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勇者を守った男は成り下がり少女を守る ~護衛と踊り子の兄妹、歌って踊って傷ついた世界を癒せ!~  作者: ネコ軍団
第3章 草原劇場にうごめく闇

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第115話 魔物討伐完了

 ロッソはリーシャの横から彼女に声をかける。


「どうしたの?」

「これを見てください。黒い骨が引っかかってるです!」


 横を向いたリーシャは子犬の口を持って開かせ、ロッソに突き出すように見せて来た。


「えっ!? あっ! 本当だな。喉の奥に魚の骨みたいな棘がささってやがる」


 子犬の口から見える、喉の奥に細く黒い棘のようなものがささっていた。


「こんなの刺さっていたら痛くて大変だよな。もしかして痛いから暴れまわっていたのかも知れないな

 

 ロッソは子犬の口をまじまじと見つめるのだった。グアルディアがロッソの横に立ち、心配そうに子犬の口を覗き込んできた。


「どうしようロッソ。あんなに奥だと手じゃ取れないよ」

「そうだ! この間のグアルグアルしゃんの伸びるお指ならとれませんか?」


 リーシャがグアルディアが尋ねる。子犬の口を覗き込んでいた、グアルディアが少し間を置いて答える。


「うーん…… 僕のデーモンフィンガーか…… いいよ。やってみる」


 グアルディアが左腕をまげ、右手で左肘と左手首の間くらいを掴む。褐色の小さい彼の左手が、紫色の皮膚がボコボコの禍々しい手に変わる。


「大丈夫ですよ。痛い痛いとってくれるです」


 リーシャが子犬をなだめながら、グアルディアの方を向けて口を開かせた。ゆっくりとグアルディアは、子犬の口に左手の人差し指向けて近づけた。グアルディアの人差し指が、口の手前にくると人差し指が徐々に伸びて行く。

 真剣な表情で慎重にグアルディアは、人差し指を子犬の口の中に伸ばしてく。


「ははっ! 待って…… 指を舐めないで…… くすぐったいよ」

「メーですよ。大人しくするですよ!」


 子犬の頭を強く握ってリーシャが大人しくさせる。くすぐったくて笑っていたグアルディアは真面目な顔に戻り、指を口に突っ込んで作業をする。

 しばらくすると、グアルディアがリーシャの顔を見てほほ笑む。


「よし!」


 グアルディアが明るく声をだすと、同時に一気に彼の指が元に戻っていった。口からから出た彼の左手の先に黒い棘が握られていた。


「ふぅ。うまくいってよかった。あれ!? ロッソ!?」


 抜けた棘はグアルディアの指から離れると、黒い煙になって一瞬に消えてしまった。


「これは…… 呪いをかけられていたのか。似たような物をみたことあるような…… しかもこれは明らかに誰かの意図で作られた物だよな」


 棘は呪いをかけられていたようで、誰かが子犬を暴れさせるために棘を使用したようだ。ロッソは難しそうな顔で消えた棘があった地面を見つめていた。

 

「くぅーん」


 棘が抜けて子犬は穏やかな表情をしていて小さく鳴く。もう子犬が暴れたりすることはないだろう。


「やったです! わっわ! くすぐったいです!」


 リーシャが思わず子犬を抱きしめ、子犬は彼女のほっぺたを必死になめていた。


「犬が無事でよかったな」

「はいです」

「……」


 ロッソが声をかけるとリーシャは満面の笑みでうなずく。彼女の横でミーネは、子犬を抱っこするリーシャを複雑な表情で見つめていた。

 リーシャが子犬を抱き上げてロッソの足元へとやってきた。


「旦那しゃん! この子! 一緒に連れて帰るです!」


 抱きかかえた子犬をロッソの前へと出し連れて帰るというリーシャだった。ロッソは驚き彼女に向かって首を横に振る。


「ダメだ。こいつは魔物だぞ。置いて帰れ」

「ちっさいこの子は親とはぐれた思うです。リーシャと一緒です…… だからリーシャがこの子の親を探してあげるです……」

「リーシャ……」


 目に涙をためリーシャはロッソを見つめるのだった。困った様子でロッソは頭をかく仕草をしリーシャに尋ねる。


「持って帰ってもこの子の世話とかどうするんだ?」

「リーシャがやるです! リーシャは前に魔物のお世話してたから大丈夫です! ロッソにもミリアにもシャロにも迷惑かけないです!」

「いや。リーシャには歌手の仕事があるだろ?」

「うぅ……」

「ロッソ! いいじゃん! 僕もリーシャと一緒にお世話にするから! いいでしょ! それに子犬なら僕の護衛の仕事も手伝えると思えるんだ!」

「えっ!? グアルディア…… もう!」


 グアルディアがロッソの説得に参加し、二人で彼の前に立ち目を潤ませながらねだって来る。


「あぁ! もう。わかったよ。でも…… シャロが良いって言わないと俺たちと一緒に行けないかな。あいつが俺たちのリーダーなんだから」

「わかったです! やったです! 連れて帰るです」

「やったね。リーシャ」


 グアルディアとリーシャが抱き合って喜ぶ。


「二人ともシャロの許可が取れないとダメだってわかってんのか。でもあいつは……」


 喜ぶ二人をロッソは優しく見つめるのだった。だが、慌てたミーネがやってきてリーシャを止める。


「ちょっと待って! その魔物を私たちは討伐に来たのよ! 持って帰るなんてダメよ!」

「えぇ!? 何でだよ?」

「依頼主の領主に報告をしないといけないのよ。討伐してないってバレたら…… あたしたちが投獄されてしまうわ」

「チッ! でも…… この子犬はもう暴れねえよ。さっきの棘が原因だかな。もう討伐したのと一緒だ。頼む」


 ロッソはミーネさんに頭を下げた。子犬は暴れた魔物ではあるが、暴れたのは黒い棘のせいだ。だから穏やかにリーシャに抱かれてる子犬がもう一度暴れる可能性は低い。

 何度もミーネに頭を下げるロッソだった。ミーネは中々許可が出来ずに困った様子で彼を見つめていた。


「そうです。この子は悪い子じゃないです! お願いです」

「僕からもお願い」


 リーシャとグアルディアの二人も、ロッソの横に並んでミーネに頭を下げる。三人に頭を下げられたミーネは、少し考えてため息をついた。


「はぁ…… わかったわよ…… リーシャちゃん。ちょっとその子の毛を頂戴ね」

「えっ!?」

「大丈夫だ。リーシャ。ミーネさんに任せろ」

「わかったです」


 優しく抱っこしたリーシャが、ミーネに子犬を差し出す。ミーネはナイフを取り出し、子犬の尻尾の毛を切り取った。切り取った毛を見てミーネはほほ笑む。


「これでいいわよ。毛を証拠にして適当に報告書あげておくわ」

「ミーネさん…… ありがとう」

「いいのよ。さぁ。これで魔物討伐は完了よ。帰りましょう」


 魔物討伐は終わった。ロッソたちはみなが目覚めてから帰路へとついた。夜明けが近く町へ戻る途中で東の空が白み始めていた。

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