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勇者を守った男は成り下がり少女を守る ~護衛と踊り子の兄妹、歌って踊って傷ついた世界を癒せ!~  作者: ネコ軍団
第1章 集う仲間たち

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第20話 偽物とは違う

「えっ!?  戦闘能力値92…… いきなりS2級ですって? まさかあなた本物のロッソなの!?」

「さぁな。どうでもいいだろ? ギルドカードをくれ。すぐに素材の換金したいんでね」

「はっはい…… そうよね。冒険者に過去の実績は関係ないものね…… あなたが勇者パーティにいたことなんかどうでもいいわね……」


 あきれて笑ったフレイアはロッソが書いた書類の上に、カードを置いてなにやらつぶやくと、水晶に表示された文字と彼が書いた書類の名前がカードに浮かび上がっていく。


「はい。これがギルドカードよ」


 ロッソに出来上がったカードをフレイアが渡す。カードの表には冒険者ギルドのロゴマーク鷹の紋章と裏にはロッソの名前と冒険者ランクと戦闘能力値が記載されていた。


 ”名前:ロッソ・フォーゲル 冒険者ランク:B3 戦闘能力値:92”


 カードを見つめとりあえずこれで、品物の買い取りしてもらえるとホッとするロッソだった。フレイアがジッと彼を見てるのが少し気になったがすぐに買い取りカウンターへ戻ることにするのだった。


「リーシャ! はい。これをあのおじさんにはいって渡してきてるかい?」

「わかったです」


 ロッソはリーシャに声をかけ、出来上がったばかりのギルドカードを彼女に渡す。嬉しそうにリーシャはギルドカードを受け取り、素材買い取りのカウンターへ戻り男性に渡すためにカウンターの下で背伸びをして手を伸ばす。


「はいです! 買い取りをお願いします」

「ありがとうね。お嬢ちゃん…… うん!? この数値は……」


 リーシャから受け取った眼鏡のツルを押さえて、男性は何度もロッソの顔をみていた。

 トロールの素材をリュックから引っ張りだし、リーシャはカウンターへと置いていく。男性はリーシャが素材をおいていってもロッソのギルドカードを見つめている。


「なんだ。待たせると怒られるんだが……」


 止まっている男性にロッソはいらつき声をかける。


「あの! 悪いんだけどさ。外に人を待たせてるので早くしてもらっていいか?」

「おぉ!?、ごめんなさい」


 男性はロッソが急かすと慌てた様子で、リーシャが置いたトロールの牙などのアイテムを、カウンターの奥にあるテーブルにへと運ぶ。かけていた眼鏡をおでこのまでずらして、レンズがついた拡大鏡を手に持った男性は、アイテムを手に取ってひとつひとつ丁寧に鑑定している。

 鑑定が終わると男性はロッソたちの前に戻ってくる。


「トロールの牙は一本五十リロ、爪は一枚二十リロで氷漬けの肉は…… ちょっと魔法の氷漬けが雑だから。十リロだな。いいかい?」


 ロッソが持ち込んだアイテムは総額で百リロになった。シャロの元々の出演料(ギャラ)が五十リロなので倍になれば充分だろう。納得した様子でロッソはうなずく。


「いいぜ。それで買い取ってくれ」


 男性はロッソが返事すると、五十リロの大銀貨一枚と十リロの大銅貨五枚をカウンターの上に置いた。金を受け取ったロッソは財布にしまうと、リーシャを連れて冒険者ギルドから出てていくのだった。


「うわ!?」

「おそーい! 何してたの?」


 冒険者ギルドの扉をあけて出たロッソとリーシャを、待っていたのは腕を組んでむくれた顔をしたシャロだった。シャロは大分待たされたのかかなり不満そうにして出て来たロッソの顔を覗き込んでくる。


