第23話 消える山賊コルツォーネ
ロッソの視線は男が持つ白いランタンへ向けられる。酒場は照明で明るくランタンを持つ必要はないからだ。
男はロッソを見て不気味にほほ笑み口を開く。
「こんにちは! いやいやなかなか良い腕をおもちですな」
「お前は誰だ?」
「あなたに部下がお世話になっていたようなのであいさつに出てきたんですよ」
「部下だと!? じゃあ、お前がコルツォーネ!?」
「はい。山猫盗賊団の首領コルツォーネと申します。以後、お見知りおきを」
男はロッソに向かってゆっくりと頭をさげて挨拶をした。
ロッソは守護者大剣をコルツォーネに向け右手一本で構え、左腕でシャロを背中に隠す。次に舞台のそでで不安そうに見つめる、リーシャに左手でそこにいるように合図を送った。
「でもあなたよく私が分かりましたね……」
「まぁね。これでも一応戦闘経験は豊富な方だからな」
「すばらしい。さすがシャロさんだ! こんなに強い護衛をお持ちとは…… 今日会いに来てよかった」
「会いに来た? お前はシャロに何のようだ!」
「あぁシャロ…… 彼女の踊りの噂を聞いて見に来たんですよ。評判通りにお美しい。ぜひわたしの妻に迎えたい!」
「なっ!? なんだと!? シャロを妻にだと!? ふざけんな。なんでよりにもよって妹を山賊と結婚させなきゃいけないんだよ。シャロの結婚相手は…… あぁ! いや! 今は結婚なんかいいんだ!」
困惑して叫ぶロッソ、彼の言葉を無視しうっとりとした顔で、コルツォーネはシャロを見つめていた。シャロは眉間にシワをよせて嫌そうな顔をしていた。
「何を言ってるの!? 嫌よ。私は結婚なんかしないわ」
ロッソはシャロの言葉に我に返りコルツォーネを睨みつけた。
「だとよ。フラれちゃったね。あきらめな」
「でしたら力ずくで奪い取るまでです」
「やってみな」
守護者大剣を強く握り、ロッソはもう一度闘気を送り込む。姿が見えなかったから弾けなかったが、これでコルツォーネ障壁で弾かれるはずだった。
「フフ! また魔法障壁ですか…… 無駄ですよ」
「なっ!?」
ランタンをかざすと、コルツォーネの姿がまた消えた。ロッソは足元へ視線を移した。自分に向かってブドウ酒がしみ込んだ紫の染みが近づいて来ていた。魔法障壁の影響をうけてないようだ。ロッソは冷静に向かって来るコルツォーネに対応する。
「クソ! どこだ!」
ロッソは剣を構えて首を必死に動かし、コルツォーネを見失ったふりをした。
「フフ…… 僕はどんな障害でも抜けられるのですよ。シャロさんだから僕はあなたとの障害は全て取り払いますよ」
「げぇ!?」
酒の染みが近づいてきて、ロッソとシャロの近くでコルツォーネの甘い声がした。シャロの心底嫌そうな叫び声がする。タイミングをはかりながらロッソは剣を振り上げた。
「そこだ!」
「なぜっ!?」
酒の染みがあるロッソの前方やや右に向かい、全力で剣を振り下ろした。さっきと同じ金属のぶつかりあう音がした。だが音は先ほどより大きくロッソの手に伝わる感触も先ほどよりも重い。
「うわわあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
急に現れたコルツォーネのダガーが回転し、天井へと向かっていき天井に当たって床に落ちた。目の前に青い顔をして右手を震わせているコルツォーネが現れる。右手を震わせ愕然とするコルツォーネ、姿を消した自分がみつかったのが信じられないという感じだった。ロッソはコルツォーネを黙って見つめていた。彼の視線に気づいたコルツォーネはすぐに取り繕うように笑った。
「やりますね。あなたお名前は?」
「俺はロッソ・フォーゲルだ。お前の大好きなシャロの兄だ。お前みたいなやつにシャロはやらん!」
