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勇者を守った男は成り下がり少女を守る ~護衛と踊り子の兄妹、歌って踊って傷ついた世界を癒せ!~  作者: ネコ軍団
第2章 空中劇場への招待

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第45話 ジャハル村

 ロッソたちが森に入り半日が経過し、日が傾きかけて来ていた。

 森に入ってすぐにウォーウルフと遭遇した、以降は時折魔物や動物を遠目に見かけるが、こちらを襲ってくるわけでもなく平和に馬車は進んでいた。


「そろそろ村が近いようだな」


 荷台の後ろの幌から顔をだし、道を眺めてつぶやくロッソだった。

 黒霧の森に入った直後は、雑草が生えて石などが転がってい馬車が揺れていた道が、綺麗に雑草が抜かれて石などが取り除かれて綺麗な道になっていた。これは人や物も往来がある証拠だ。さらにしばらくいくと森の木の上に飯炊きか鍛冶屋の火なのか煙が見えて来る。

 ミリアとシャロと馬車の荷台に残してロッソはリーシャの隣へと移動した。


「お花さんです」


 リーシャが道の端を指さした。道の両脇に鉢植えが置かれて綺麗な花が並んでいる。


「あれは…… 薬草に毒消し…… 後はしびれ薬に使える花や毒もあるな」


 鉢植えを見つめるロッソ。両脇に置かれた鉢に植えられた植物は、村に迎える人を楽しませるというより実用的な物が多かった。


「ついたか」


 花の道の先に大きな石垣と門が見えた来た。あれが魔族を治療できる医者が居る村ジャハルだ。


「止まれ!」


 馬車が村の門に近づくと大きな叫び声した。リーシャは門の手前五メートルくらいで馬車を止めた。

 壁の上にいるのは人間とオークだった。大きな石が積まれた壁に木製の屋根がついたやぐらの上から、オークと人間が並んでロッソたちに向けて弓を構えている。


「ここは全ての種族が共に暮らす村ジャハルだ。なんのようだ」

「回復が必要な魔族がいるんだ。医者のドルボンに会わせてくれ!」

「お前たちのどこに魔族がいるんだ?」


 人間がロッソを睨み矢を向ける。彼らから見えるのは馬車に乗った大きな人間と猫耳の獣人リーシャだけだ。

 

「えっ!? そうか…… ほらよ」


 ロッソは自分の鞄から、グアルディアの灰が入った瓶を取り出し、壁の上のオークと人間に見せた。しかし、瓶を見た彼らは眉間にシワをよせロッソを睨み弓の弦を強く引き絞る。


「貴様! その瓶のどこが魔族だ!」

「えっ!? あぁ。普通にただの灰だもんな。違うんだよ。これがグアルディアって魔族の灰でこれに魂が……」

「グアルディア!?」


 オークと人間はグアルディアの名前を聞くと驚いて表情が変わった。弓を下した二人は顔を見合わせ、何やら小声て話し始めた。


「わかった。ちょっと待ってろ!」


 人間がロッソたちを待てと言い姿を消した。オークは弓の持ったままロッソたちを見つめている。人間が城壁を下りて確認に走っていったようだ。

 数分後に人間が戻ってきてロッソたちに向かって叫ぶ。


「よーし! 門を開けるから入っていいぞ。村の中は馬車は使えないから門を入ったとこに停めるんだ!」


 ロッソはホッと安堵の表情を浮かべる。門がゆっくりと開いていく。


「じゃあ。行こうか。リーシャ」

「はいです」


 リーシャが手綱で馬に指示を送り、馬車を村の中へと進ませるのであった。


「へぇ。人間の村とあんまり変わらないんだな」


 門をくぐり、ジャハル村の中に入ったロッソは物珍しそうに村を眺めていた。ジャハル村の中は人間の村と変わらず、石と木でできた家が並んでいるのどかな普通の村だった。

 村に入ってすぐの広い場所にリーシャが馬車を停めた。ロッソたちが馬車を降りると来訪者が珍しいのか、魔族や人間といった村の住人たちが彼らをじっと見ていた。


「さて、とりあえずは中に入れたな。さっさとドルボンを探さないとな…… 長居をすると殺されそうだ」


 頭に角の生えた骸骨顔の人型の魔物たちがロッソとミリアさんを見つめている。角と顔の形から彼らは魔族であることがロッソにはわかった。勇者パーティとして魔王軍との戦争に参加した、ロッソとミリアには魔族に恨まれる理由は無数にある。


「ねぇ!? あの人たちおにいちゃんとミリアのことを睨んでるわね」


 心配そうにシャロがロッソの袖をつかんでくる。ロッソは彼女に振り向いて小さくうなずく。


「あぁお。俺とミリアには魔族に恨まれる理由がなんか掃いて捨てるほどあるからな」

「そうですわね…… 元勇者キースパーティですから魔族は何人も殺してます」

「あぁ。でも…… 俺たちの仲間も奴らに何人も殺されたけどな」


 ロッソたちにむかってゆっくりと魔族の一人が近づいてくる。

 細く伸びた指の先から鋭い爪を立てて目が赤くひかり、明らかな殺意を俺とミリアに向けている。


「チッ! こいよ。やるならやってやるよ」


 魔族を見ながらロッソは背中に背負った守護者大剣ガーディアンクレイモアに手をかける。

 村の中で騒ぎは起こすのは本望ではないが、彼はシャロたちを守る護衛(ボディガード)だ武器を向けて来る者を見逃すことはできない。

 ゆっくりと近づいてくる魔族とロッソの間に緊張が走った。


「くぉらー! あんた達なにしてんだい!」

「うわ!」


 丸い体型をした二メートルくらいの大きな魔族の女性が叫びながら走って来た。魔族はもじゃもじゃした毛が全身に生えて、羊のような丸まった二本の角を生やしている。顔は鼻が羊用になっているが他は人間に近く丸い目に緑の瞳をして中年のおばちゃんのようだ。黒のスカートと白いシャツを着て体型と角以外はほとんど人間と変わらない。ロッソへと迫っていた魔族は、彼女の叫びごえに怯えたように声をだす。


「そっ村長!? いえ何も……」

「そうかい…… ここでは人間も魔族もないってわかってるね?」

「はっはい……」

「わかってるならもう行きな!」


 村長と呼ばれた女性に魔族に凄まれると、ロッソたちに近づいて来た魔族はすごむと背中を向けて村の奥へと引っ込んでいくのだった。

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