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月の見えない夜
月の見えない夜
星の見えない夜
どんよりと雲がかかり
風も消えた夜
静かな静かな
川の流れの
その滑らかな水面に
消し忘れた
街の灯りだけが揺らいで
心を映す鏡も
波立たず
こんなに静かなら
映してくれるのだろうか
消し忘れた
光の残滓を
悲しくないよ
寂しくないよ
残念なことなど
何一つないよ
ただ心と心が
上手く重ならなかっただけ
心がぴたりと重なるなんて
まるで皆既月食のように稀だから
むしろ奇跡のような
その一瞬を
期待して
傷ついて
また傷つけられて
鏡は曇っていく
濡れたときだけよく映る
心の鏡には
いつも泣き顔ばかりだけど




