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詩集 心箱  作者: TiLA
38/100

シュレディンガーの箱が開くとき

量子力学で主流の考え方によれば

この世界の細部は確定しておらず

いくつもの重ね合わせの状態にあり

波動関数の確率に従うのだという


観測者が観測したときにのみ

その量子の状態が確定し、

重ね合わせの状態が収縮される


だからインドの思想家のタゴールは

アインシュタインにこう言ったのだという


~誰も見ていないとき、月は存在しない~


観測が意識を向けるという意味ならば

誰も意識を向けないものは

存在しないに等しいということなのか




量子力学の世界では量子もつれという

不思議な現象がある


量子もつれの関係のある粒子は

お互いにどんなに離れていても

片割れの粒子の状態が観測され確定した瞬間に

もう一方の粒子の状態も確定する


たとえ何万光年離れていたとしても


その情報を瞬時に片割れに伝達する方法が

光より速いものを知らない我々には

理解不能であったとしても


それが元から決まったものではないことは

ベルの不等式から確かなのだそうだ


観測しなければ状態は確定しない

観測した瞬間に状態は確定する

それを決めるのは

観測者の意識なのだそうだ




二重スリットを越えるとき

光子は確率の波となって彷徨い

壁に当たって観測された時にはじめて

この世界に確認される


コペンハーゲン解釈によれば


右のスリットを通る世界と

左のスリットを通る世界の

重ね合わせの世界を通り抜けて

たとえ1つの粒子でも干渉縞を発生させる


だから箱の中で猫が生きている世界と

猫が生きていない世界とが

重ね合った状態なのだという


観測者がその箱を開くときまで


そして状態の確率はシュレディンガーの

波動関数の方程式によって導かれるが

その式には、この世界には実在しないはずの

虚数部が含まれており、

式を導いたシュレディンガーにすら

理由が分からないのだという


2重スリット実験では

どちらのスリットを通ったのかを

観測してしまうと干渉縞は起こらないという


最初から箱を開いてしまったら

猫のパラドックスは成立しないのだ




量子もつれの片割れは観測されたことを

どうやって瞬時に相手に伝えるのだろうか


波動関数には

なぜ虚数部が含まれているのだろうか


誰も意識を向けていないとき

月は存在していると言えるのだろうか


きみの気持ちを確認しなければ

ずっと重ね合った世界で生きていけるのだろうか


そもそもぼくの気持ちを確認しなければ

量子もつれは発生しないのだろうか




二重スリット実験は

世界で最も美しい実験と呼ばれている


ぼくの心の箱に閉じ込めた

シュレディンガーの猫


今は何処を彷徨っているだろう


未来はけして確定しておらず

実在しない虚数を含んだ

確率の世界が重ね合っている


その箱が開くときまで



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― 新着の感想 ―
[良い点] シュレディンガーの猫や波動方程式について、宇宙や月、「きみの気持ち」を交えながら考察していくところが印象的です。人間の気持ちも、心のふたを開けて初めて分かる、それまでは様々な想いが確率論的…
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