第106話 橋を止める人たち
ロッソとリーシャとグアルディアの三人は、サンクレト村へ続く平原を馬車に乗って移動していた。
「うん!? なんだ?」
サンクレト村の手前にある、川を渡るために橋まで来た。ロッソは橋を見て何かにが気づく。
木製の大きな橋の前に五人の男たちが並んで立っていた。男たちは鉄製の胸当てや革の鎧を着て、手には槍や剣をもった冒険者風の男たちだ。彼らの前には大きな鞄を持った男性二人が立って、五人一列に並んでいる中央の冒険者と何やら話していた。
「リーシャ! 馬車を止めろ」
「はいです」
ロッソは自分の隣に座り、馬車を操縦するリーシャに停止を指示した。ゆっくりと馬車は橋の二十メートルほど手前で停止した。
鞄を持った男二人の内の一人が、話していた冒険者に何かを渡しているが見える。すると冒険者は道を開けて鞄を持った男二人は橋を渡りだした。
「ふーん…… 面倒なことになりそうだ」
男性二人と冒険者のやり取りを見た、ロッソはつぶやき立ち上がって馬車を降りた。
「グアルディア! 一緒に来い」
「えっ!? わかった」
ロッソはグアルディアをよび、一緒に歩いてゆっくりと男たちに近づいていく。
先ほど男二人と話していた中央の男がロッソとグアルディアを見た。
「人を見て笑いやがって嫌な感じだな……」
橋の中央に立つ革の帽子をかぶった頬に泥がついた汚いひげ面の目つきの悪い男が、ロッソたちを見てニヤニヤと笑っていた。他の四人も同様に笑みがこぼれている。
ロッソはにこやかに冒険者たちに右手をあげ挨拶をし声をかける。
「こんにちは。何かあったんですか?」
「この付近で魔物が暴れててね。サンクレト村からの依頼で橋の安全を確保してるんだ」
中央の男が橋の警備中だとロッソに答える。ロッソは地図を思い出していた。この橋を渡らないとサンクレト村へは行けない、橋はサンクレト村からすればベルグの町と村をつなぐ重要な橋で警備の依頼をするのは当然だった。
男たちは馬車がギリギリ一台通れるくらい幅の橋の入り口に横一列に並んでいる。このままでは馬車はおろか人も通れない。
「さて…… 素直にどくかな……」
ロッソは小声でつぶやき中央に男に口を開いた。
「俺たちはサンクレト村へ行きたいんだけど通してもらっていいか?」
「ダメだ。ここを通りたければ50リロを払ってもらおうか? 俺たちが安全を守ってるんだからな。当然だろ?」
男は首を大きく横に振った。並んだ四人はニヤニヤと笑ってロッソを見つめる。
「やっぱり…… そう言うことか」
彼らは警備のついでに旅行者や商人から通行料を巻き上げていたのだ。
「せこいやつらだ。しかも50リロって…… 高けえんだよ! こっちの報酬は100リロなんだからな」
ぶつぶつと文句をいうロッソ。素直に通行料を払ったら往復で報酬が無くなってしまう。
「ほらどうすんだ?」
男はいやらしい顔をして手を前にだし、金を出すように要求する。もちろん依頼の報酬以外に橋の通行料をとるなんて、違反で通報すれば彼らは冒険者ギルドで弾劾を受けることになる。ロッソは彼らに冒険者ギルドへ通報するぞと逆に脅そうとする。
「俺はサンクレト村への配達の依頼を受けた冒険者だぞ? ギルドに通報させてもらうけど問題ないな?」
「うるせえ! 俺はベルグの町で一番のA3ランクの冒険者ラミレスだぞ! ほら! 早くだせよ」
ラミレスと名乗った中央の目つきの悪い髭面の男が怒鳴った。ギルドへの通報にも動じないようだ。ラミレスは口ぶりからベルグの町の中で、一番の高ランクの冒険者のようだ。おそらく彼は高ランクであることを利用して今まで散々好き勝手やっているようだ。
「A3ねぇ。どれどれ……」
ロッソは淡々とガントレットをラミレスへ向け戦闘能力値を測る。戦闘能力値46と表示されるロッソの半分以下だった。
「他のやつらも15~25くらいか…… まぁいいや。脅しに屈せずに馬車を進ませればどくだろう」
