第49話 将軍の娘はまだ子供
ドルボン家からメディナの自宅へと向かうロッソたちだった。メディナの自宅はロッソたちが、入った正門から一番遠く村外れにある木で出来た家だった。村の道をドルボンの家に来た時と同じように、リーシャと手をつないで歩くメディナが振り返って口を開いた。
「そうそう。あんたら泊まるとこ決めたかい?」
「いや。まだ何も決めてない」
「だったら今日はあたしん家に泊まりなよ」
「いいのか?」
「もちろん! 娘も喜ぶよ! それと今から洞窟へ行っても夜になるから行くのは明日にしなね」
「わかった」
ロッソはメディナに頷いて返事をする。
メディナに連れられてロッソたちは、のどかな村の道を歩いていく。道を行き交うのは人間や魔族や魔物と様々な種族がいてまだ少しなれず異質な感じがした。
「やぁ村長!」
「おぉ! おじいさんは元気にしてるかい?」
「こんにちは村長たん」
「いいこだねぇ」
道を歩くメディナを見つけた人は、挨拶をして立ち止まり少し世間話などをする。話を聞き時折メディアは豪快に笑っていた。ロッソは村人たちと交流するメディナを観察する、その姿は魔族なのに人間とあまり変わらない。
「ふっ俺も焼きが回ったか」
ロッソはメディナを見て笑う。リーシャの言う通り魔族のメディナにどこか親しみやすさを感じたのだ。また、メディナの笑い方や話し方がロッソとシャロの母親に似ていた気がした。もし母親が生きていたらこんな感じなんだろうとロッソはメディナに懐かしさも感じていた。
しばらく歩くと大きな木造の建物が見えてきた。家の前に女性が一人立っているのが見える。
「ママ! お帰りなさい」
家の前にいた女性が手を大きく振りながらメディナに向かってかけてきた。女性は銀色の長い髪をした、目が丸く赤い瞳の鼻が高くすらっとした褐色の肌で美しい。美貌だけでなく身長はシャロと同じくらいで体は細く、線が出る薄手の白いローブから見える胸は大きく谷間がはっきりと見えスタイルは抜群である。
「お客さんだよ。ちゃんと挨拶しな!」
「こんにちは! わたしはナディアだよ! よろしくね」
「よろしく……」
「なっなに!?」
挨拶をしたロッソの顔をナディアは、腰をまげて物珍しそうにのぞき込んでくる。綺麗な赤い瞳でかわいく上目遣いで覗き込まれるとロッソは少し緊張するのだった。
「うわ! 赤い髪の人大きな人だ」
「この人がロッソだよ」
「ロッソ!? パパと戦った人だよね? すごーい! 会いたかったー!」
「えっ!? ちょっと待って! うわぁ! またなんで俺!?」
笑ったナディアがロッソに飛びついて来た。不意に飛びつかれたロッソだったが、踏ん張ってナディアを受け止めたのだった。
「うっーん…… ミリアより少し若く張りが…… でも、ミリアのほうが柔らかくて優しく包み込まれるような……」
柔らかい物体がロッソの顔に押し付けられ、菓子のような甘くいい匂いが漂い。彼は感触と匂いに酔いしれる……
「ギャー! 誰だ俺の尻を蹴ったやつ!」
ロッソが声をあげ、尻をおさえて飛び上がるとナディアが驚いて彼から離れた。振り返ったロッソの目の前には冷たい目をした、シャロとリーシャとミリアが立っていた。
「おにいちゃん…… この変態!」
「旦那しゃん何してるですか」
「不潔です……」
「いやこれは!? その……」
三人はロッソを冷たく睨みつける。不意にとびつかれた彼は被害者だと目で訴えるが、三人は相手にしないのだった。
ナディアは立ち上がって白い歯を出してニッコリと笑う。笑った時に出る八重歯がとてもキュートだ。
「こらナディア! ロッソ! ごめんねぇ。図体は大きいけどまだ子供だからね」
「子供って…… ナディアはいくつなの?」
