断で旅の仲間に追加することなどロッソには出来ないのだ。

 シャロの前へと移動してきた、グアルディアに彼女はしゃがんでたずねる。


「グアルディアちゃんは踊りとか歌とかできる?」

「うっ…… 僕はそういうのしたことない……」

「なら楽器は? なんかできる?」

「楽器も…… 何もできない」


 うつむいてグアルディアは不安そうに答える。シャロはグアルディアの答えを真面目な顔で聞いていた。


「そっか…… ならしょうがない。グアルディアちゃんは魔王軍の将軍だったんでしょ? 護衛(ボディガード)兼雑用係でいいならつれていってあげる」

「ざっ雑用!?」


 グアルディアがメディナの方を見る。メディナゆっくりと頷く。グアルディアは少し考えてからシャロに答える。


「わっわかった…… それでいい」

「よし! じゃあおにいちゃん! グアルディアちゃんの面倒みてね!」

「わかった。じゃあ、グアルディア。面倒を見てやるから俺の言うことを聞けよ」

「なっ!? これでも僕は元将軍なんだからそれなりの敬意を…… わっ!? こら!」

「はいはい。わかってるよ」


 グアルディアの首根っこをつかんでロッソは馬車に放り込んだ。ロッソたちはかつての魔王軍の将軍であった、グアルディアを護衛(ボディーガード)兼雑用として仲間にした。馬車に乗った彼らはジャハル村を後にしてさらに旅を続けるのだった。

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