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勇者を守った男は成り下がり少女を守る ~護衛と踊り子の兄妹、歌って踊って傷ついた世界を癒せ!~  作者: ネコ軍団
第1章 集う仲間たち

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第38話 ディーバは切り札を知ってる

 ぼやけた視界で背中しか見えない何者かがロッソをかばうようにアンナの前に立つ。その気品あふれる雰囲気にロッソはすぐに誰かが分かり声をあげた。


「ダメだ…… 逃げろ!」

「アンナさん! おやめなさい!」


 倒れたロッソの前に立ったのはアルティミシアだ。彼女はロッソがうずくまっているすぐ前で両手を広げて向かってくるアンナに立ちふさがるのだった。

 突然、現れたアルティミシアに驚いたのか、ロッソに向かってきていたアンナは、アルティミシアの手前で足を止めた。


「ロッソさん! 大丈夫ですか? ミリア! 早くロッソさんの治療を!」

「はっはい……」


 アルティミシアの指示をうけたミリアが、ロッソの元へと駆けつけて、すぐに彼に魔法をかけて治療する。しかし、悠長に回復してる暇はないことはロッソはわかっていた。彼は必死に背中の痛みに耐えて立ち上がろうとした。


「もう十分でしょう? アンナさん! こんなことはやめてください」


 真剣な表情でアンナをまっすぐと見つめ、アルティミシアが彼女に問いかける。


「何言ってるの? いやに決まってんじゃん! あたしの仕事はあんた達には全員に死んでもらうことなの。もちろんアルティミシア…… あたなもね。あなたを殺して犯人は元勇者パーティのロッソとミリアって筋書きはどうかしら?」

「わたくしを殺して罪をロッソさんとミリアに!? 何をいってるんですか! そんなのバチが当たりますよ!」

「フン…… バチがあたるですって? 別に神様の罰なんかこわくないわよ」


 アンナはアルティミシアの問いに鼻で笑って小ばかにする。アンナは笑顔だったが、彼女の殺気に満ちた鋭い目がアルティミシアを見つめていた。


「どうやら聖女様のありがたいお説教は終わりみたいね。ねぇ。のろまのロッソ! あんたの剣を貸してよ……」

「お待ちなさい! まだ話は終わってません! おやめなさい」

「うるっさいわねぇ。さっさとロッソ…… もういいわ。あんたを殺して勝手に剣を使うわ。その剣で斬ればアルティミシアを殺したのあんたになるでしょ」


 止めるアルティミシアを無視し、笑いながらアンナはゆっくりとロッソに向かって歩きだす。


「ロッソさん!? ダメです! まだ傷が!」

「いえ…… もう平気です…… ありがとうございます……」


 ミリアの治療の途中でロッソは、守護者大剣ガーディアンクレイモアの剣先を床につけ杖代わりにして立ち上がった。


「よし…… これならもう少し戦える」


 小さくうなずくロッソ、中途半端な治療になって背中は傷みはあるが、足に力は入っ何とか立ち上がって歩けそうだ。ロッソは足を引きずりながら一歩ずつ前に出る。

 ロッソが歩きだし気配に気づいた。アルティミシアは彼の前に立って両手を広げたまま振り返った。


「ロッソさん…… ダメです。あなたは……」

「でも、アルティミシア様…… あなたを巻き込むわけには…… あなたにはまだ導かなければならない人がここ聖都アクアリンドにいるはずです」

「ダメです! あなたをここで失う訳にはいかないのですよ! ミリア! 彼を連れて逃げなさい。ここは私が……」


 必死に両手を広げ、表情をきつくして強くアルティミシアがミリアに叫ぶ。


「俺を失う訳にはいかないって……」


 勇者でもなくただの踊り子の護衛である、自分を守ろうとする聖女アルティミシアに驚いて呆然とするロッソだった。ミリアはアルティミシアの言うことを聞いていいのか困惑していた。


「ふっ…… 俺はただの護衛(ボディガード)で何でもないですよ。あなたこそ…… 聖都アクアリンドを束ねる人じゃないですか……だからアンナにあなたを殺させるわけにはいかないんですよ!!!!」


 ロッソはフラフラと倒れそうになりながら、アンナに向かって歩き出そうと一歩踏み出した。


「なっなんですか!? 邪魔をしないでください!」


 前に歩こうとしたロッソの袖をミリアさんが掴んで止めた。ミリアはアルティミシアの命令を聞くか悩んだのか、彼女の袖を掴む力は弱々しくいつでも外れるくらいの力だった。目に涙を浮かべてロッソの顔を見つめる。ロッソは泣きそうなミリアに困った顔をする。


「大丈夫だ……」


 必死に笑顔を作り答えるロッソだった。今のままではアンナには到底かてないことは彼はわかっている。だが、ロッソはシャロとリーシ、それにミリアやアルティミシアを命に代えても守らなければならない。そうそれが護衛(ボディガード)としての彼の使命なのだ。

 ロッソに振り切られたミリアが、彼に追いすがろうとした、しかしその直後……


「えっ!?」


 駆け寄ってきたリーシャがミリアのスカートをつかんで引っ張った。ミリアは驚き慌ててリーシャに顔を向けた。ミリアと目があったリーシャはにっこりと微笑んだ。


「ミリアさん! リュートを持ってるですか?」

「リーシャちゃん? 何を急に!? 今はそんな場合じゃ……」

「すぐに弾いて欲しいです。リーシャはミリアさんのリュートで歌うと力がでるです…… お願いです」


 シャロがリーシャの元に駆け寄り、ミリアから彼女を引き離そうとする。だが、リーシャはミリアの袖を強くつかんで離さない。ロッソは逃げないリーシャに少しイラつき彼女に口を開く。


「リーシャ! 今は演奏とかしてる場合じゃないからシャロと逃げなさい。俺は大丈夫だから! シャロ! リーシャを頼む……」

「違うんです。ミリアさんの音を聞けば力が出るんです! ミリアさんの音には悪いのを倒す力があるです! お願いです! リュートを弾いてください。シャロもきっとそうです! わかるですよね?」

「えっ!? そうね…… 確かにミリアさんの音には何か勇気づけられるって……」


 シャロがリーシャの言葉に感化されうなずく。ロッソは現状を見れない二人に声を荒らげるのだった。


「うるさい! 二人とも! わがまま言うな! 早く逃げろ!」


 怒鳴られたリーシャは悲し気にうつむき。隣にいたシャロもしょんぼりと悲し気にリーシャの手を握っていた。ミリアはアンナの顔を見ながら何やら考えていた。そしてミリアは静かにしゃがんでリーシャをまっすぐとみつめるのだった。

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