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ユートピアユー〜陰キャコミュ症JKの僕が、恐怖を『克服』して能力バトルをする話〜  作者: 葛城 隼
YoU’re my R (L) OCK

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第48話 お前の叫びを、オレに聞かせてくれ

「──ガッ!? 鼻ぁ……!」

「『ジョニー・B・グッディーズ』。来い『五弦』、『六弦』!」


 迫る敵──サクラとかいうカマ野郎(・・・・)の顔面めがけて『グッディーズ・一弦・四弦』を変形させてハチリンカー『ハニー』ごと鼻を打つ。『五弦・六弦』をジェットパックに変形させてオレの背中に装備し、延長した『一弦・四弦』を支えに素早く立ち上がる。


「剣!?」

「棒」


 変形させた武器は『ロッド』だ。ハチリンカーの毒にやられてオレはマトモに力を入れられない。けど棒術なら変に力を込めるより、遠心力に乗って棒を叩きつけることで攻撃力を望める。流れる水のように、不規則なハチの大群を押し流す波を打つように──。


「──ッラァ!!」

「コイツっ!? 回転して!」


 まあ、遠心力はジェットパックのホバーでズルして補うんだけどね。


 軽いハチリンカーは回転しながらロッドを叩きつけて撃破、その間に敵本体の野郎にも攻撃を仕掛ける。特に右肩のハチの巣、ハチリンカーが出てきている『ハニー』の核を狙って。

 ただオレの攻撃は今、全く重さの乗らない貧弱なものになっている。しかもどうやったって大振りだ。こんなガリガリ相手なのに容易く避けられ、かわされてしまう。

 戦いながら、野郎は口汚く罵ってくる。


「お前さぁ!! ()の鼻を殴るとかサイテー! 人間のクズ!」

「オレなんてテメーに毒もらった上でソコのヒゲのオッサンに何度も顔殴られてんだよ!」


 大事なのは近距離だ。ロッドを水平に持って押し付け、つば競り合いの形に持っていく。さらに言葉でも攻めていく。


「まさか自認女だから手加減しろって? 誰にでも言えるだろそれ」

「ワタシはそうなの理解できない!?」

「したくもない。いや、そもそも通り魔してきたヤツが被害者ヅラすんな、ボゲが」


 トンっ、と足を踏み込みホバーと合わせてさらに押し付ける。いきなりの重心移動で狙い通り体勢が崩れたところに、さっきからクラクラするのを逆利用して頭突きをブチかましてやると、見事に後方へよろけていった。


 オレの戦闘の傍らでタマキとヒカリは、骸骨仮面の『大地讃頌』を纏ったカイ・ヴァルターと交戦中だ。

 積極的にスピードある攻撃を仕掛けるヒカリに対して、ヴァルターは正確に攻撃を受け止めてカウンター攻撃を仕掛けようとする。

 そこにタマキが割り込んで『二弦』の盾でガード、さすがの観察力だ。すかさずバディでダブルキック、カウンターのお返しをしてやってる。


「残念だな『大地讃頌』の能力を忘れるとは」


 しかしヴァルターはまるで怯まない。それどころかキックした二人の足を受け止め、払ったのちジャブで反撃した。

 キックしたのは胴体だ。効いた様子がないのは『大地讃頌』の『鎧の胴体部への攻撃を無効化し、エネルギーに変換する』リンカー能力のせいだ。

 となれば次に来る攻撃は決まってる。ヴァルターが震脚の要領で地面に足を打ち付けた。するとエネルギー波が拡散し、タマキたちどころかオレのとこまで伸びる!


「彼方危ないっ!」

「見えてるよ、ついでにな!」


 強がったものの間一髪だ。倒れ込むようにしてなんとかかわす。ジェットパックのホバー移動が無ければ巻き添えを喰らっていた。


「余所見してる場合!?」


 ピンチの連続だ。敵の野郎は隙を見逃さず、膝をつくオレへとハチをけしかける!


「ピンチに、パンチ!」


 ヤケクソだ、しないよりはマシ!

 そう思いハチを殴ろうとするものの、チビなハチに今の弱体化したオレのパンチが有効打になるワケもない、ハエをはたいたって堪えないように。それは矮小な羽虫だけじゃなくて、敵本体に向けても、何度同じことをやろうと、変わらない。

 オレの腕を針が掠める。さらに大群が束になって押し寄せ、オレをコンクリートの壁へと弾き飛ばしたのだ。


「──グフっ」

「彼方っ!!」

「タマキ来るわよ!」


 焦るタマキ。だが余所見はできない、ヴァルターと交戦しているのだから。それでも攻撃を掻い潜り、ヒカリに指を向けさせ『ニンヒト』で援護してくれるが、ハチの壁がそれを遮り届かない。

 そこが、隙だ。オレはジェットパックを射出する!