「何してたって換金だよ。外で待ってるんだったら中に入ってくればわかっただろうに…… それにな!」


 ロッソは買い取りには冒険者になる必要があり、手続きに時間がかかったことをシャロに説明した。


「ふーん…… まぁいいわ。それでトロールの素材はいくらになったの?」

「ちょうど百リロだよ」

「すごいね。じゃあいくわよ。早く行かないとゆっくり見る時間がなくなるわ」


 慌てた様子でシャロは、リーシャの手を取って歩き出して町を指さし振り向た。こちらを向いてほほ笑むシャロのロッソは首をかしげた。


「行くって? どこに? シャロはもうすぐ仕事だろ?」

「お洋服屋さんよ。仕事に行く前にお洋服屋さんに寄るのよ! リーシャ、お洋服屋さんでリーシャの服買ってあげるからね」

「ほんとですか!? うれしいです!」


 リーシャが弾んだ声で返事をする。シャロとリーシャは手を繋いで嬉しそうに歩いていく。三人はジブローの町にある洋服屋へと向かうのだった。


「ふぅ…… ここで三軒目か…… まさか上着と靴とスカートをそれぞれ違う店で買うことになるなんてな……」


 疲れた顔でつぶやくロッソ。洋服やのきらびやかな店内に置かれた、ベンチに座りシャロとリーシャを彼は待っていた。目の前に置かれた棚には綺麗にたたまれた洋服が並んでいたり、壁には色とりどりの洋服が駆けられている。ロッソたちはリーシャの洋服を買うために洋服屋を巡りをしていたのだった。


「しかし、長いな……」


 シャロとリーシャはこの店に来る前に買った、シャツと靴をもって二人で試着室にいる。もうかなりの時間が経っているが出てくる気配がない。

 

「出てきたら一言…… ダメだ。やめよう」


 黙って待っていないとまたシャロから村に帰れと、言われることが分かっているロッソはつぶやきながら首を横に振った。ちなみに彼は一軒目で上着を買って次の店に行こうとしたシャロに、同じ店で全部そろえればいいじゃんと発言し、リーシャと二人がかりで何もわかっていないと説教をくらった。


「うん!? やっと出てきたか」


 シャロに手を引かれてリーシャが店の奥にある試着室から出てきた。


「おぉ!」


 声をあげるロッソ。リーシャは着替え、下半身は下から黒い靴に、膝くらいまでの白い靴下にフリフリの赤いスカートを履いている。上半身は黄色のレースの飾りがついた細い肩紐でつるす形の上着を着ていた。

 ボサボサだった髪は、丁寧にとかれて右の猫耳の横に白い花の髪飾りが見える。茶色のボロボロの服だったリーシャは綺麗な格好になり笑顔でシャロと歩いていた。身支度をしたリーシャの顔はおどおどしていた奴隷時代と違い堂々として自信に満ち溢れているように見えた。


「よかった。でも…… ちょっと肩が出ているのはけしからんがな。まぁシャロの踊り子の衣装よりましか……」


 ロッソはリーシャの姿を見てつぶやく。リーシャと目があったロッソ、彼女は少し恥ずかしそうにシャロの後ろに隠れた。


「リーシャ、かわいくなったね」

「へへへ! うれしいです! 旦那しゃんありがとうです!」


 しゃがんだロッソがリーシャに声をかけると、彼女は恥ずかしそうに答えていた。リーシャの横にいるロッソの上からシャロが得意げに見つめていた。


「でしょ? やっぱり私のセンスがいいからね」

「なんでシャロが自慢するんだ?」

「いいでしょ! あたしが服を選んだんだだからね!」

「二人とも喧嘩はメーですよ!」


 あきれて顔をしかめてロッソが言い返すと、シャロはムスッとした顔をした。リーシャは二人のやり取りをみて喧嘩はダメだって怒るのだった。ロッソとシャロの二人は顔を見合せた。二人は仲が良く昔からこのような言い合いはよくあり本気で喧嘩をしているわけでない。シャロはリーシャの頭を撫でる。


