第27話 精霊の歌
頭に花飾りをつけた薄いピンク色のドレスを着たリーシャだった。彼女のドレスの裾は長く二十センチほど床に裾を引きずながら歩いている。緊張しているのか背筋をピンと伸ばしたリーシャが、祭壇の中央の手前で立ち止まる。彼女に続いて酒場で普段から、演奏をしてる演奏者が舞台に現われる。
ニコッと笑ってリーシャがドレスの裾を持ち持ち上げ頭を下げる。チラッとロッソの方を見たリーシャに彼は笑ってうなずく。少し頬を赤らめ恥ずかしそうに笑ったリーシャが右手をあげた。演奏者たちが楽器を持って演奏を開始する。リーシャが歌うのは”日暮れまで一緒に”というこの地方の結婚式でよく歌われる歌だった。
"etunc quper affendicellum cleavarm abb ueno oome gaudiurim"
(ここから巡り合う人たちに喜びの歌を )
"eacee go mittio aad courmanere obeedistens. exehoc lococo"
(あなたの素直な心を届けよう。今日この日この場所で)
"Vonvo direrce cardlme affecenntes esstibem vererevo coundus"
(ささやかな毎日あなたの想い、寄り添い紡ぐ)
"iner risume ali quiisis mihihi"
(横に君の笑顔 )
"is quoquertum,ult hunccen atqueilus in tegerbea tintudon"
(幸せな日々どこまでも二人綴っていこう)
力強く軽やかなリーシャの歌声が響く。声量は衰えることなく、最後の一小節まできっちりとリーシャは歌い上げていく。コルツォーネはリーシャの歌声にうっとりとし、聞きほれた彼はシャロの意識がわずかに薄れる。歌は終盤にさしかかったころ、リーシャがコルツォーネとシャロに視線を向けた。ロッソとシャロはこっそりと耳をふさぐ。歌は最終節に差し掛かり
「吹き抜ける風!!!!!」
平原の先まで通り抜けていくような。大きな声で歌をリーシャが歌い上げた。参列者たちはその声量にみな驚くが準備をしていたシャロとロッソだけは平気だった。
最後の歌詞がリーシャからはなたれると、彼女の声はコルツォーネへと伸びていく。歌は空気を震わせながらも猛スピードでロッソの横を通り過ぎていった。その圧倒的に声量にぶつかった、コルツォーネが尻もちをついた。大きな歌声にコルツォーネの部下たちも慌てて耳を押さえうずくまるのだった。
驚いたコルツォーネはシャロに向かって起こしてくれるように手をだした。ロッソは舞台へ上りリーシャの元へと駆けていく。シャロはコルツォーネの手をはたきニヤッと笑った。
「子供の声に驚くなんて情けない男…… やっぱり結婚やーめた!」
「なっ!? 待て!」
「やーだよ! おにいちゃん! こいつやっつけちゃって!」
「おう!」
シャロが笑顔でロッソの元へと走っていった。コルツォーネがロッソたちを見た、彼の目は吊り上がり眉間にシワがよってきつくなり憎悪に満ちていた。
「リーシャ! 剣をくれ」
「はいです。旦那しゃん!」
元気よく返事したリーシャが背中をロッソに向けた。やや彼女がかがむと背中の襟元から守護者大剣のグリップが出た。リーシャはドレスの中に守護者大剣を隠していたのだ。ロッソがグリップをつかみ引っ張り上げ、剣を抜いて構えるのだった。ロッソが剣を抜くと同時にリーシャのドレスは外れて普段の恰好へと戻った。コルツォーネは起き上がり笑う。
「なるほど…… 最初から僕のことをバカにしていたわけですか…… こうなったら!」
コルツォーネはランタンになにやらつぶやいている。きっと呪文をつぶやいて姿を消そうとしているのだろう。だが、コルツォーネの体に一向に消えることはなく、つぶやく彼の姿がずっとロッソたちの前にさらされていた。
シャロは笑いながら、コルツォーネを指さしバカにした口調で話す。
「何してんの? あんた?」
「えっ!? なっ何故だ!?」
下を向き自分の姿が消えていないことに気づいたコルツォーネは慌てランタンを外す。コルツォーネはランタンの中を覗き込む。
「残念だった。あんたの腰のランタンの火は消えたのよ」
「なっなんで!? クソ! もう一度火を…… ファイアボール」
ランタンの中を確認してコルツォーネが、右手の手のひらを上に向けると小さい火の玉が飛び出した。コルツォーネは火の魔法を使って闇の再度ランタンに火を灯した。
「無駄よ! みんな!」
シャロが舞台を向いて両手をあげた。シャロの手の動きに演奏家たちが即座に反応し再度”日暮れまで一緒に”最終節が海上に流れた。
「吹き抜ける風!!!!!」
リーシャの上がこだまする。再び歌声がコルツォーネを襲った彼は歌に押され再び尻もちをついた。闇のランタンについた火はリーシャの叫び声が通過するとともに消えた。
「無駄よ。何度やってもリーシャの声が闇のランタンの火を消すわ。観念しなさい!」
コルツォーネを指さし叫ぶシャロ。そう彼女が考えた作戦は、コルツォーネのランタンの火をリーシャの声で消すことだった。
リーシャが歌っている吹き抜ける風はさっき歌った”日暮れまで一緒に”とは違う精霊の讃美歌という歌の一部分である。精霊の讃美歌は普通の人間が歌えばただの歌だが、シャロの踊りと一緒で歌の実力が高い者が使うと、魔法のような効果を発揮する。吹き抜ける風の歌詞は文字通り強い風を起こす歌詞で、使いこなすのは歌の実力だけでなくリーシャのように手をつかわず声だけで吊るされたランプを揺らすほどの声量が必要だ。仕事の合間に広場で行っていた訓練は、この歌をキチンとコルツォーネに、当てるためのものだった。
ちなみに精霊の讃美歌はシャロが師匠から教えてもらったもので、いつかシャロが仲間を連れるようになれば必要になると教えたものだった。
「さぁ…… 覚悟しろよ」
ロッソは大剣を構えコルツォーネを睨みつける。
「クソ! お前ら! やっちまえ」
悔しそうな顔をしてコルツォーネが部下に指示を送る。まだリーシャの大声に耳がいたいのかコルツォーネの部下たちは耳を押さえていた。




