第19話 護衛はアイテムを売りたい
ギルドの建物の横に馬車が置かれていて。馬はつながれてなく埃かぶってボロボロだった。馬車に気付いたロッソが立ち止まるとすぐにリーシャが彼の手を引っ張る。
「旦那しゃん! またボーッとして! 早くいくですよ!」
「あぁ!? ごめん」
リーシャに急かされたロッソはすぐに歩き出し、彼女と一緒に冒険者ギルドの建物の中に入るのだった。
建物の中は正面と左手に冒険者ギルドがあり、右手には酒場が併設されていて、四人がけのテーブルと椅子がいくつも置かれていた。席は二つほどうまり冒険者らしき者達が談笑をしていた。建物の左手の壁に大きな掲示板があり、部屋の奥に冒険者ギルドのカウンターが設置され受付が三つくらいに分かれていた。
冒険者ギルドのカウンターの上に看板が置かれていた。看板を見ると手前の二つにはクエスト受付と書かれている。一番奥のカウンターにはアイテム換金と報酬支払いと書かれている。
「俺たちが行くのは一番奥だな」
クエスト受付の二つはギルドの緑色の制服を着た、かわいいエルフの女性とリーシャと同じ猫耳の女性が二人立っていた。カウンターを奥をこっそりと覗くロッソの顔をにやつく。エルフと猫耳の女性は可愛く、当然買取でもかわいい女性に受け付けてもらえると、勝手に期待に胸を膨らませていたのだ。ロッソとリーシャは一番奥の受付へとやってきた。
「げっ!? 何でだよ!! チッ…… まぁいいか」
思わず声をあげるロッソ、彼の期待はもろくも砕かれた。なぜか買い取りのカウンターだけは、頭髪の薄い眼鏡の初老の男性だったのだ。
「うん!? リーシャがやるのか!?」
「はいです」
リーシャがつないでいたロッソの左手を引っ張ったので彼女へと視線を向ける。ロッソを見つめて笑顔でリーシャは右手のひとさし指を自身に向けていた。リーシャが買い取りの受付をしたいと察したロッソはカウンターの奥を手で彼女に指し示す。
「じゃあ、リーシャ。おじさんにトロールさんの素材の買い取りお願いしますって言ってくれ」
ロッソがカウンターの男性に向け、リーシャに声かけるように促すと彼女はすごい嬉しそうな顔をする。ロッソから手を離しリュックを下ろしたリーシャが大きく息を吸い込んだ。
「しゅいません! トロールしゃんの買い取りをお願いします」
「わっ!」
元気よくしゃべったリーシャの声が響く。
男性は驚いて一瞬びくっとなって二人の方を向く。隣のカウンターのお姉さんたちと冒険者達も彼らに目を向ける。リーシャはリュックから、トロールの牙を取り出してカウンターに置こうとする。男性はすぐに眼鏡を直しながら不審者をみるような顔をしてリーシャに声をかける。
「買い取り!? それはトロールの牙だよね。お嬢ちゃんが倒したのかい?」
「違います。旦那しゃんがやっつけたです」
カウンターの上にトロールの牙を置いたリーシャが自慢げに男性に向かって答えている。男性はロッソ顔を見てちょっと不機嫌そうな顔をした。
「君たちは冒険者なんですか? 確認するからまずはギルドカードを見せてください」
カウンターの上に手をだし、男性はは冒険者ギルド所属を証明するギルドカードを要求してきた。冒険者でなければ買い取りできないと言われ困惑するロッソだった。彼は正直に男性に相談する。
「悪い。俺たちは冒険者じゃないんだ。どうすればいい?」
「そうなんですね。素材やアイテムの買取は冒険者に限らせてもらってるので、隣で冒険者登録をしてからまたいらしてください」
「わかった。ありがとう」
男性はロッソに隣のカウンターをさして教えてくれた。ロッソは男性に礼を言ってから、リーシャの肩に手を置いて声をかける。
「リーシャまずは隣にいくぞ」
「はい!」
リーシャはトロールの牙をしまってリュックをまた背負う。二人は隣にあるエルフの女性がいるカウンターの前に言って声をかける。
「あのぅ。冒険者登録したいんだけど……」
「えっ!? あぁ。はいはい。じゃあこちらをよく読んで名前を記入してね」
エルフの女性はやる気なく、返事をするとカウンターに一枚書類を出しロッソに差し出し、その横にペンを置く。エルフの女性の胸元には名札がついておりフレイアと書かれていた。彼女の名前はフレイアと言うようだ。
「えっと…… ここに名前を書くのか…… こら! リーシャはいいの! 俺がやるから!」
カウンターに手をかけてよじ登り、リーシャが手を伸ばしてきた。ロッソは嫌がるリーシャをカウンターから下ろして書類に目を通す。
名前の欄の上にはギルドについて説明が書かれている。
ギルドへの登録料は十リロ、登録可能な年齢は十歳以上。ただし種族によっては成人年齢が違うため多少考慮される場合もあるとのこと。
また、冒険者は実力によってランクが上からS1、S2、A1、A2、A3、B1、B2、B3 と別れているとあった。
「そういえば…… 軍隊にいたころ冒険者やってた知り合いがいて言ってたな」
ロッソは軍隊に所属していた冒険者から、S1ランクの冒険者は世界で三人しかおらず、勇者キースや魔王シャドウサウザーと同じくらい実力があると聞かされていた。ロッソはその冒険者にならなぜ魔王軍との戦闘に彼らはでてこないのかを質問した、冒険者が言うにはS1ランクの冒険者を保有してる国が自国の防衛のためとごねて彼らを前線に出さなかっという。その話を聞いたロッソは、世界のために動ける人間って言うのは貴重なんだなって思ったのだった。