「ごめんね。おにいちゃんとあたしは本気で喧嘩してんじゃないのよ」

「そうなんですか?」

「うん、しばらく一緒に居ればリーシャもわかるようになるわ」

「はい! わかったです」

「じゃあ行きましょう!」


 リーシャが笑顔でうなずく。シャロとリーシャが手をつなぎ、並んで店の入り口に向かう。


「さて…… 俺も行くか」

「あっあの! 待って下さい」

「はっはい!?」


 二人の後に続こうとするロッソを慌てた様子の店員が止めてきた。振り返ったロッソに女性店員が、少し言いにくそうに口を開く。


「洋服の代金をいただけますか? あのスカートは三十リロになります」

「えっ!? あっはい! 悪い! あれ!? シャロは払ってないのか!?」


 振り向いたシャロはにっこりとほほ笑み、すぐに前を向いて店の扉にむかって歩いて行ってしまった。


「クソ! あいつめ! もう! ごめん。すぐに払う」


 ロッソは自分の財布から、金をだして支払いをして二人を追いかけて洋服屋を出た。洋服屋を出てすぐのところシャロがリーシャになにやら話していた。ロッソに気づいたシャロが片手を上げて挨拶をする。


「支払いご苦労! 護衛(ボディガード)君!」

「ご苦労じゃないよ。前の二件も俺が払っただろ! なんでここも俺が払うんだよ」

「えぇ?!」

「なっなんだよ……」


 シャロは急に両手で目を覆っている。泣いているようだ。


「おにいちゃんひどい…… せっかくリーシャが喜んでるのに…… ごめんね。リーシャ…… おにいちゃんはリーシャのお洋服買いたくないんだって!」

「うぅ…… わかりました。旦那しゃんが言うならリーシャ我慢するです。お洋服をお返しするです」

「なっなんだよ!? 急に!?」


 震える声でシャロがリーシャに謝り。リーシャが悲しそうにうつむき服を脱ごうと手をかける。

 

「まっ待て! リーシャ! 違う! 違うんだよ。だからリーシャ泣かないで! 洋服はリーシャのだから着てなさい」


 慌ててロッソはしゃがんでリーシャの手をつかんで止めた。顔を上げたリーシャは明るい表情をしてほほ笑んだ。


「あと…… リーシャはこの先にあるお店のアイスが食べたいって……」

「はい…… 食べたいです」

「はっ!? わかったよ。リーシャにアイス買うから!」


 ロッソの後ろでシャロが、泣きながら話しかけてくる。アイスを買うというとリーシャの顔はさらに明るくなる。


「あたしも食べたい……」

「えっ!? シャロも!?」

「リーシャもシャロと一緒に食べたいです……」

「うわーん! あたしもアイス食べたいよー!」


 ロッソがシャロの顔をみて黙っていると、彼女はうずくまって泣く動作が大きくなる。明るくなったリーシャの顔がどんどん暗くなっていく。

 

「あぁ! もう! わかった。シャロとリーシャ二人分のアイスを買おうな! なっ!?」


 手で目を抑えていたシャロが顔をあげて歯をみせて笑う。


「ありがとう! おにいちゃん! リーシャ! 行こう!」

「えっ!?」


 すぐにシャロはリーシャと手をつないで元気に歩き始めた。


「ニヤリ…… やったね。リーシャ! おにいちゃんはチョロいのよ」

「はいチョロいです」


 二人の会話が聞こえロッソは悔しそうにする。シャロはウソ泣きでロッソをはめたようだ。

 しかし、彼は手をつなぎ楽しそうに歩く二人をみて頬が緩んだ。リーシャが嬉しそうにしているのでシャロへの怒りを抑えるのだった。リーシャの洋服を買ったロッソたちは、途中アイスを買ってからシャロが働く酒場へと向かうのであった。

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