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勇者を守った男は成り下がり少女を守る ~護衛と踊り子の兄妹、歌って踊って傷ついた世界を癒せ!~  作者: ネコ軍団
第2章 空中劇場への招待

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第50話 魔族と一緒に踊れ

 ロッソは夕食が終わったあとメディナが風呂を用意してくれた。順番に入ってロッソが最後に風呂に入った。

 ゆっくりと湯につかり疲れをいやした、ロッソは風呂場から部屋へと戻るため廊下を歩いていた。


「ふぅ…… 魔族も人間と同じ風呂に入るんだな…… ははっ…… 変な感じだ」


 扉を開け一息つき廊下の窓を見て笑うロッソだった。つい半年前は殺しあった魔族の家で、風呂に入ってくつろいでいる自分がおかしかった。

 メディナはロッソたちに風呂を用意したら、仕事が残っていると家から出ていってしまった。彼女は夜にしか会えない夜行性の魔物の元へ話を聞きに行っていた。いろいろな種族がいるジャハル村の村長ならではの仕事だ。


「うん? シャロとナディアか。何してるんだ……」


 部屋に戻るために通り抜けるリビングの扉をロッソが開けた。彼の目に食事をとったテーブルを端に寄せ、広くスペースを取ったリビングの中央に、シャロとナディアが向かいあって立っている姿が見えた。


「ナディア! そうそう。うまい! 上手よ」


 シャロがステップを踏み始めると、ナディアがそれを真似してる。どうやらシャロがナディアに踊りを教えているようだった。


「あぁそうか…… 確か夕飯の時にナディアが踊りを教えてくれってせがんでたっけな」


 ナディアは踊りに興味があるようで、シャロが踊り子であると聞いてから、何度か踊りを教えてくれと頼んでいた。シャロは彼女の要望に応え踊りを教えている。

 真面目な顔でシャロはステップの説明をする。


「そういや…・… 踊ってるところと見たことあるが、シャロが人に踊りを教えてるとこは見るの初めてだな」


 ロッソはシャロとナディアを見ながら横を通り過ぎていく。


「あっ! ロッソだ! 見て見て! ナディア踊ってるの」


 横を通りすぎていくロッソに気付いて、ナディアが手を振って声をかけ自分の踊りを見てとせがむ。


「うん見てた。ナディアは踊りがうまいな」

「へへへ! もっとみて!」


 歯を見せてニカって笑ったナディアはシャロに教わっていた通りに、ステップ踏み腰を振りながら踊りを始めた。

 ナディアは魔族の子供のせいか仕草とかしゃべり方が幼い、しかし、踊る姿は人間の大人の女性と見た目が変わらない。大きくて弾力のありそうな胸が揺れて、キュッとしまった腰が動いてなんとも妖艶な雰囲気をかもしだす。


「まずい……」


 ロッソは気まずそうにする。彼は踊るナディアの揺れる胸から視線が外せなくなっていた。彼女の大きな胸が激しく揺れて薄いローブの上に薄くピンクの……


「おにいちゃん! 今! 変な目でナディア見てたでしょ?」

「うわあああああああああああ!!!


 いきなりシャロがロッソを指さして大声で叫んだ。図星を指摘されたロッソは驚き、激しく動揺し思わず叫ぶのだった。冷たい目で見てくる妹に兄は必死に首を横に振っている。


「みっ見てないよ!」

「本当に!?」


 激しく上下に首を動かしうなずくロッソだった。彼は必死に自分の心に、ちょっと胸をジッと見ただけで決して変な目で見てたわけではないと嘘をつくのだった。

 目を細めてシャロがずっと疑った顔でロッソを見つめていた。


「シャロ! ナディア!」


 扉が急に開いてリーシャがリビングに入ってきた。シャロとナディアの元に駆け寄ったリーシャが声をかける。


「リーシャも仲間にいれるです!」

「えっ!? 今は踊りの練習をしてるんだよ?」

「リーシャが歌うからそれを聞いて踊るですよ!」

「うーん。どうしよう? ナディアはリーシャも一緒で大丈夫かな?」


 入ってきたリーシャにシャロは少し困った様子でナディアにたずねる。首をかしげてナディアはリーシャ見てにっこりと笑った。


「ナディアはいーよ! リーシャはお歌が得意なんだよね? リーシャのお歌で踊る」

「ありがとう。リーシャも一緒にやろう」


 笑って嬉しそうにナディアが答えた。拒否されなかったことでシャロは、少し安心したような顔をするのだった。


「やった! ミリアも呼んでくるです! 待ってるです」


 両手を挙げて喜び、リーシャは部屋を勇んで出ていった。廊下を走る元気な足音が聞こえる。すぐにリーシャに手を引かれたミリアがリビングに入って来る。リーシャに引かれた手の反対に、ミリアの手にはリュートが握られていた。