ロッソは書類の続きを読んでいく。受けられるクエストは各ランクによって違い、B1~B3までは依頼数でランクアップする。A3以降は昇格試験もしくはギルドマスターが実力を認めるとランクアップするという。ちなみに、現在は魔王軍との戦争で冒険者も徴兵され世界で冒険者不足が起きているという。
「なになに…… A3ランク以上の者は緊急のクエストでは特別に召集をかける場合もあるか……」
さらに書類を読み進めるロッソ。ルールは他にも年に一回以上クエストを受けないと降格か罰金とか外国製のギルドカードは必ずカウンターに提示しろなどがあった。
「まぁいいや。どうせ俺なんか素材を売る時に利用するくらいで登録したままになるだろうし……」
ざっと書類を読んだロッソは名前をさっさと書き、受付のフレイアに書類を返した。
「プっ…… ロッソ・フォーゲルさんね。久しぶりにみたわ」
書類を受け取った書生はロッソの名前を見て吹き出していた。彼は特に自分の名前に誇りがあるほどではないが、いきなり吹き出されるような失礼にはさすがに気分を悪くする。不機嫌な顔でフレイアを見てロッソは口を開く。
「何か問題あるのか?」
「いえあなたもロッソさんなんだなぁって思って…… でも、そちらのお嬢ちゃんがトロールを倒していうくらいだから少しはできるのかしら?」
フレイアはロッソを見下したように笑顔で見つめている。あまりに失礼な態度にロッソはフレイアを睨み付けた。彼女ははロッソの視線に気づいたのか少し気まずそうにして口を開く。
「ごめんね。三ヵ月前にアクアーラ王国の各町の冒険者ギルドにロッソさんやキースさんって魔王軍討に参加した英雄たちの名前の冒険者登録がいっぱい増えましたからさ。久しぶりだなって思って」
「ふーん。俺やキースの名前を使って冒険者登録したやつがたくさんいるって訳か……」
どうやらロッソやキースなど、魔王討伐軍で活躍した人物の名前を騙って冒険者登録を行った不届き者が何人もいたらしい。自分と同じ名前を騙る人間が複数いると思うとロッソは気持ち悪さを感じだのだった。
「ロッソとかキースで登録した人ってどれくらいいるの?」
「えっとこの町では三十人くらいね。でも、ほとんど死んだか行方不明になってるわね。この町にいた二十人のキースさんはほとんどが盗賊討伐に行って死んじゃったわ。馬鹿よね。キースなんて名前使ったら高い報酬の仕事回ってくるけど死ぬ確率も高いし断れるわけないのに……」
世界を救った勇者が町のギルドにいたら、当たり前だが難易度の高い依頼をまわされる。仕事を断ればすぐに偽物とバレ二度と信用されなくなるから断ることはできない。分不相応な仕事を回されたキースたちはほとんどが死ぬか行方不明になったという。
「あなたも? 勇者のパーティのロッソって名乗るのかしら? 希望ならギルドカードに勇者パーティだったって刻印してあげるわよ?」
「いや…… 俺は…… 名前が一緒のただの旅の踊り子の護衛だよ」
「なんだぁ。残念」
フレイアはわざとらしく笑つと、カウンターの下から大きく丸い宝石と書類一枚と、紐を通した金属製のカードを出して置いた。
丸い宝石は色が透明の水晶だった。水晶をジッと見つめるロッソにフレイアは頬杖をつきながら説明を始める。
「これは戦闘能力測定水晶よ。水晶に手をかざすとかざした人の魔力や力などの能力を測定して数字で戦闘能力を表示してくれるわ。その数字が冒険者ランクで大体の戦闘能力の目安となるわけね」
お姉さんはカウンターからもう一枚紙を取り出した。紙には冒険者ランクと目安となる戦闘能力値が記載されていた。
S1 95以上
S2 86~94
A1 76~85
A2 61~75
A3 46~60
B1 31~45
B2 16~30
B3 0~15
ロッソは数字を見て首をかしげた。
「うん!? 戦闘能力を測定してB3以上の数値をだしたらそこのランクからになるってことか?」
「残念だけど高い数値を出したからって最初からB2とかのランクにはならないわ。ランクは書類に書いてある通りクエスト回数か昇格試験でしか上がらないの。ただ能力を測定して向いたクエストを紹介しやすくするだけよ。それに定期的に能力を測定すれば冒険者のランクを上げたりする目安がわかりやすいでしょ」
「なるほど……」
戦闘能力値はあくまで自分が、だいたいどれくらいの冒険者ランクの実力があるか把握し、受ける仕事の目安にするだもののようだ。
「こら! ダメだよ。リーシャ!」
フレイアの話を聞いて気合を入れ、手を伸ばすリーシャをロッソが押さえる。フレイアはリーシャに視線を向けメッと口が動く。ロッソはリーシャをカウンターの前からどかしてフレイアの顔を見て笑った。
「キースとか名乗った人達はこれをしたら焦ったでしょうね」
「ふふ…… 低い数値をだして壊れてるって怒りだしたり、慌てながら俺は力を抑えてるとか、魔法で数値を変えたとかって必死になってて滑稽だったわね」
「はは…… 実力がいきなりバレたらそりゃそうなるわな」
フレイアは偽キースたちのこと思い出し笑っている。次にフレイアはカウンターに出した、首にかける紐がついた手のひらに乗るくらいの大きさの金属製の銀色のカードを手に持つ。
「よし! じゃあこの水晶に手をかざしてくれる。戦闘能力値を測定してこのカードに記載したら手続き完了だから」
「はい」
ゆっくりとロッソは水晶の上に手をかざす。水晶が優しい白い光を放ち真ん中に数字が表れる。その数字を見てフレイアは目を大きく開いて驚いた顔をするのだった。