「浅はかね、アンタも!」


 まるで当たらない。カンタンにかわされた。ブーメランに変形させ両手に忍ばせた『グッディーズ』を胴体と足へ投げるも、真横に飛び込んで回避された。タマキたちと目が合い、縋るようにオレの腕を指し合図とした。


「醜い悪あがきっ! そういうヤツ何人も見てきたんだよコッチは!!」


 ハチの大群が、オレの眼前に迫りくる──!


 ドスっ!!


「……え?」


 声を漏らしたのは敵本体の方だ。ヤツのストールが赤く滲みはじめ、ハチが力を失いポトポトと赤い液体と一緒になって落ちる。

 真上の死角からオレの『グッディーズ・ジェットパック』にプラスで、タマキたちに貸してた二体をエッジに変形させて取り付け、すれ違い様に『ハニー』を斬りつけたからだ。本体へのダメージフィードバックが大きく反映されたからだ。


「視野は広くしていきたいよな。今あるものが全てだと、決めつけたくないね、オレは」

「おぉ……前ぇ……!」


 ハチの巣から、再び大量のハチが出てくる。


「逃げたっていいじゃんっ!! お前だって、ワタシと同じで──!」

「同じ、だって?」


 今度はさっき投げたブーメランだ。避けたはずのソレが、同じだと言ったソイツと(リンカー)を叩きつけて返ってきた。


「……ま、オレなんて中途半端で、曖昧で、フラフラしてて、すぐに輪を乱すヤツだけどさ」

「ワタシは……アンタらと違う……」

「テメーみてーな極端な野郎(・・)、キライだね」


 ブーメランが、ジェットパックが、分離して6体の丸っこいフィギュア型リンカーに戻る。それらをVタイプギター型の武器に変型させ、小脇に抱え、後ろ向きになって極端野郎へ突き立てる!


「響けよ、オレのロック! Foooooo!!」


 6体分のリンカーが変形したギター武器、超振動が衝撃を相手に響かせ──全弦解放でフィニッシュ!!


「……いってて。けど毒は解除されたな」


 ボロボロの状態で全力出しきったバトルなんかしたから、攻撃を喰らったアチコチが痛くてしょうがなかった。けど泣き言を言ってられない。タマキたちはまだヴァルターと交戦中だ。


「次は、お前だな」

「なんだもう終わったのかその()も使えないな」

「せいっ!」


 ヒカリだ。ヴァルターの胴体目掛けて掌底を撃つも、それは『大地讃頌』の装甲に阻まれ──


「『ニンヒト』!」

「っ!? キサマら……!」


 ──たかに見えた。今『大地讃頌』にピタと付けた掌底、そこから放たれた『ニンヒト』が、装甲を歪ませるほどの衝撃を放ったのが確かに見えた。


「思った通りだ。その『大地讃頌』は、衝撃に対して無効化はできても“光”の回折までは防ぎきれないらしい。分かるか? 光の波動性だ」

「……なるほど、考えたな」


 コイツゆっくり喋れたのか!?


「しかし、理解しているのか? 『防ぎきれない』という事は『軽減している』という事。ダメージは確実に──」


 ヴァルターが落ち着いた喋りと共に、徐ろにタマキ達の方へと向き直す。そして、自分の胴体を殴りつけ──


「蓄積しているっ!」


 腕を振りかざす!


「──()が高い」


 ズゥンッ!


 突然だった。男の声がして、ヴァルターが見えない何かによって地に伏せられた。


「なっ、なん……だ、このっ、全身にかかる負荷っ……はぁっ!」

「この紫陽花(あじさい) 龍之介(りゅうのすけ)のリンカーだ」


 振り返るとそこに立っていたのは、オカマ刑事(デカ)の紫陽花さんだった。再寧さんと母さんも駆け寄ってきてくれた。


「かなたんっ!」

「すぐに治します。彼方さん、腕を失礼」


 再寧さんがオレの腕を手に取り、リンカーの手──再寧さんのは『トータルリコール』とか言ったっけか──をかざすと、オレのキズがグニャリと塞がっていく。その間、紫陽花さんが倒れたヴァルターへと堂々と向かっていた。


「私のリンカーは──『寿限無寿限無五劫のすりきれ海砂利水魚の水行末雲来末風来末食う寝るところに』」

「えっ……ちょ、ホントにそのリンカー名なんですか!? 途中なのにヴァルター蹴り上げてるし!」


 タマキのツッコミも炸裂──!