 部屋に入ったリーシャはミリアに、椅子を持ってきて座るように促した。


「ミリア! リュートを弾いてください! シャロとナディアが踊ってリーシャ歌うです!」

「わかりました。さて何を弾こうかしら?」

「あっ! ミリア!  ”調和する日常”を弾いて頂戴! おにいちゃんもこれなら笛でできるでしょ?」

「えっ!? 俺も?」

「いいじゃん。今日は仕事じゃないんだしさ。笛を吹いてよ」

「えぇ…… 俺もやるのかよ。はぁどうしようかな」


 困った様子のロッソ、ミリアと一緒に旅を初めてからあまり多くなかったロッソが笛を吹く機会は、ますます減っており彼は演奏に自信を無くしていた。ロッソが悩んでいるとミリアが口を開く。


「あらいいですわね! 久しぶりにロッソと演奏したいです」

「旦那しゃんも一緒にやるです」

「わーい。ロッソもやろう! あたしとシャロが踊りでリーシャがお歌、ミリアとロッソが楽器だよ!」

「わかったよ」


 ナディアにせがまれたロッソは部屋に笛を取りに行くのだった。リビングに戻ると彼はミリアの横に並んで座らされる。二人の前にリーシャが立ち。リーシャのシャロとナディアが並んでロッソとミリアが演奏を始めるのを待っていた。


「じゃあ、行きますよ。ロッソ!」

「はい!」


 ミリアがリュートを構えて演奏を始める。彼女のリュートの穏やかで優しい音色は、部屋の隅々まで響きあっという間に部屋をどこか懐かしい雰囲気へと変えていく。ロッソは彼女の演奏の邪魔にならないようにそっと笛を吹き始める。

 シャロが音に合わせて踊り出した。しなやかな手足の動きで表現された踊りにその場に居る人間の視線を独り占めしていく。

 最後にリーシャが歌を歌う。透明感の澄んだ綺麗な声が歌詞をつむいでいく。

 彼らが今宵披露する”調和する日常”は平和な時代が長かった時代に歌われた恋愛歌だった。


"sinction nelcy cutanlues tlemerro amemine dlorlen"

(切ないこの気持ちまるで子犬のように震えている)


"vovo care add hoccy tampls quend herban dmile vaclturan ciarcumitus”

(黄昏の夕日とあなたに包まれている)


"clebuscaelum eiat uesaq addy okkasurm boisit"

(この時を大事にしたい)


"aadomisree solentam dirsis fondle inenra huko koroleim"

(空の色といつもの日常を 絵の具のように混ぜる)


"veutasi radire sunnes Simfoniam dlee corluibul arerecram"

(嬉しき音を奏でろ 虹色の交響曲 )


 ミリアの演奏、シャロの踊り、リーシャの歌三つが調和してメディアの家のリビングはちょっとした劇場のように変わっていく。

 ロッソの笛とナディアの踊りは、三人のレベルには到底及ばないが、二人は彼らの技術に臆することはなく楽しく演奏していた。特にナディアはシャロと踊るのが楽しいらしく、嬉しそうに彼女の横で必死に真似をするのだった。

 ロッソは笛を吹きながらナディアとシャロをみて自然と頬が緩む。ついこの間まで命をかけて戦っていた魔族と一緒に音楽を楽しむ日が来たことが彼はうれしくあり不思議だった。


「ちょっと! あんた達!? 何してるんだい?」


 大きな叫び声がした。ロッソたちが演奏をやめて声の方を向いた。開いた扉の前に丸い体型をしたメディナが立って瞳をうるませていた。

 ロッソたちは演奏に集中して誰も気づかなったが、少し前から彼女はそこに立っていた。真っ先にミリアが立ち上がりメディナに謝罪する。


「ごめんなさい! うるさかったですか?」

「すっ…… すごい! すごねぇ! あんた達!」

「きゃっ!」


 感動しているのか泣きながらメディナが走ってミリアを抱きしめた。次に歌っていたリーシャに抱き着いた。


「うーべっちょりです」

「あらあら…… もう一回お風呂入らないと」


 鼻水と涙でグシャグシャの大きなメディナに抱き着かれた、ミリアとリーシャの服と顔はぐっしょり濡れてしまった。


「すごい。あんた達の実力がこんなだったなんで……」

「ちょっと! メディアさん…… 苦しいよ。それと濡れるから!」


 最後にシャロに抱き着いた。シャロは少し嫌そうな顔で必死にメディナの頭を手で押さえていた。


「あぁごめんね。あんた達があまりにもすごくてつい……」


 謝ってメディナは申し訳なさそうにシャロから離れて、彼女はシャロの横にいたナディアの頭を優しく撫でていた。皆が褒められているなか、自分は褒められないロッソは少し寂しかった。ただ、シャロたちの惨状をみたらよかったのかも知れないが……


「ナディアも上手だったね。すごいねぇ。シャロに教わったのかい!」

「うん! 褒められてうれしい! あたしね大きくなったら踊り子なるの!」

「えぇ!? そっか…… 頑張りな」


 少し複雑な顔でメディナはナディアの頭を撫でていた。その日の夜はナディアとリーシャが、眠くなるまで演奏が続いたのだった。

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