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勇者を守った男は成り下がり少女を守る ~護衛と踊り子の兄妹、歌って踊って傷ついた世界を癒せ!~  作者: ネコ軍団
第3章 草原劇場にうごめく闇

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第100話 王になった勇者

 ここはジーリア大陸のカネリア王国の王城。かつては豊かな緑に囲まれた山に囲まれた美しい景観をもつ城であったが、現在は魔力汚染による灰色の空に覆われ不気味な雰囲気に包まれている。

 場内の執務室。柱や細部にいたるまで装飾の施された綺麗な部屋で、机に置かれた大きな背もたれの椅子に腰かけるキースが居た。机の前には綺麗な装飾された服を身にまとまった恰幅のよい気弱そうな中年男性が立って居る。彼はキースが次期国王と決まったカネリア王国の大臣だ。


「王都クーリアンや周辺の村から行方不明者の捜索依頼がてでおります。現在、王国軍が総力をあげて捜索中ですが一人も見つけられません」


 腕を組んでキースは報告を黙って聞いている。王都クーリアンや周囲の村や町で、国民が行方不明事件が多発しておりその報告を大臣が行っているようだ。


「そうか…… どうせ暇で飲んだくれてるだけの冒険者たちに行かせろ! 特に女性冒険者にな……」

「はっ!? 女性ですか? ですが…… 都合よく女性が集まりますかな……」

「報酬を女性限定で倍にあげておくといい。やつらは金に汚いしな」

「かっかしこまりました。それと各国から同盟の要望が……」


 大臣がキースの顔色をうかがいながら、手に持った書類を彼の前に差し出した。彼は書類を一瞥しため息をついた。


「ふぅ…… 同盟? 僕は対等な関係は結ばない。ともに歩みたければ併合されるか属国となるかどちらしかないと通達しろ」

「しかしそれでは戦争に……」

「かまわん。僕が率いるハイグレードオークの軍団と戦う気があるならかかってこいと言っておけ!!!」


 困った顔して大臣はキースに差し出した書類を引っ込めた。

 キースは次期国王という肩書きだが、魔王討伐を達成した世界の救世主でもある彼の影響力は現国王を凌駕しており、政務の大半はすでに彼の判断によって行われていた。


「まったく…… そのような挑発的なことをすると本当に戦争が起きてしまうぞ」

「アンソニーの言う通りだよ。態度の悪い勇者だって言われてへこんでたのはあんただろう」


 扉が急に開いて二人の男女が、部屋へと入ってきて呆れた様子でキースに声をかけていた。男性は薄い白髪の髪に立派なあごひげを携え、目が埋もれて細くなるくらいしわの深い顔をした老人で、背中に木製の杖を背負い緑色で袖を黒の布で縁どったローブを着ていた。老人はアンソニー・ペティトだ。

 女性は背が低い毛の濃いドワーフであり名前をラブリ・ヨハンセンという。ロード騎士団領の騎士団長の娘である。目が丸く綺麗な赤い瞳をして見た目は幼いが、年齢は三十路を過ぎており、白く輝く鎧に背中には身の丈よりも大きいハンマーを背負っていた。

 アンソニー、ラブリ、はかつて勇者の仲間として世界を救った仲間だ。十三人という大所帯のパーティの中で、アンソニー、ラブリにアンナ、ジェリスという姉弟を加えた四人はすぐれた能力を持っていた為キースの偉大なる四人(グランドフォー)と言われている。


「あっ! アンソニーとラブリ! うるさいな。いいんだよ。こうやって牽制しておけば時間が稼げるからな…… 僕の狙いが世界征服だと思わせるためにもね…… 大臣! 友人が来た下がれ!」


 笑顔でアンソニーたちと挨拶をかわし、キースは大臣を下がらせる。大臣が頭をさげ部屋を出ていくとキースはうきうきとした様子でアンソニーに口を開く。


「それで準備は?」

「もういつでもいけますぞい。ただ…… 劇場飛空艇が確保できなかったので輸送力が細くてのう。完成までは予想より時間がかかりそうじゃ」

「そうか…… 僕が失敗したせいだな。ごめん」


 アンソニーに謝罪したキースは悔しそうに拳を握りしめる。軽く息を吐いて落ち着いてから彼はラブリに顔をむけた。


「ラブリ! ロード騎士団は協力してくれるんだよな?」

「あぁ! 母上は傘下に入ることを拒んだから始末したよ。兄が抵抗したが弟たちと病床の父を私が確保したら言うことを聞いたよ」

「けっこう…… アンソニー! ロード騎士団の船を使って輸送力をおぎなえ!」


 ラブリの報告を聞き喜んでキースはアンソニーにすぐに指示をだす。

 手を顔の近くに持ってきて了解と合図したアンソニー、笑顔のキースの顔が一瞬曇りさらに言葉を続ける。


「アンソニー! もう一つお願いしていた。指揮官の準備は?」

「大丈夫じゃ…… ただ早くしないと爆発するかもしれんな」

「おぉ。それはかわいそうだ。じゃあ早く行ってやるか! ラブリはどうする?」

「あたいは遠慮しておくよ…… 趣味が悪いよ……」


 顔をゆがませて嫌悪感をにじませてラブリが答えた。


「では行きましょうかの」

「あぁ」


 いやらしく笑うアンソニーと共にキースは歩き出した。ラブリは部屋に残りキースとアンソニーは二人で出ていくのであった。

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