第39話 轟け! 元気になる音
リーシャの頭を軽く撫でたミリアは、彼女にほほ笑み立ち上がった。真剣な顔で鞄に手を入れてアンナに向かって歩き出す。
「ミリア!? あなた一体何をするつもりですか? 下がりなさい!」
「大丈夫ですよ。アルティミシア様! わたくしにお任せください」
やや早足でミリアはアルティミシアよりも前に出た。驚いたアルティミシアが、ミリアを呼び止めたが彼女は振り向いてにっこりと笑顔を向けて頭をさげた。
「なーに? あんたの魔法なんか私には効かないのよ。さっきわかったでしょ?」
前に出てきたミリアを見たアンナは立ち止まり、馬鹿にしたような口調で話しかける。
だが、ミリアは彼女の声を無視して、アンナの少し手前で両手を鞄に手を入れたまま歩いてく。ゆっくりとまずは左手を鞄からだすとミリアさんの鞄から彼女のリュートがでてきた。
何が出てくるのか心配していたのか、アンナは鞄の中から出てきたリュートに少し安心した表情をしていた。
「ふふ…… なに? リュート…… ははっ! 命乞いの音楽でも弾くの? 無駄よ…… でも、本当に馬鹿よね。あんたの大好きキースはあんたのこと利用してただけなのに」
「なっ!? わたくしを利用していたですって?」
「そうよ。あんたを連れていればここ聖都アクアリンドを利用する時に役に立つから仲間にしただけよ。どう? 好きな人に裏切られていたなんて?」
「そうですか…… でも…… 勘違いしないでくださる?」
アンナへミリアは真面目な顔をして毅然と言い返した。さっそうと鞄から出したリュートを構えたミリアがアンナをジッと睨む。素早く自身に満ち溢れた顔で、調整のためなのか彼女は右手の指を弦の上を滑らせた。弦が振動しわずかなリュートの音色が周囲の空気を震わせる。音を聞いたアンナが顔をしかめた。
ロッソの横にいたリーシャとシャロ顔を上げて目を輝かせている。
「何!? それ…… なめてるの?」
「ふふ、わたくしの音色にひれ伏しなさい。後…… 言っておきますけど! わたくし別にキース様をお慕いなどしておりませんわ。わたしくはアルティミシア様の命令で彼に付き合っていただけ……」
「なっ!? 何を…… えっ!?」
ミリアの言葉にアンナが驚いている。アンナの反応を見て、ニヤッと笑ったミリアのゆっくりとそしてしなやかに動いた。リュートから今度は優しい音が響きわたり、部屋を優しさで満たしていく。
「もう一回言いましょうか? わたくしはキース様のような人をどこか見下した人はお慕いしませんわ。むしろ…… 大っ嫌い!!!!!!!! そうキースの野郎は大っ嫌いだったのよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
音に合わせてミリアさんの体が、ゆっくりと揺れて段々と激しくなっていく。
どこか懐かしく耳に残るやや甲高いゆらめく音色が響く。体を前後に揺らしながらひくミリアの力強い音色に戦闘中だと言うことを忘れるくらいみな聞きほれてしまう。わずかにいつものミリアの演奏に比べ、力強くやや激しい。
「ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!
アンナが叫び声をあげた。彼女は両耳を押さえてしゃがみこんでしまった。
「何よこれ!? 不快…… 不快なのよ! ミリア! あんた今すぐやめなさいよ!」
さきほどまでの殺伐とした雰囲気が消え、アルティミシアの顔が一気に空気が明るくなる。
「あっあれ!? アルティミシア様…… そういえば…… 俺もなんだかミリアさんの音を聞いてから体の痛みが和らいでる気が……」
ロッソの体から痛みが消え、彼の表情も自然と和らいでいた。逆に鳴り響くリュートの音にアンナは耳をふさぐ苦しそうにもがいていた。ものすごく不快な表情で演奏するミリアをアンナは見つめていた。
アンナの様子にロッソは首をかしげていた。確かに普段のミリアの音色に比べ、音は高くてさらに大きく迫力はあるが耳をふさぐほど不快ではなかった。
「本当に何なのよ! この不快な音は…… もういいわ! もう手加減なんかしない! 全員ぶっ殺しててやる!」
耳をふさいでいたアンナが怖い顔で叫びながら立ち上がった。彼女は首を激しく横に振って音を振り払うようにして、何とか体勢を立て直してミリアに向かって駆けだす。
「リーシャちゃん! 今よ! 歌うのよ! シャロちゃんは踊りなさい! わたくしの音に乗るのよ!」
「わかったわ。行くわよ。リーシャ!」
「いくでーーーーす!」
手を挙げてリーシャが元気よく返事をする。アンナが眉間にシワを寄せてリーシャを睨んだ。ミリアからアンナはリーシャに標的をかえ方向を変えた。
「おっと!」
ロッソはリーシャとシャロの間に立って、守護者大剣に闘気を送り魔法障壁を展開する。
「へっ!? ガキどもが調子に乗るんじゃないわよ。何度やっても無駄よ……」
アンナのつぶやきを無視し、リーシャはスーッと大きく息を吸い込む。アンナの攻撃に備えてロッソは守護者大剣に闘気を送んでいく……・
「吹き抜ける風!!!!!!!」
ブワーーーっというすさまじい大きな風がロッソの横を、ものすごい速さでうねりながら突き抜けていった。激しい風にロッソは吹き飛ばされそうになり必死に踏ん張った。
「なっなんだ今の……」
今まで体感したことない激しい風に言葉を失い、振り向いてロッソがつぶやくのだった。




