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勇者を守った男は成り下がり少女を守る ~護衛と踊り子の兄妹、歌って踊って傷ついた世界を癒せ!~  作者: ネコ軍団
第1章 集う仲間たち

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第12話 奴隷歌姫

 ロッソとシャロは村はずれにあるサーカス会場へとやってきた。今日の公演は終わっており、会場はひっそりと静まり返っていた。サーカスの人間に見つかると厄介なので、ロッソとシャロはこっそりと昨日リーシャと会った檻の前へと向かう。


「がっははは!」

「飲めー!」


 二人が大きなテントを横切っていると、中から騒ぎ声が聞こえる。中ではサーカスの人たちが宴会を行っているようだ。サーカスの荷物やテントに身を隠し、ロッソとシャロは慎重に荷台が檻になっている馬車の近くまでやってくる。


「あっ! いたいた。リーシャ……」


 昨日と同じボロボロの服で、檻に鎖でつながれたリーシャが膝を抱えて座っていた。

 近くの松明などは消され、薄暗い月明りに照らされたリーシャは、うつむいてさみしそうに見えた。ロッソとシャロは彼女の姿を見つけて駆け寄る。


「リーシャ」

「ロッソしゃん! ビックリです」


 声をかけると驚いた顔でリーシャがロッソを見た。昨日とは違い兜をかぶってない彼の顔をみた、彼女はうれしそうに笑ってくれる。リーシャは立ち上がり、二人へと近づく。


「急にごめんね。リーシャ。こんばんは」

「シャロしゃん! あっ……」


 嬉しそうな顔で近寄ってきたリーシャがシャロの顔を見て止まった。シャロがリーシャが立ち止まったのを見て、不思議そうに彼女の顔を覗き込む。


「どうしたの? 私なんか変?」

「シャロしゃんが綺麗な格好してるです。かっこいいです」

「へへへ、ありがとう。あたしは踊り子だからね」

「ほぇぇすごいです」


 かっこいいと言われてシャロは照れている。ロッソとシャロとリーシャは三人で並んで座るのだった。


「はい。これお土産! クッキーだよ」

「おぉ! ありがとうです」

「えっ!? いつの間に買ったんだ……」


 シャロが白くクッキーが詰められていた布をリーシャに渡した。リーシャは喜んでクッキーを受け取り、すぐに開けて美味しそうにクッキーを両手に持ってほおばるのだった。もぐもぐと頬を動かす、リーシャをなでながらシャロは優しく声をかける。


「リーシャはなんでお祭りにこなかったの?」

「えっ!? リーシャは…… いけないです。魔物さんにご飯をあげたりお掃除をしないといけないですから」


 小さく絞り出すような声でリーシャが答える。シャロは悲しそうなにリーシャの頭の撫でていた。


「そっか…… じゃあ、あたしがここで踊りを見せてあげる!」

「ほんとですか!?」


 立ち上がったシャロにリーシャは目を大きくあけて驚いていた。驚くと同時にうれしいのか、彼女の表情は明るく目はキラキラと輝いていた。


「おにいちゃん! 笛持ってるでしょ? 音楽!」

「えっ!? わかったよ」


 ロッソは腰につけている袋から笛を取り出した。リーシャが期待した表情で彼を見た。シャロは踊り子だが、ロッソは護衛で演奏家ではないので期待を受けた彼は困った顔をする。


「おにいちゃんの下手な笛じゃ踊りづらいけどね」

「うっうるさいな! それで何を曲は何を吹けばいいんだ?」

「おにいちゃんが出来るのでいいよ。あたしが合わせるから!」


 笛を持ち考えこむロッソ、彼は自分が演奏できる曲を頭の中で必死に探す。ハッと目を大きく見開いたロッソはシャロに顔を向けた。


「白竜王の行進曲な」

「わかったわ!」


 シャロがロッソに笑顔でうなずき返事をする。白竜王の行進曲とはこの地方に昔いた王様が遠征して大きな戦果をあげたことをたたえる曲だ。祭りなどでよく演奏されてシャロとロッソもよく聞いていて馴染み深い。

 なお、歌もあるらしいが古い言葉で、ロッソの母親が生きている頃に意味は、教わったが彼はほとんど覚えてない。

 ロッソは笛に口をつけて吹き始める。緊張からはずれるの音とリズムにシャロは、険しい顔をするがすぐに曲に合わせて踊りを始めた。ロッソが奏でる演奏は決して上手とは言えなものではあったが、シャロの踊りは演奏をカバーするように素晴らしくリーシャは彼女の踊りに目を奪われていた。

 少ししてシャロは笑顔で二人に話しかけてくる。

 

「シャロしゃん、ロッソしゃん! リーシャこれのお歌を知ってるです! 歌っていいですか? リーシャお歌大好きです」

「えっ!? 歌!? いいよ。一緒にやろう」


 シャロがいいというとリーシャは立ち上がり、背筋を伸ばしてやや上に目線をもっていき口を開けた。


”tu scisi ustumest”

(蒼天を舞う強き翼)


”fgeree eltiam inaeri”

(熱き瞳が光で世界を照らす)


”arsconiun ctiones pplatiniun”

(行け! 我が神聖なる都へと)


”albanacys no-struorm drambo”

(白金の二つの竜王となりて)


 リーシャの声は透き通り、静かな清流のように、周囲に響き渡りシャロとロッソの耳に心地よい感覚を走らせる。


「えっ!? リッリーシャ!? すごい…… うまい」

「うん…… あたしもこんな歌は初めて……」

 

 どこまでも飛んで行きそうなリーシャの歌は、何かの強い意志を持ってるような感じがする。先ほどまでの気持ちが沈み、奴隷という身分を自覚し自身なさげであった、リーシャとは思えないほど歌う姿は堂々としていた。

 ロッソとシャロは手を止め、リーシャの歌に聞きほれる。笛が止まったのに気づいたリーシャは不安そうにロッソとシャロの方を見た。シャロは笑顔でリーシャを抱きついた。


「すごいよ! リーシャ! お歌上手だね」

「わっ!?」


 抱き着いたシャロが、リーシャの頭を撫でながらほめている。歌をほめられたリーシャは恥ずかしそうに頬を赤くする。


「へへ。褒められて嬉しいです。小さい頃にお母さんと一緒に歌ってたです……」

「そっか……」


 褒められて恥ずかしそうにした、リーシャをシャロはさらに強く抱きしめる。


「シャロしゃんの髪はいい匂いがします……」

「そう? あっ! ありがとうね」

「あっ! ダメです!」

「えっ!? どうしたの?」


 リーシャが急にシャロの手をどけて離れて背を向けた。離れたシャロはさみしそうに彼女の背中を見た。リーシャは顔を下向けて歌っていた時は、ピンとしていた猫耳がペタンとして物悲しい。


「リーシャ? ごめんなさい。あたし何かしたかな?」

「ちっ違うんです…… シャロしゃんは悪くないです。リーシャは…… 魔物のお世話をして…… 髪も洗ってないし…… 汚いです…… くっついたらシャロしゃんの綺麗なお洋服や髪が汚れちゃう……」


 小さく泣きそうな声でリーシャ答える。リーシャの言葉にほほ笑み、シャロが近づいてしゃがんで顔を覗き込もうとするが、リーシャは首を横に振りシャロを避けるようにして背を向けて下を向く。

 シャロが近づくとリーシャが逃げるということを何回か繰り返していた。

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