第103話 馬車は賑やかに進む
「うん!? どうした?」
リーシャとグアルディアが、ロッソに顔を向け目をキラキラと輝かせている。
「ロッソ!? すごい…… なにこれ?」
グアルディアが守護者大剣とガントレットを指している。ロッソはグアルディアの様子から皆に闘気弾丸をはなつ姿を見せてなかったことに気づく。
「劇場飛空艇のセドニアに守護者大剣を強くしてもらったんだよ」
「すごーい。魔法障壁以外もだせるんだぁ。ねぇ?! 守護者大剣を貸して!」
「リーシャも貸してほしいです!」
「わっ!? こら!」
目を輝かせたグアルディアが手を前にだして、守護者大剣を掴もうとする。グラルディアに影響された、リーシャも貸してと言って手を伸ばしてきた。ロッソは立ったまま二人に取られないように、剣を両手に持って腕を伸ばして上にあげた。幸い二人の身長は彼の半分もないのでこうすれば絶対に届かない。
「あっ! ずるい! 貸して貸してー!」
「リーシャが先です!」
馬車の上で必死に背伸びをして、両手を伸ばすリーシャとグアルディアだった。
「ダメ! 何言ってるんだよ二人とも…… おもちゃじゃないんだから……」
「いやだー! 貸してー!」
「リーシャに貸すです!」
「ダメだって! こら! くすぐろうとするな卑怯だぞ!」
グアルディアがロッソの脇に手を伸ばして、くすぐろうとするのを彼は体をひねって回避する。
「もう…… なんかグアルディアは体と同じで幼児化してないか? 最近は妙にリーシャと気が合うみたいだし……」
いたずらに笑って無邪気にくすぐろうとしてくる、グアルディアを見てあきれるロッソだった。幼い容姿だが彼は元魔王軍の将軍で魔王親衛隊の隊長を務めていた男だ。
「こら! やめなさい! 馬車の上で暴れて危ないでしょ! リーシャちゃん! グアルディアちゃん!」
御者台の後ろから幌の中からミリアが顔をだして二人を注意した。まずいという顔をしてすぐに二人はロッソから離れ大人しく座る。ただ、リーシャは納得がいかないのか頬を膨らませロッソを指さした。
「むぅ…… ミリア! 聞いてください。旦那しゃんが独り占めするですよ」
「そうだよ。ロッソが独り占めして僕たちに貸さないんだ!」
「まっ!? 何ですって?! ロッソ!? 大人気ないですよ!」
「はっ!? ミッミリア! 違うよ…… 二人が守護者大剣を貸せってねだるから……」
メッと眉間にシワを寄せロッソに注意するミリアに彼は必死に事情を説明するのだった。ミリアは真面目な顔でロッソの話を聞くのだった。話を聞いたミリアはロッソに謝罪するのだった。
「そうですか…… ロッソを疑ってごめんなさい。もうリーシャちゃんグアルディアちゃんいいですか? 守護者大剣はロッソの大事なもので使い方を誤ったら……」
グアルディアとリーシャに向かってミリアが話を始めた。
「うわ! ミリアがお説教ババアに変わったです! 長くなるです!」
「逃げろー! お説教ババアだ!」
「まぁ! 何ですって!? こっちに来なさい! ロッソ! 捕まえてください」
「はいはい」
「わっ!? はなせ!!!」
「こら! 暴れるな!」
ロッソは逃げようとする、グアルディアに手を伸ばし首根っこを捕まえた。そのまま御者台の後ろにいるミリアに渡す。
「だいたいグアルディアは、ミリアの事をババアって言ってるが確かお前は三百歳以上だったろ…… さて……」
横を向くロッソの視線に手綱を握り締めたリーシャが見える。
「交代だよ」
リーシャの首根っこを掴んだロッソは、丁寧に彼女の手をほどき手綱を外す。そのままロッソはリーシャをミリアに差し出し馬車の操縦をかわす。
「裏切り者です!!!」
首根っこをロッソに掴まれたリーシャが叫ぶ。
「はいはい。裏切り者でいいですよ」
「ぶぅです!!!」
二人をミリアの引き渡しロッソは、一人になった御者台で馬車を動かし始める。
「あーあ。ありゃ相当絞られるぞ……」
チラッと後ろをみたロッソ、幌の隙間から見える光景につぶやく。荷台では床にグアルディアとリーシャが座らされて、ミリアは立った状態で二人を叱り続けている。
普段は優しいミリアだが、眉間にシワを寄せて目つきが鋭く怖い顔で二人を叱っている。リーシャとグアルディアはうつむいてしょんぼりとしている。
「なっなんだ? 次から次に……」
今度はシャロが幌付きの荷台から出てきてロッソの横に座った。
「シャロ? どうした?」
ロッソが声をかけるとシャロは、振り返り馬車の幌の中を確認した。後ろを確認しながら迷惑そうにシャロが話を始める。
「だってせっかく昼寝してたのに…… 起こされてミリアのお説教がこっちまで…… あたしの口が悪いからリーシャとグアルディアちゃんが真似するんだってさ」
「はは、そりゃあミリアが正しいな。お前は口が悪すぎる!」
「なっ!? 何ですって? この!」
「こら! バカ! 止めろ! くすぐるな!」
シャロが馬車を操縦するロッソの脇に手をいれて、くすぐってきたので体をよじってなんとか回避しようとする。
「クソ! こっちは馬車の操縦があって動けないのに…… こら! やめろ!」
執拗にシャロはロッソのわきに手をいれてくすぐってきた。彼はもう限界だった……
「ははは…… もうやめて…… はぁはぁシャロお願い……」
「降参する?」
「うん! 降参するから! お願い……」
「よし! じゃあ静かに座っててね。動いちゃダメだよ」
「えっ!? シャロ!? もう…… 寝るの早いな」
シャロはロッソの肩に頭を乗せるとすぐに眠りついた。彼女の洗髪料甘い香りが漂ってくる。
速度を落としてシャロを起こさないように静かにロッソは、次の町ベルグを目指して馬車を走らせるのであった。




