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勇者を守った男は成り下がり少女を守る ~護衛と踊り子の兄妹、歌って踊って傷ついた世界を癒せ!~  作者: ネコ軍団
第1章 集う仲間たち

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第40話 護衛は音楽で強くなる

 リーシャの口から放たれた精霊の歌の衝撃波がアンナを襲う。


「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」


先ほどとは比べ物にならないほど、速度は上がりうなりを挙げる衝撃波に、アンナは避けることもできずに吹き飛ばされて尻もちをついた。


「なっ何でよ!? さっきと…… 違う…… あんた一体?」


 尻もちをついたまま信じられないという顔で、アンナはリーシャを見つめていた。


「へへへ! ミリアしゃんのおかげでお歌が元気になったです!」


 ミリアさんの演奏で歌が元気になったと喜ぶリーシャだった。腰に手を置き胸を張ったリーシャは、自慢げに勝ち誇った顔で鼻で息をするのだった。ロッソは呆然と喜ぶリーシャを見つめていた。


「なっ!? なによ歌が元気にって…… 本当に生意気なガキね!」


 手をついて起き上がり、アンナはリーシャに向けて駆けだした。


「ふふふ。無駄よ!!!」

「シャッシャロ!?」


 両腕をあげて内側に少しまげ、手のひら返す仕草を繰り返しながら、シャロはミリアの音に合わせてガニ股でステップを踏みリーシャの前へと出た。


「えっ!? なんだ……」


 剣を構えたロッソにシャロは振り返り、ほほ笑んでそこに止まるように手で合図した。ロッソにほほ笑む彼女の顔は自信に満ち溢れていた。ロッソは前に出るのを止めシャロに従う。


「あっそーれ! アンナ! ほらほあら見てないであなたも踊りましょうよ」


 明るい声でシャロは、アンナに手を向けて踊りに誘う。シャロの姿にアンナは歯を食いしばって短剣を構えた。


「何よ! あんたまでバカにするの…… 絶対にぶっ殺して…… あれ!?」

「ほら! ほら! ほぉら! 踊りなさい!」


 アンナの手足が震えだし、何かに耐えているのか彼女は苦しい表情へと変わった。変わらずにシャロは笑いながら楽しそうに小さくステップを刻み踊り続ける。


「なっ何よ!? なんで体が…… 勝手に!? どうしてよ?」

「あっ! それそれ! ほらほら! 見てるだけなんてもったないわよ!」


 掛け声をかけてシャロの手の動きや足の動きのキレがましていく。ミリアの音楽に乗りシャロの踊りが冴えわたる。


「なっなんでよ! 何でなのよ!!!」


 悔しそうな顔してアンナが、腕をシャロと同じようにあげてやや内側に曲げて、短剣を持ったまま手をまわしている。さらにアンナはシャロのようにガニ股になってステップを踏み始めた。彼女の手の動きで短剣がぶつかり合ってキンキンという金属音が部屋に響く。


「踊っている…… アンナがシャロの踊りを真似て踊っている……」


 シャロに釣られて踊るアンナを驚いて見つめるロッソだった。悔しそうにアンナはシャロを睨みつける。


「何よこれ!!! あんたやめなさい! 早く!!」

「フフ…… あたしの誘惑之舞(インフェクシャス)よ! ほーらもっと踊りなさい!」


 ミリアさんの音楽がさらに激しくなる。調子が出てきたシャロの踊りはキレキレになっていく。気を付けていないと見ているロッソもシャロと一緒に踊りたい衝動に流されてしまう。

 アンナはシャロの動きに合わせて、彼女と同じように踊りのキレがましていく。悔しそうな顔でアンナは踊らされて続けてく。


「はぁはぁ…… 何よ! やめろよ! クソ!!!」


 激しくなっていくシャロの踊りに、アンナの息が徐々に乱れてくる。シャロは踊りながらロッソを見た。


「おにいちゃん! そろそろいいわよ。やっちゃって!」

「えっ!? おう! 任せろ!」


 アンナを指して叫ぶシャロ、うなずいたロッソは守護者大剣ガーディアンクレイモアを両手に持って構えるとアンナに向かっていく。


「アンナ! 覚悟しろ!」

「はぁはぁ…… なによ! のろまのロッソが調子に乗るんじゃねぇぇぇぇ!」

「えっ!? お前…… なにを!?」


 アンナが叫びながら気力を振り絞って、自分の右手に持った短剣大地振動剣(グランドシェイク)で自分の太ももを切りつけた。彼女の太ももは十センチほどバックリと切られ血が流れだした。

 踊らされていたアンナが太ももをさし、解放されたのかその場にへたりこんだ。


「ふぅ…… これで…… あんたなんかに負けない……」


 膝に手をつきながら顔をあげ、ロッソを睨みつけると起き上がったアンナは、腰を落として短剣を両手に持ち駆けだした。猛スピードでロッソのとの距離をつめたアンナは彼の目の前で飛びかかって来た。


