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勇者を守った男は成り下がり少女を守る ~護衛と踊り子の兄妹、歌って踊って傷ついた世界を癒せ!~  作者: ネコ軍団
第2章 空中劇場への招待

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第54話 護衛は魔族の幼女に守られる

 洞窟の外へと出たロッソに洞窟の前にシャロたちが立って居るのが見えた。心配そうに洞窟の出口を見つめていたシャロが、ロッソに気づくと駆け寄って来て彼に声をかけてきた。


「おにいちゃん!? 何してたの? 魔族の人たちは?」

「なっ何もしてない…… さぁ帰ろう」


 右の耳の裏を触りながらロッソはシャロに答える。


「えっ!? おい!? どっどうした?」


 シャロは急に涙目になり、ロッソの胸を拳で叩き始めるのだった。妹の突然の行動と後ろめたさからロッソは困惑し動けない。


「うそよ! 煙が…… 火が…… 火が出てるでしょ! なにが何もしてないよ! 嘘つき!」


 泣きながらシャロが洞窟の空を指さした。ロッソが燃やした魔族たちの煙が、天井の穴から漏れて噴き出していたのだ。シャロはロッソをジッと見つめている、彼が何をしたのかもうわかっているのだ。

 何もいえずにロッソが黙っていると、静かにミリアがシャロに近づいて来て彼女の肩に手をおいた。


「シャロちゃん…… 違うのよ。ロッソは彼女たちを殺したんじゃないの。救ったのよ……」

「うぅ…… でも…… 他に何か手が…… あの人たちを助ける手が……」


 ロッソの胸を叩くシャロの手が徐々に力なく弱くなっていく。目の前の妹からロッソは目をそらし黙って叩かれ続ける。


「シャロ…… 旦那しゃんをいじめちゃダメです……」

「そうだよ…… ロッソは悪くないよ……」

「リーシャ…… ナディア…… ごめんね…… ごめん……」


 ナディアとリーシャがシャロの手をつかんで止めた。シャロは二人を抱きしめて静かに泣くのだった。


「シャロ……」


 ミリアとロッソはシャロが泣き止むまで、彼女の背中をさするのだった。


「しかし……」


 泣くシャロをジッと見つめるロッソだった。彼はシャロも自分と同じく、魔王軍に親を殺されているのに、魔族のために泣くことが不思議だった。ただ、メディナとナディアや自分のために命をかけたグアルディアなどを見てると、ロッソもなぜ彼女らと戦争していたのか、わからなくなっているので彼女の気持ちも少しだけ理解できたのだった。

 シャロが泣き止むのを待ち、ロッソたちはジャハル村へと戻ったのだった。

 ロッソは、シャロ、ミリア、リーシャの三人にブラックミラージュ草を持たせて、ドルボンの家へ向かわせた。ナディアとロッソは二人で、メディナの元へと向かい洞窟で起きたことを報告するのだった。メディアの部屋で彼は洞窟で見たままのことを伝え自分がしたことも伝えた。

 魔族の女性たちは陵辱されハイグレードオークを孕まされたこと、そして、ハイグレードオークの胎児は女性たちの体にへばりついた状態であり救う方法がなかったことを…… ロッソは報告するだけで気分が沈み怒りがこみあげてくる。彼の横でナディアは涙目になっている。

 メディアは椅子に座ったまま黙って目をつむってロッソの話しを聞いていた。魔族の女性を殺したことも説明すると途中でナディアが必死にロッソをかばっていた。シャロとナディアとリーシャは、ミリアが彼を呼びに行ってる間に魔族たちがいる空間に入ってしまい惨状を見てしまっていたようだ。


「以上だ……」


 話を全て聞き終わると、スッとメディナが立ち上がり難しい顔いながらロッソに近づいていく。

 近づくメディナをロッソは黙って見つめている。彼はメディナが魔族のことを殺したことで自分が咎められることがあると覚悟の上だった。村長のメディナが自分を罪に問うなら受け入れるつもりでもあった。


「ママ! やめて! さっきも言ったけどロッソは何も悪くない!」

「えっ!? ナディア…… ありがとう……」


 両手を広げたナディアが、メディナの前に立ちふさがり、必死にロッソをかばっている。メディナは彼女の様子にあきれた顔をする。


「わかってるよ。違うから! そこをどきな!」

「ホッ。はーい!」


 元気よく返事してナディアがどくと、メディナは優しくロッソの肩に手をおいた。


「お疲れさん…… 辛かっただろ…… でも、あんたのおかげて同胞が救われた。ありがとう。後はこっちで調べるからあんたはドルボンのとこに行ってきな」


「はっはい」


 メディナはロッソに労いの言葉をかけてくれた。ロッソはメディナに頭をさげ、医者のドルボンの元へ向かうのであった。


「……」


 廊下に出た彼にメディナの扉の向こうから、ナディアのすすり泣く声が聞こえた。ナディアは魔族たちの惨状に心を痛めていたが、自分は道案内役だからとずっと泣くのを我慢していたのだ。ロッソはそっとメディナの部屋の扉に手を置いてすぐに振り向いてドルボンの元へと急ぐのだった。

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