第109話 護衛は魔物討伐を引き受ける
仕事をうけるかの返事を待つミーネが得意げに胸をはり、期待したようにロッソを見つめている。ロッソはミーネさんに笑顔で頷く。
「わかった。やろう! その魔物の討伐に参加しよう」
「やった。参加登録しておくわね。助かるー!」
ロッソが答えるとミーネさんの顔は笑顔になり、ぱあぁっと明るくなっていく。ロッソは魔物の詳しい情報を聞こうとミーネにたずねる。
「それで魔物ってどんなやつなんだ?」
「残念だけどよくわからないのよ。目撃した人によるとピンク色で素早い動きの光る目をして口に鋭い牙の生えた大きな魔物らしいわ」
「そうか。素早く動いた光る眼に鋭い牙か…… 多分ウォーウルフの上位種とかなのか」
難しい顔で考えるロッソだった。彼は正体がわからないのが少しだけ不安だった。ただ、2000リロという高額な報酬はかなり魅力的だった。
「金を返してもだいぶ残るな…… これなら昨日諦めた道具屋に売っていた、新発売の書いた文字が消える魔法ペンを買えるぞ。みんなに報酬は1000リロだったってことにしておこうっと! へへへ……」
報酬で新たなアイテムを購入することに目論む、ロッソの顔が思わず緩む。ミーネ
「それじゃロッソさん。討伐隊は今夜出発だから! 十九時にここ集合よ」
「わかった」
弾んだ声でミーネさんは、集合時間と場所を書かれた紙を、ポケットから出してロッソへと差し出した。彼女の用意がいいところみると、もしかしたら依頼書を見ていた冒険者全てに声をかけているようだ。
「おーい! リーシャ、グラルディア! 仕事が決まったから帰るよ!」
リーシャとグラルディアを連れてロッソは宿へと戻る。宿に帰るとミリアとシャロは、夕方からの仕事なのでまだ部屋に残っていた。ロッソは二人に魔物討伐に参加したことを説明する。
「というわけで俺は魔物の討伐に参加するからな。これで金は返せるぞ」
「ロッソ…… 平気ですか? わたくし少し心配です」
ミリアはロッソの両手をがっしりとつかみ、彼の顔を下から覗き込んで泣きそうな顔を向けてくる。ロッソはミリアに優しくほほ笑む。
「平気ですよ。ギルドの人も俺くらいの力があれば問題ないって言ってたからな」
「そうですか…… わかりましたわ。わたくし待ってますね!」
ニコッとほほ笑んだミリアが目を潤ませてうなずいて手をはなす。大げさに悲しむミリアがかわいくロッソの顔が緩む。シャロは顔をゆるませるロッソを睨みつけているが彼は気づいていない。
ロッソの横にいたリーシャが嬉しそうに手をあげる。
「リーシャも行くです!」
「僕も!」
グアルディアとリーシャが並んで手をあげて一緒に行くと声をあげた。元気に一緒に行くと宣言したリーシャにシャロが慌てた様子で声をかけた。
「ダメよ。グラルディアちゃんはいいけどリーシャは危ないわよ。リーシャはあたしたちと一緒に町に残るの」
「そうですわ。わたくしたちとお留守番しましょう」
「いやです! リーシャもみんなの仲間です! 一緒にお仕事して役にたつです」
「リーシャ…… もう……」
ミリアとシャロがリーシャに町に残るように言ったが、リーシャは首を横に振って叫び拒否する。困った顔でシャロがロッソを見た。続いてリーシャがロッソに駆け寄って来た。
「旦那しゃんはリーシャ行くのいやですか? リーシャ旦那しゃんと一緒がいいです……」
俺の足元に来てズボンを掴んで、上を向いてリーシャが泣きそうな声をだしている。ロッソは小さく息をはいてゆっくりとリーシャの頭を撫でてやさしくほほ笑んだ。
「シャロ、ミリア、リーシャは連れて行くよ。ちゃんと俺が守るからさ。いいだろう?」
ロッソが連れて行くというと、シャロがリーシャの前にやって来てしゃがみ困った顔して少し考えていた。シャロはリーシャにほほ笑みロッソに続いて彼女の頭を撫でると小さく息を吐いた。
「はぁ…… しょうがないわね。お兄ちゃん! リーシャのことお願いね」
「任せとけ! リーシャ! 一緒に行くぞ!」
「やったです! うれしいです! 旦那しゃん!」
泣きそうな顔が一瞬で明るくなり、リーシャがいきおいよくロッソの足に抱き着いた。
「もう危ないよ……」
「えへへ」
ロッソの脚にしがみついたまま、上を向いてほほ笑むリーシャだった。シャロは笑って立ち上がってはなれる、入れ替わるようにしてミリアがリーシャの横に来てしゃがんで話しかける。
「いいですね。ロッソから離れたりしちゃダメですよ。それと夜は寒いからちゃんと暖かくして! ご飯を食べすぎたり……」
「わかってるです! ミリアは心配しすぎです!」
「でっでも……」
「こら、リーシャ! そういう言い方はよくないぞ。ミリアだってリーシャの為に言ってるんだからな」
ロッソに注意されたリーシャは下唇を前にだして変な顔で不満そうにしている。
「聞いてください。夜は寒いんですから……」
すごく心配してるのだろうミリアは、何度もリーシャに同じ注意をしていた。リーシャは何度も注意されて少し嫌そうな顔をする。リーシャの横に来たグアルディアがにやりと笑う。
「あっ! お説教ババアが出たぞー!」
「なっ!? なんですって!」
「はぁ…… もう! グアルディア!」
ミリアを指さしグアルディアが叫ぶと、彼女は怖い顔になり立ち上がって彼を追い回し始める。
シャロが肩をすぼめてあきれた顔で首を横に振っている。リーシャはグアルディアが逃げる様子が面白いのか笑っていた。
「グアルディアちゃん! 今日は許しませんよ!」
「たっ助けて! ロッソ!」
「えっ!?」
グアルディアの襟元をつかんでいた、ミリアが怖い顔してロッソを見た。ロッソはもちろんミリアには逆らわない。
「しっかり叱ってやってくれ」
「はい」
「裏切り者ー!!!!」
泣きそうな顔で裏切り者とロッソに叫ぶグアルディアだった。
「悪いな。俺はミリアの味方だ…… 怖いんだよ…… 怒ると……」
捕まったグラルディアはミリアにこってりと絞られていた。
ロッソとリーシャとグアルディアの三人はシャロたちを送り出した後、仮眠を取って夜の魔物討伐に備えるのであった。