「チッ うん…… え!? あっあれ!?」


 驚いた顔をするロッソ、先ほどまで反応するのがやっとだった、アンナの動きが手に取るように見えるようになったのだ。驚いているロッソを見たアンナはにやりと笑い、狙いすまして右手に持った大地振動剣(グランドシェイカー)を振り下ろした。


「なっ!?」


 ロッソはいとも簡単に守護者大剣ガーディアンクレイモアを横にして、振り下ろされたアンナの短剣を受けと止めた。天井から砂埃が舞い落ちロッソたちに振りかかる、短剣の効果で地面が揺れたようだが今のロッソは平然としていた。


「ほらよ!」

「キャア!!!」


 両手に軽く力を込めたロッソが、守護者大剣ガーディアンクレイモアを押す。短剣を押し返されたアンナは右手を弾かれ体がのけぞり倒れそうになる。


「クソが!!!!!」


 アンナはなんとかその場に踏ん張り、今度は左手に持つ夕闇の嵐剣(トワイライトストーム)で横からロッソを斬りつける。


「大丈夫だ……」


 うなずいたロッソは素早く守護者大剣ガーディアンクレイモアを体の右へと持って行った。剣を垂直に立て両手を腰の辺りに降ろしたロッソ、横から飛んで来たアンナの夕闇の嵐剣(トワイライトストーム)をロッソの大剣は受け止めた。ガキーンと大きな音がして大剣越しにロッソとアンナと目があう。

 直後に夕闇嵐の剣(トワイライトストーム)の能力で風が巻き起こるが、ロッソは踏ん張って風を耐える。


「すげえ…… 力がみなぎってくる」


 笑顔でうなずくロッソ、彼から剣越しに見えるアンナの顔は青ざめて慌てていた。


「なっなんでよ!? あんたあの怪我で動けるわけ…… しかも風も……」

「さぁな。なんでだろうな!? 俺も不思議だよ!」

「キャアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」


 ロッソが両手に力を込め再びアンナを押し返した。すると彼女は姫地をあげ吹き飛んでいった。アンナは空中で体勢を立て直して着地した。アンナは着地して立ったまま両手を下しうつむいていた。


「終わりだな。アンナ!」


 右腕を伸ばし大剣の切っ先をアンナへ向け叫ぶロッソだった。


「黙れ! 黙れ! 黙れ! 黙れ! 黙れ! 黙れ! 黙れ! 黙れ! 黙れ! 黙れ! 黙れ! 黙れ!黙れ! 黙れ! 黙れ! 黙れ!黙れ! 黙れ! 黙れ! 黙れ!黙れ! 黙れ! 黙れ! 黙れ!黙れ! 黙れ! 黙れ! 黙れーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!! 誰に向かって口を聞いてるのよ! のろまのロッソ!!!!!!!!!!!!!!!」


 叫びながら顔をあげたアンナ、彼女の眉間にシワをよせ目を吊り上げた、今にも怒りで爆発しそうなものすごい形相でロッソを睨みけた。怒りの形相のまま彼女は短剣を持った両手を後ろにし、前傾姿勢で忍者のようには走りってロッソへ向かって走りだした。


「のろまのロッソーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 死ねぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 怒鳴りながら近づいて来るアンナをジッと見つめたロッソは、両手で守護者大剣ガーディアンクレイモアを持ち構える。彼はアンナが駆けてくるタイミングを合わせ、守護者大剣ガーディアンクレイモアを横から繰り出した。


「なっ!?」


 大剣が横から飛んで来たの見切った、アンナは体勢を低くして彼の剣をかわした。ブォっという音がしてロッソの大剣は空を斬った。大剣を振り切りがら空きなった、ロッソの腹をめがけて、右手をひいたアンナは飛び上がるようにして鋭く突く。


「だから言ってるでしょ? のろまのロッソ…… えっ!?」


 体をひねりながら前にでてロッソはアンナ突きを何とかかわした。素早く攻撃をさけたロッソにアンナが信じられないという表情をした。


「くらえ!!!」


 ロッソ前に出て体を入れ替えるようにし、アンナの背後へと回り込んだ。彼は即座に振り向き彼女の背中を剣を返して斬りつけた。アンナもロッソに反応し体を素早く反転させ、両手をクロスしてロッソの大剣の一撃を二本の短剣で受け止めた。


「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 ロッソの大剣とアンナの短剣がぶつかり、大きな音が部屋に響き渡った。アンナは悲鳴と共に吹き飛ばされてほうぶ祭壇へ向かっていった。何かが爆発したようなドーーーンという音がし、祭壇の上にあった椅子を吹き飛ばし彼女は奥の壁に叩きつけられた。丸く壁がへこみはりつけにされたように両腕と両足を広げたアンナが壁にめりこんでいた。


