第105話 配達仕事を請け負う
掲示板に無造作に貼られた依頼書を、見ながらロッソは手ごろなクエストを選ぶ。
「さて…… すぐに稼げるのは……」
「お魚しゃんを捕まえるのがいいですよ」
「ははは! いいのか? 魚をつかまたらここに納めるんだぞ? リーシャは食べられないのにやるのか?」
「ブゥ…… じゃあ違うのでいいです」
腕を組んで口をとがらせてリーシャは不満そうにしてる。
「はは…… 不機嫌になるとシャロと同じことするな。これもシャロの悪い影響だ」
シャロと同じ仕草をするリーシャを見て苦笑いするロッソだった。
「ほらほら機嫌なおして一緒にさがしてくれよ」
リーシャの頭を撫でて機嫌を取るロッソだった。リーシャは顔を少し上げ、気持ちよさそうにして目をつむり、ロッソに撫でられるのだった。グアルディアが背伸びをして掲示板を指さした。
「おぉ! ほらゴブリンマージ討伐があるよ! これにしようよ」
ロッソがグアルディアが指した掲示板の依頼書に目を向けた。
「うーん。討伐仕事は時間がかかるしリーシャもいるからなぁ…… ってクエスト受注条件B1以上じゃねえか。俺は最下位のB3ランクだからそもそもその依頼は受けられねえよ」
「そっか。残念…… じゃあ次は」
残念がったグアルディアはすぐに気を取り直し仕事を探し始めた。その姿を見たロッソは口を開く。
「さぁ二人にばっかり探させてないで俺も探すかな」
顔を上げロッソは掲示板をじっくりと眺める。掲示されている一枚の依頼書が彼の目に止まった。
「おっ!? これは手ごろだな。場所も近そうだし報酬は100リロで前金ももらえる。ただ…… 失敗や途中放棄には罰金が50リロか…… 罰金がきついが簡単な仕事だしこれにするか」
ロッソは手を伸ばし依頼書を掲示板から外した。
「リーシャ! グアルディア! これに決めたぞ」
グアルディアとリーシャを呼びロッソは掲示板から外した依頼書を二人に見せた。リーシャは文字があまり読めないけど一生懸命見つめ、依頼書を見たグアルディアが不満そうにつぶやく。
「なんだ…… ただの配達か…… つまんなそう……」
「何を言ってるんだ? 面白さで決めるもんじゃねえだろ。まったく…… それに配達は俺たちに向いてるぞ。なんせ馬車をもっているんだからな」
「はぁ。いいよそれで……」
グアルディアはロッソの見つけた依頼の内容を見てがっかりした様子だ。ロッソが見つけた依頼はベルグの町から、サンクレトという村への野菜や薬や雑貨などを届ける仕事だった。グアルディアは魔物討伐のような派手な仕事したかったようで、彼には配達仕事はつまらない仕事なのだろう。まぁ、ロッソの目的は宿代を稼ぐだけなので簡単でつまんない依頼で良いのだ。
ロッソは依頼書を持って、さっきの犬耳の女性がいるカウンターへと歩いて行く。
「これを受けたいんだけど!」
「はーい! えっと…… じゃあこれが前金の20リロね。急ぎみたいだからすぐに依頼主に会ってちょうだい。依頼主はこの建物左にでて四件目のアムリ食料品店の店主よ」
「わかった。じゃあ行くぞ。リーシャ、グアルディア!」
三人は冒険者ギルドを出てアムリ商店へと向かう。
「あった! ここだな」
木でできた煙突のついた、小さい店の入り口の上にアムリ食料品店と看板がでいる店の前でロッソは立ち止まった。アムリ食料品店の綺麗に磨かれた、ガラスの窓からは野菜や果物が並んだ棚が見える。
「すいませーん。冒険者ギルドから依頼を受けてきました」
店の扉をあけ、ロッソは中に入って声をかける。カウンターの中からニコニコした恰幅の良いおばさんが出てきて声をかけてくる。
「よく来てくれたね。わたしが店主のアムリだよ。さっこちらへどうぞ」
アムリに呼ばれて三人は、店の奥にあるカウンターの前へと向かう。
「俺はロッソです。女の子がリーシャでこっちがグアルディアです。よろしくお願いします」
「よろしくです!」
「おや、かわいい冒険者さんたちだねぇ。はいどうぞ」
