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 “グシャッ!!”


 何かがつぶれる音とともに赤色二号が転がっていますわね。とっとと片付けてほしいものです。


「きっ貴様!第二王子殿下に何をしたのだ!」


 殿下の護衛騎士が怒鳴っております。


「何って言われましても、私のパーソナルスペースに侵入した挙句、私の顔に無断で触れるという不埒な真似をなさいましたので護身術を使っただけですけれど?」


「貴様は王子殿下に手を挙げたのか!不敬罪も甚だしいことだぞ!」


 この護衛騎士は何か阿保なことを言っていますね。


「いえ上げたのは足、というか膝ですね。」


「そういうことを言っているわけではない!貴様正気か?王族にけがを負わせたのだぞ!家が取り潰しになってもよいのか?」


 本当にあほな護衛騎士です。


「何をおっしゃるのですか。マナー違反をしたのはそこの赤色2号もとい赤毛のゴミではないですか。血統主義の貴族の間で正式なマナーを取らなければ護身術を使われても、文句が言えないというのは常識ですわ。傷物にされたら大変ですもの。そのゴミがそっくりさんとか影武者かもしれないのに、何かあったらどうされるおつもりですか?本人確認どころか名乗ってすらいらっしゃらないのですよ。」


「うぐっ。確かにそれはその通りだが・・・。いや第二王子のご尊顔を理解していないのが・・・」




「正式な挨拶もしていないのですから当然です。こういったトラブルを回避するために礼儀作法というのがあり、そういった教育を受けるのです。異性と体を密着させることが許されるのは正式な婚約者か、パーティーでのダンスの時くらいの話なのですよ。それよりもそこのゴミを護衛しているのであれば守れなかった、あなたのほうが責を問われるのではないかしら?それとも責を問われるのは教育係かしら?」


「きっ貴様!殿下に向かってゴミなどと!」


「貴様というのは私のことですか?私は伯爵令嬢。しかも年齢の問題で爵位はありませんが伯爵家の当主ですが、あなたはどこのどなた様ですの?」


 爵位を持つのは成人してからになります。ですので家には伯爵代理である叔父がいますが、婚姻に関することなど重要な問題に関しては当主が決定することになっております。


「確かに俺は男爵家の次男だが殿下の護衛で近衛騎士だ!俺に逆らうということは王家への反逆だ!ひっ捕らえてや・・・」


 “ゴシャッ!”


「王家と伯爵家にあるのは双務的な関係であって、『君、君たらずとも臣、臣たれ』なんて話にはなりませんわ。潰してから言うのもなんですけど・・・・」


 これだけ礼儀について言っているのに、なんか近づいてきたので思わず蹴りを入れてしまいました。まあ殿方に触れられても困りますから仕方のないことですわね。赤色2号の隣に赤護衛1号が転がっています。急いで変な報告されても困るのでこれはこれでよいでしょう。


「お姉さま、大丈夫ですかぁ?」


 モブ子さんが近づいてきました。


「ええ大丈夫よ。思わずおかわり、いえ替え玉を潰してしまいました。それよりこのゴミが本物の赤色2号だとしたら、これで問題解決ね。」


「え?何故ですか?」


 モブ子さんが不思議そうな顔をしていますね。


「膝の感覚だと確実に潰れていますからね。いつも潰しているオークよりはかなり小さいですけど、脚甲越しではないので確実でしょう。子供が作れない方を婿に迎えるなんて貴族としてありませんもの。」


 そういってニコニコしていると私の護衛が口を出してきました。


「なんてことをされるのですか!これで王家との間で争いになったらどうされるのですか!」


 ここにも阿保がいたのですね。悲しいことです。


「あなたは誰の部下なのですか?」


「もちろん伯爵家です!」


「ならばなぜ、伯爵家の令嬢の貞操を守ろうとしなかったのです?私が傷物になれば家の婚姻政策に多大な影響が出てくるのですよ。いわば私の身体は伯爵家の財産です。体を張ってでも止めるのがあなたの仕事でしょう!『臣下の臣下は臣下でない』それで首を差し出すことになっても、家族の面倒は伯爵家で見るというのが主君と家臣の関係でしょう!それができないならあなたは伯爵家の臣ではないのです。」


「しっしかし王家に逆らうことは伯爵家の不利益に・・・」


 私が直接戦えるということで、護衛を低レベルの人材で済ませていたのが仇になりましたか・・・


「黙らっしゃい!それを判断するのはあなたではありません。あなたの仕事は護衛対象である私を守ること。伯爵家の禄を食んでおきながら王家の味方をするのであれば裏切者です。荷物をまとめてさっさと出ていきなさい!ちなみに不忠者として廻状を回しておきますので、ほかの貴族家や商家でも仕事はありませんからね。王家の直臣になるか、国外へ出るのがよろしいと思いますわよ。」


 廻状というのは貴族や商家に回す回覧板みたいなものですの。ここに不忠者として書かれたものはまず雇われません。そうでなくても紹介や口利きでの雇用が一般的ですからね。どこの家でも不忠者など必要ないどころか身内にすれば余計な問題を抱え込むことになります。


「そっそんな・・・・お許しください。せめて家族だけでも!」


「裏切者の身内などおいておけるわけがないでしょう。2度は言いません。もたもたしていると潰しますわよ!出ていきなさい!」


「ヒィッ!」


 そういうととぼとぼと去っていきました。


「お姉さまぁ!よろしかったんですの?」


「ええ。これで何か言ってくるようなら戦争です。ほかの貴族も同じ真似をされては困るでしょうから王家対貴族での戦いになるでしょうね。まあ大掛かりな戦争にするつもりはありませんけど・・・・・。」


 ここにいても仕方ありませんから帰り支度をしながらモブ子さんと話をする。


「それにしてもモブ子さんが言っていたゲームの世界ということがよくわかりましたわ。」


「え?どのあたりがですか?」


「だってよくよく考えてみれば貞操が大事になる貴族社会で男女共学の学園に通ってデートなる恋愛ごっこをするなんてありえませんもの。学園内はどうしても死角ができますでしょう?言ってしまえば女性を襲うことに成功すればその方を伴侶にすることもできるわけですから、そんな場所に無防備に娘を差し出す貴族などいませんわ。婚約者ですら解消があることを考えてむやみに肌のふれあいなんてしませんもの。狼の群れに羊を差し出すようなものですわ。たとえ牧羊犬がいても群れてかかられたらひとたまりもないですし。」


 これが近世や近代ならまだわかります。軍権のない貴族が王家に立ち向かうすべがないからです。ですが、ここはモブ子さん曰く中世の封建社会で軍権は各領主貴族にあるのです。言ってしまえば貴族の割と大きな家が王族であり王家という状態なのです。貴族が同盟して王家に立ち向かうことや、別の王家に臣従することもあるのに王家が絶対なんてことはありません。もしかすると今回の件が王家の思惑通りいくのであれば大幅に王権が強化されるのかもしれませんが・・・。


「そういわれてみればそうですねぇ。それでお姉さまはこれからどうされるのですかぁ?」


「そうですわね。多くの貴族が列席する場で無罪を訴えようかしら?」


「わかりましたぁ。何かあったらご連絡くださいねぇ。」


 そういったことで帰り支度も整ったので、その日はそのまま家に帰ることにいたしました。


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