ガントレットを前に向けて、ラミレスを見てるのを怯えていると思っているのか、彼は一歩前に出て手を前にだしてきて叫ぶ。
「おい! さっさと金を出せよ!」
「いやだね! リーシャ! 馬車を進めるんだ!」
「旦那しゃん!? 進んだらその人たちを轢いちゃいますよ?」
「かまわないよ。どうせ馬車が前に出たらどくだろうよ」
手を対岸に向けてロッソは、馬車を前にですようにリーシャに指示をだした。ラミレスは馬車がゆっくりと動き出すと慌てた様子でロッソを怒鳴りつける。
「なっ! おい!? 俺はA3クラスの冒険者なんだぞ?! どうせお前なんか下位のクラスだろ? 痛い目にみたいのか?」
「下位クラスだからなんだ? 俺はお前のことなんか知らねえよ。さっさとどけよ!!!!」
ロッソはラミレスに怒鳴り返した。ラミレスたちはロッソを見くびっており、彼が怒鳴り返してくるとは思ってなかったようで、ひどく驚いた顔になり即座に武器に手をかけた。
「てめえ! おい! お前ら! やっちまえ!」
「はいはい…… どうせそうなると思ってたよ。しょうがねえな。少し遊んでやるよ」
ロッソは視線を横に向け隣に立って居たグアルディアに指示をだす。
「グアルディア! 少し相手してやれ」
「えぇ…… もうしょうがないなぁ! 本当はやりたくないんだけどね」
「何がやりたくないだ。うそつくなよ」
「へへへ」
文句を言いながらも、ノリノリでグアルディアは腰にさしている、夕闇の嵐剣を抜く。ちなみにグアルディアの戦闘能力値は、姿が子供に変わり下がっているとはいえ80ほどである。
ロッソの前へ出てグアルディアが剣を構える。夕闇の嵐剣は刀身が三十センチくらいの短剣だが、子供になったグアルディアが持つと普通の剣のように見える。
「おい? なんだガキはすっこんでろ!」
「ガキじゃない…… 僕はガキじゃないもん!」
ラミレスたちはグアルディアを見てニヤニヤと笑っていた。
「おいおい。グアルディアはな。子供じゃな…… いや…… 無理か」
「ロッソ!!!」
両手を上げて必死に叫んでる、グアルディアの姿は子供にしかみえない。しかし、彼は子供の姿をしただけだけの元魔王軍の将軍だ、ラミレスたちが笑っていられるも今のうちだけだった。冒険者たちが武器を構えてグアルディアを取り囲む。
「このガキを料理したら次はお前だ!」
「はいはい。だいたいガキガキいうわりにはお前ら五人がかりかよ……」
「うるせえ! いくぞ! お前ら!」
ラミレスの号令で冒険者たちが、一斉にグアルディアに襲いかかる。
「遅いよ……」
ニヤッと八重歯を見せながら、不敵にグアルディアが笑って飛び上がった。取り囲んで攻撃してきたラミレスたちをグアルディアは飛び上がって華麗にかわす。
グアルディアはラミレスの背後へと回転しながら着地する。
「ほーら!」
着地してラミレスの背後に回った、グアルディアが剣を一振りする。
グアルディアが振り抜いた剣から大きな風が巻き起こり、どんどん大きくなってラミレスたちに向かっていった。
「えっ!? うっうわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
夕闇の嵐剣は切りつけると、突風が巻き起こり相手を吹き飛ばす。風に吹き飛ばされたラミレスたちは尻もちをついた。
「なっなんだ!? ありゃ?」
「くそ! ガキの武器のせいだ! 武器を狙え!」
ラミレスはグアルディアが持つ夕闇の嵐剣を指して仲間たちへ叫ぶ。
「へぇ。一撃を受けただけで風のでところが武器とわかるなんて、一応ラミレスはそれなりに経験はあるみたいだな。でもな…… 魔王軍で将軍にまでなったグアルディアの経験の前じゃ、この辺りのモンスターと戦って得たぬるい経験なんて何の価値もねえよ」
ロッソは小さくうなずくとラミレスを見下して笑うのだった。