リーシャとグアルディアが並んで挨拶をすると、アムリは近くの棚に置かれたリンゴを二つ取って二人に渡す。二人は嬉しそうに目を輝かせてリンゴをアムリから受け取った。
「やったー! リンゴだ!」
「リンゴです…… 旦那しゃん……」
受け取ったリンゴを両手に持って、リーシャはチラッとロッソへ視線を向ける。
「うん!? せっかくもらったんだから食べていいよ」
笑顔で頷いて食べていいよと合図すると、嬉しそうにリーシャはリンゴにかぶりついた。
「うん。リーシャは偉いねぇ。俺の合図をまたずにグアルディアは食べてるけどな……」
リーシャの横ですでにグアルディアは、ロッソの許可を得ずにリンゴにかぶりついていた。
「あまーい! 美味しいね! リーシャ! シャリシャリ」
「はいです! シャリシャリ」
二人は美味しそうに、豪快に音を立ててリンゴを食べるのだった。リーシャとグアルディアをロッソはうらやましく思うのだった。二人が美味そうに食べる姿にアムリは、ニコニコと微笑んでいた。ロッソはアムリにリンゴをもらった礼を伝える。
「ありがとう。二人とも喜んでるよ」
「いえいえ。じゃあさっそく仕事をしてもらいましょうか」
「はい!」
ロッソたちはアムリの指示で店の商品をまとめて行く。ジャガイモが50個に人参が50本など、大きな木箱三つに野菜をたっぷり詰めていく。それらに加えアムリが作ったジャムの瓶や薬や包帯などの荷物がある。さらに奥からアムリさんが木箱を抱えて持って出てきた。
「ごめんねぇ。他の店の分もあってちょっと量が多いけど大丈夫かい?」
「平気ですよ。馬車がありますから! えっと…… サンクレト村の場所を教えて欲しいんですけど?」
「ちょっと待っててね」
アムリが奥から地図を取り出して持ってきてくれた。アムリはロッソに地図を見せながらある場所を指す。
「サンクレト村はここだよ」
「えっと…… ベルグの村から南に少し行って川を越えた先か…… これくらいなら馬車なら二時間もあれば着くな」
サンクレト村の位置を確認し、ロッソは顔をあげアムリに口を開く。
「わかった。近いから今日中に届けられると思う」
「ありがとう。気を付けてね。近くに強力な魔物がでるようになってね」
「魔物だと?」
「そうなのよ。正体はわからないんだけど…… 町の近くで旅人や商人が青く光る目の怪物に追い回されたりしたらいいのよ。それで配達に行ってくれる人が怖がっちゃって…… だから冒険者ギルドに配達の依頼をしたのよ」
ロッソが顔をしかめる。危険のないただの配達仕事と思って依頼をうけたが、得体の知れない魔物がいるとは彼にとって誤算だった。しかももう依頼を受けてしまっているので、これから断ると罰金を払わないといけないのでやるしかないのだ。
「魔物は川の近くの平原にでるらしいから橋を渡るときとか気を付けるんだよ」
「ありがとう。気を付けるよ」
アムリの言葉にうなずいて返事をするロッソだった。
「橋を渡る時に襲うか…… 覚えておこう」
ロッソとグアルディアの二人がいれば、この辺りの魔物程度であれば特に問題にならないだろう。ただ彼はリーシャも連れているので出来れば魔物との遭遇は避けたかった。
荷造りが終わりロッソはリーシャに声をかける。
「じゃあ、リーシャ! 馬車をこの店の前に持ってきて! グアルディアはリーシャと一緒に行け」
「わかったです!」
「了解!」
しばらくしてリーシャとグアルディアが、馬車をアムリの店の前へと移動させてきた。馬車が到着するとグアルディアとロッソで荷物を積み込んでいく。
「それじゃあ! 行ってきますね」
「気を付けていってらっしゃい」
荷物を積み終わり、見送りに店の前に立っていたアムリにロッソが声をかけた。アムリはにっこりと笑ってろっそたちに手を振った。
「行ってくるです!」
元気に声をあげリーシャが手綱を動かし馬車をゆっくりと前に走らせた。ロッソたちはサンクレト村へと配達の仕事へと向かう。