「おいおい。そんなじゃ死なないだろ?」


 左手で手招きするロッソだった。アンナは苦痛と怒りで顔がゆがませながら、ゆっくりと壁から下り祭壇の上に立ち悔しそうにロッソを見ていた。ロッソは追撃するためにもう一度剣を構えて駆けだす。


「すごい…… 体が本当に軽い。まるで俺じゃないみたいだ」


 ミリアの音楽に乗ったロッソの足取りは軽く思わず顔がほころぶ。駆けていくロッソにミリアの音楽に合わせてリーシャが歌いシャロが踊っているのが見えた。楽しそうに踊り歌い音楽を奏でるシャロたちの音楽にロッソは乗せられていた。音楽に疎いロッソだったが、シャロ踊りとリーシャの歌を大きく力強くしているはミリアの演奏だということは分かった。


「なっなんでよ!!!!!!!!! のろまのロッソが!!!!!!!!!!!!! わっ私より強いわけ……」


 声を震わせるアンナ、勇者パーティの時に見下していたロッソに、倒されるがよほど悔しいようだ。ロッソとの戦闘で蓄積されたダメージと、頭を揺さぶるシャロたちの音楽にアンナは身動きが取れなかった。


「終わりだ! アンナ!」

「ちっちきっしょーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「チッ! アルティミシア様!!!」


 アンナがアルティミシアへと夕闇の嵐剣(トワイライトストーム)を投げた。ロッソは攻撃をやめすぐに大剣に闘気を送り込み大きな魔法障壁を展開した

 魔法障壁に短剣がぶつかって床へと落ちた。大きな突風が起こり障壁になんどもぶつかった。


「よっよくもやってくれたわね…… 覚えてなさいよ……」


 ガラスが割れる甲高い音が部屋に響いた。アルティミシアを攻撃してできた隙に、アンナは祭壇からステンドグラスに体当たりして割って外へと飛び出していった。ロッソは風がおさまってから、魔法障壁を消し追いかけたがアンナの姿は外の作業場にはなかった。


「こっちもいないか……」


 塔の作業場のヘリから下を覗き見たロッソだったが、そこにもアンナの姿はなかった。

 

「しかし…… キースが生きて…… クソ!」


 悔しそうにロッソは左で拳を握るのだった。ロッソは静かに塔の中へと歩いて戻っていった。


「ふぅ…… なんとかみんな無事でよかったな…… あれ!?」


 扉を開けて残念そうにするロッソだった。塔に戻ったロッソの耳に音楽は届かなかった。シャロたちの演奏は終わったようだ。


「うわ! なっなんだ!? 何が!?」


 視界が急に真っ暗になって慌てるロッソ、柔らかい感触といい匂いが顔を包み込む。

 

「ロッソさーん! すごいです! 本当にあなたって人は……」

「えっ!? あぁ…… ふぅ……」


 ミリアの声がロッソの耳に届く。疲れていた彼は弾力がある柔らかい感触といい匂い包まれて、そのまま意識が飛んで眠ってしまいそうになっていた。


「こら! おにいちゃん! 何やってんのよ!」

「旦那しゃん! 離れるです! メーです!」

「ミリア! あなた何してるの! はしたない離れなさい」

「わっわっ! 押さないで! 倒れる!」


 シャロとリーシャの声がしてロッソは正面から押される。


「うわ!」

「「「キャー!」」」


 押されたバランスが崩したロッソは倒れた。

 

「もう…… いつまで目の前が見えないのが悪いんだな」


 真っ暗で目の前に覆いかぶさっている物を、どかそうとロッソは手を伸ばす。


「えっ!? みっミリアさん!?


 手を伸ばして目の前に物体をどかすと、目の前にミリアが居た。そして彼女の視線は下にむけていた、ロッソは彼女の視線を追って自分の視線を下へ…… 下に向かったロッソ目は彼女の胸の上に行きあたった。

 ミリアさんの胸の上に置いてあるのはロッソの手だった。ロッソの手はミリアの胸を両手でわしづかみにしていた。


「ははは…… そんな馬鹿な…… きっと夢だよな」


 訳も分からず混乱したロッソは、なぜか何度も指を閉じたり開いたりしミリアの胸を揉む。ミリアはそんなロッソを見て優しく微笑んでいた。


「もう…… 意外と…… 積極的なんですね」

「えっ!? あのこれは!?」

「フフ…… この甘えん坊さん……」


 ほほを赤くしてほほ笑みながら、少し恥ずかしそうにミリアが声をだした。目を潤ませてロッソのおでこに指を置いてメッって口を動かすミリアだった。恥ずかしそうに頬を真っ赤にするロッソだった。しかし、彼の幸せの時間は即座に終わろうとしていた。


「このバカ兄貴!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「ぐへええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 シャロの怒号が聞こえて硬い何かがロッソの頬へめり込んだ。大きな衝撃受けたロッソは気を失うのであった。

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