腕を伸ばし剣先をコルツォーネに向けた。武器がないコルツォーネはゆっくりと後ずさりをする。
「うん!? やっと気づいたか……」
飛ばされたダガーに視線を移した際に、コルツォーネは自分の腰巻に酒の染みがついてるのを見つけて悔しそうな顔をする。腰巻を外して床に投げ捨てる。
「フフ…… なるほど…… そうですか…… 今日はシャロさんに僕の意志を伝えてに来ただけですので、引き上げさせてもらいます。ロドリゴ! 迷惑かけたな。ほら!」
コルツォーネは腰につけていて金貨袋を、カウンターにいたロドリゴに投げつけた。床に転がった袋の紐がほどけて中から銀貨がこぼれる。ロドリゴは複雑な顔で銀貨を見つめていた。
「じゃあな。ロドリゴ! この次に来た時に失礼のないように私の魅力を説明しておいてくれたまえ! 私の事をよく知ってるお前がな……」
どうやらロドリゴはコルツォーネの知り合いのようだ。コルツォーネはロッソとシャロの方を向き笑顔で頭を下げた。
「では、シャロさん…… 一週間後にまた来よう。それまでに僕との結婚を考えておいてくれたまえ……」
「ベーだ! お断りします」
「ははは…… その気の強さ。ますます気に入ったよ。じゃあね。帰るぞ! お前ら!」
笑いながらコルツォーネの姿が消えた。少しして酒場の扉が開く音がして閉じた。コルツォーネが出て行ったようだ。男たち四人も続いて扉から酒場を出ていったのだった。
「行ったか…… ふぅ…… 助かった。いた! 何するんだよ!」
シャロがロッソの足を後ろから蹴ってきた。振り返るとシャロが頬を膨らませてにらんでいた。
「おにいちゃん! なんで捕まえないのよ!?」
「無理だよ。姿も見えないし魔法障壁も効かないのに……」
「さっきはあいつの場所わかって剣で斬ってたじゃん!」
「あれは腰巻にブドウ酒のシミがついてたのを見てたの。だからあいつが外したら俺はあいつの姿みえないんだよ」
「そうなの!?」
不思議そうな顔でシャロが、コルツォーネが捨てた腰巻を見つめている。
「旦那しゃん! シャロ! 大丈夫ですか?」
「うん、あたし達は大丈夫だよ。ありがとうね。リーシャ」
「よかったです」
心配そうにリーシャが舞台にでてきてロッソたちの元へと駆け寄って来た。シャロは駆け寄ってきたリーシャを抱きしめて無事だと伝えていた。ロッソは抱き合う二人を見て、怪我がなくてよかったと安堵するのだった。
「しっかし…… あいつは何なんだよ。あいつは急に出てきてシャロと結婚させろとか…… それにあの姿の消える能力…… ロドリゴはあいつのこと知ってそうだから話を聞かないとな…… うん!?」
顎に手を置いてつぶやきながら考え事していロッソ、考えごとの途中で酒場の扉が勢いよく開かれた。
「コルツォーネ! 裏切者め! お前を逮捕する!」
開いた扉から冒険者ギルドであった、眼鏡の男性が剣を手に持って飛び込んで来た。男性の後から若い冒険者風の若者も続いて入って来た。誰かが通報したのようで、彼らは冒険者ギルドからコルツォーネを捕まえを来たみたいだ。男性はカウンターに立って居るロドリゴの元へ走っていく。
「ロドリゴ! コルツォーネはどこ行った?」
「あぁ…… カール…… もう出て行ったよ」
「帰った!? 損害は? 何か盗られらたのか?」
「いえ…… あそこのロッソさんが追い返してくれました」
「ロッソだと!?」
ロドリゴがロッソの方を見てカールと呼ばれた眼鏡の男性と話す。冒険者ギルドのカウンターに居た男性はカールという名前だった。カールはすぐにロッソの元へやってきた。
「おぉ! あなたはやはりこの間の…… お願いがあります。あなたにコルツォーネの討伐に協力をしていただきたい」
ロッソの前へやってきたカールは真剣な表情で、コルツォーネを討伐してほしいと頭を下げるのだった。