「いや、でも、ふざけてるけど、強力で頼りになる人だ……!」

「背中に隠れてなぁ」


 飛ばされたヴァルターは体勢を直して身構えた。にじりと対峙する両者。


「『坊っちゃん』のリンカーのみならず『眠れる羊』まで現れたか。撤退だ『ドグラマグラ』!」


 すかさず包帯野郎リンカーの『ドグラマグラ』が空間の裂け目から現れ、ヴァルターを伴って消えていった。

 戦闘終了だ。オレとタマキは安堵のため息を同時につく。ついたと共に、オレは別なピンチに気づきゾッとした。わんぱくなガキに降りかかる、親の叱りが待っている。


「かなたんっ!」

「ゴ……ゴメン母さんっ! オレがムチャしてこんなボロボロになって」


 ギュっと、抱きしめられた。予想外の行動に、オレは困惑する。


「偉いですわよ。お友達のためによく頑張りましたわね」

「……やめてよ、恥ずかしいよ」


 モゾモゾとして母さんの腕を離そうとするも力が入らない。そのオレの頭にポンと手が乗せられる。紫陽花さんだ。


「今のうちに親には甘えときな。私も娘がいるから、親の気持ちが分かる身でね~」

 妻子いるんか。


 ツッコミはしたが、紫陽花さんの破茶滅茶さに助けられた。ヴァルターを撤退させたのも、あのサクラとかいうヤツとの戦闘の精神面でも。

 母さんは「夕方にまたお買い物、ですわよ」と言い残し、警察メンツはサクラを連れて署内に戻った。残され、ようやく本当に一息つけるオレら。最初に話し始めたのはやっぱりヒカリだった。


「夕立のように突然で、過ぎ去る戦闘だったわね」

「あっ、本当に……」

「ウゼェヤツらだな。『超克の教団』だっけ? アイツら」


 ブー垂れたらタマキに苦笑いされてしまった。ヒカリはクスクスと笑ってくれてるのに。

 そんなタマキを見て、オレはなんとなくイジワルな事を言ってみたくなった。


「んだよタマキ、言いたい事あるなら言いなって~」

「あっ、イヤ……ウザいのは確かですけど、ちょっと言葉が強すぎっていうか……」

「ウザい程度で強い~? それなら社会のカス共とか、弱者とか、タマなし……」

「オシマイオシマイもうやめようこの話ぃ~!」

 ウフフアハハ……。


 朗らかに笑いあい、オレはタマキに改めて言葉をかける。


「お前はさ、きっと、もっと叫んだっていいよ」

「えっ」

「お前の叫びを、オレに聞かせてくれ」


 そしてそれは、オレ自身の課題だ。オレももっと、ちゃんと、オレの叫びをロックに乗せよう。オレの抱える秘密も、燻りも、悲しみも喜びも怒りも、全部ロックに吐き出して──


「……なんか、誤解を招きそうな表現」

「そっか〜? あっはははっ!」

「あっ……ハハ……」


 ようやく、タマキの事をちゃんと理解できた。こいつは合わせなきゃって感じじゃなくて、自然に合わせてるんだな。合わせるのが得意なんだ、観察力と合わさって。

 ヒカリはよく支えてやってるな。まさにベストパートナー、だ。


 イジワルな気持ちがまた出てきて、タマキのほっぺをツンツンしてイタズラしてみる。


「えっ、なんですか急に」

「いや〜? お前って顔までぷにぷにだなって」

「いやぷにぷにって……いや顔までってどゆ意味!?」

「わかるわ。タマキってぷにぷによ」

「ヒカリまで!? うえぇ~無抵抗のまま二人にぷにぷにされて、これは一体……」


 あ〜〜〜〜〜っ。ほんとタマキ大好きだわ。


 戦う理由、それだけは今でもふわっとしてるけど。


「ぷにぷに~はもう飽きてきたな」

「ヒドくない?」

「ゴメンゴメン、あははっ!」


 コイツのことは守ってやんなきゃな。少なくとも、オレが近くにいる間は。

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