「うーんと……」
指を顎に置いて上をむきナディアが考えている。
「イチ…… ニィ…… サン」
体の前に両手を持って行き、ナディアは指をおって数を数え始めた。
「えっ!? もう三十を超えて……」
ナディアは何度も両手の指をまげていて明らかに五十以上の数字を数えていく。百を超え両手の指を全部折った彼女は数えるの止めにこっと笑いロッソに答える。
「えっっとね。ナディアは百十歳だよ!」
「百十歳って!? それでまだ子供なの?」
「違うよ! 子供じゃないからね。もうすぐ大人だから! あとたったの九十年で大人だもん!」
「いやぁ。たったの九十年って…… まぁそうか。ナディアは魔族だもんな」
ロッソはナディアが魔族だと認識すると納得したようにうなずく。魔族は千年以上寿命があると言われ、成長が人間と同じではない。
「ははっ…… 俺が生きてる間はナディアはずっと子供なんだな」
「だから違うもん! 子供じゃないもん!! プクーーーー!!」
子供と言われたナディアは、不機嫌そうに頬を膨らませロッソを睨むのだった。彼はリーシャが一人増えたみたいだと笑うのだった。
メディナが笑いながらロッソたちに教えてくれた。部族によって多少違うが、魔族は二百歳で成人して一人立ちらしい。ちなみにメディナは三百三十歳でグアルディアは三百三十二歳だという。
「ほら! さっさと家に入りな。ご飯にするからね」
「うわーい。ママのご飯大好きー!」
「ありがとうございます! さっ行きましょう。ロッソ、シャロちゃん、リーシャちゃん」
メディアが家に向かって歩きながら、ロッソたちに振り返り大きな声をだし家に入るようにうながす。食事と聞いて、ナディアとリーシャとミリアが嬉しそうにメディアについていく。
シャロはみんなと違いうつむいて少し震えていた。
「どうした? シャロ? 腹でも壊してるのか?」
「いや…… 魔族のご飯って…… 蛇やトカゲ焼いたのとか…… 芋虫とかじゃないわよね」
「あのなぁ。人間が食べられるものを出してくれるとは思うぞ。それにごちそうになるんだから文句は言うなよ」
「わかってるわよ。でも……」
ロッソとシャロの会話が聞こえていたようで、メディアが横目で二人を見た。シャロはメディナと目が合い気まずくて目をそらす。
「嫌ならシャロは食べなくていいよ」
「もったいない! ママのご飯は人間にも好評なんだよ!」
「じゃあ、わたくしがシャロの分もらいます」
「ミリアずるいです! リーシャももらうです」
ミリアとリーシャがシャロの分をどちらが食べるかでもめている。すると…… ぐぅというシャロの腹が鳴る音が響く。恥ずかしそうにシャロは頬を赤くして腹を抑える。
「あっ! ちょっと待って! 食べる。食べますって! ごめなさーい!」
シャロは必死にメディナに謝るのだった。メディナはやれやれと言った顔をして笑っていた。
その後…… 出てきた夕飯はシャロの予想した通りに、蛇のスープにトカゲのステーキに芋虫のサラダだった…… 食卓に出てきた時にシャロは顔をしかめていた。しかし、メディナが言った通り料理のすべてが美味かった。蛇の体が浮かんだトマトスープは、コショウの効いて酸味があってやや甘いトマトスープとよく合う、鱗のついたトカゲ肉は遠火でこんがり焼かれ強め塩で味付けされた肉は、舌触りと歯ごたえがよく強い塩気が肉の油とマッチしいくらでも食べられた。ゆでた芋虫と野菜が混ぜられサラダは、木の実で作られた酸味の強いドレッシングがかかっており食べるごとに食欲が増していく。
最初は嫌がっていたシャロだったが、料理を一口食べると美味しい美味しいと言ってあっという間に平らげていた。




